創設後の沿革
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高専法の成立を受け、全国各地の自治体は高等専門学校の誘致合戦を展開、設置初年度の1962年(昭和37年)には、国立12校(1期校と呼称)が開校した。以後毎年10校前後が開校し、数年のうちにほぼ現在の学校数となった。全体で1,500人ほどの募集だった国立高専1期校は、平均17倍の志願倍率となり、これに刺激を受けた他の都道府県もいっそう強力に高専誘致を推し進めた結果、短期間のうちにほぼ全国に設置されるに至ったのである。また、国立高専1期校の開校と同時に、公立は東京都立の2校(工業高専、航空高専)、私立は金沢高専(現国際高専)、熊野高専(現 近畿大学高専)など5校が開校した。 さらに、1967年(昭和42年)には国立商船高等学校5校が、1971年(昭和46年)には国立電波高等学校3校が高専に昇格。1974年(昭和49年)には複合学科を特色とする徳山高専、八代高専が開校して、国立高専の新設は一応の区切りを迎えた。その後、2002年(平成14年)に沖縄高専が設置され、2004年(平成16年)から学生の受け入れを開始した。 なお、商船、電波以外のほとんどの国立高専は新設校であったが、長岡高専、宇部高専、久留米高専の各校は、高専制度の創設に先行して設けられた国立工業短期大学が前身である。高知高専は暫定的に私立校として設置され、開校翌年、国立に移管された。このほか、都立2高専や神戸市立六甲高専(現 神戸市立高専)、聖橋高専(現 埼玉工業大学)は工業高校から昇格し、大阪高専(現 摂南大学)は大阪工業大学に併設された各種学校(専科大学コース)が前身となり、大阪府立高専は大阪府立大学工業短期大学部第一部の廃止に前後して同一の敷地に新設されるなど、公立・私立にも既存の学校・短大を改組したところがある。なお、各校の設置・廃止の年度については、下記の一覧を参照のこと。 国立高専1期校は1967年(昭和42年)3月に初の卒業生を送り出し、高度経済成長とも相まって、「全員が殆ど大企業に就職が内定」し、その後も、高専の設置数の拡大や景気の動向にもさほど左右されることなく、大企業を中心にほぼ10数倍の求人倍率を維持し、就職希望者の就職率もほぼ100%の実績を残した。 その一方で、旧・国立高等専門学校協会(国専協)を中心にして、高専卒業生の進学意欲に応えるため、専攻科の設置、大学院への進学ルートの新設、あるいは大学への編入学枠を拡大しようとする動きが浮上。専攻科の設置はいったん断念し、高専卒を受け入れる工業技術大学(院)・科学技術大学院構想を策定して方向転換したものの、実現には至らなかった。その後、国専協による旧文部省などへの働きかけにより、主に3年編入を受け入れ、修士課程に連なる4年間の課程を前提にした技術科学大学の創設が決まり、1976年(昭和51年)に長岡技術科学大学、豊橋技術科学大学のふたつの大学が開学した。ただし、一部の国立大学では、すでに第1期生が卒業するのと同時に、3年ないしは2年編入の受け入れを開始していた。 1991年(平成3年)には、法改正により、高専卒者に対して準学士の学術称号を授与することになり、設置できる学科の分野としても工業・商船分野への限定を解除。これにより、福島高専、富山商船高専、宇部高専の各校には文系・学際系の学科が誕生。芸術・デザイン分野の学科を設置する札幌市立高専も新設された。さらに、専攻科の設置が認められ、修了生は大学改革支援・学位授与機構の審査を経て学士号を取得できることになった。専攻科は、系列に大学のある私立金沢高専1校を除き、国公私立全校に設置され、ストレートに大学院に進学することも可能になった。 その後、2006年(平成18年)4月には、15歳人口の減少等に対応するため、東京都立の2高専(都立工業、都立航空)が、総定員を減らした上で2キャンパス制の都立産技高専として再編統合された。同様に2009年(平成21年)10月には、宮城・富山・香川・熊本の各県に設置されていた国立8高専(「宮城・仙台電波」、「富山・富山商船」、「高松・詫間電波」、「八代・熊本電波」)が、やはり学科数・定員を減らした上で1県1校2キャンパスの4高専(仙台、富山、香川、熊本)に再編統合された。統合後の各高専は、それぞれ東北地区、東海北陸地区、四国地区、九州・沖縄地区の拠点校と位置づけられた。さらに2011年(平成23年)4月には、大阪府立高専でも大阪府立大学への運営移管に併せて総定員が削減されるなど、少子化による若年人口の減少傾向に合わせたスリム化の動きがみられる。 高等専門学校の設置・廃止年度一覧 年度設置(国立)設置(公立)設置(私立)廃止1962(S37)函館、旭川、福島(平)、群馬、長岡、沼津、鈴鹿、明石、宇部、高松、新居浜、佐世保(以上1期校と呼称) 都立航空、都立工業 聖橋、金沢、大阪、近畿大学(熊野)、高知 高知(私立): 国立に移管 1963(S38)八戸、宮城、鶴岡、長野、岐阜、豊田、津山、阿南、高知、有明、大分、鹿児島(以上2期校と呼称) 大阪公立大学(大阪府立)、神戸市立(神戸市立六甲) サレジオ(育英)、幾徳 1964(S39)苫小牧、一関、秋田、茨城、富山、奈良、和歌山、米子、松江、呉、久留米、都城(以上3期校と呼称) 1965(S40)釧路、小山、東京、石川、福井、舞鶴、北九州(以上4期校と呼称) 桐蔭学園 1967(S42)木更津、富山商船、鳥羽商船、広島商船、大島商船、弓削商船 1971(S46)仙台電波、詫間電波、熊本電波 1974(S49)徳山、八代 1977(S52) 幾徳 1978(S53) 聖橋、大阪 1991(H03) 札幌市立 桐蔭学園 2002(H14)沖縄(開校は2004(平成16)年度) 2006(H18) 都立産業技術 2008(H20) 札幌市立(本科) 2009(H21)仙台、富山、香川、熊本(学生受け入れは2010年度) 宮城、仙台電波、富山、富山商船、高松、詫間電波、八代、熊本電波、都立工業、都立航空 2010(H22) 札幌市立(専攻科) 2018(H30) 国際(金沢)※校名変更 注: 括弧内の校名は旧称。
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