再抗告趣意
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 02:30 UTC 版)
若穂井は、最高裁へ宛てた申立書で次のように述べている。曰く、少年審判と言えど事実認定や人身拘束においては刑事裁判と同様であり、アメリカ合衆国最高裁ゴールト事件(英語版)判決と同様、憲法第31条の定めるデュー・プロセスは保障されるべきである。にもかかわらず少年法には刑事裁判に準じた再審制度がなく、少年が少年であるというだけで再審を受ける権利という基本的人権を行使できない現状は、明らかな憲法第14条違反である。 とはいえ、少年法第27条の2第1項の定める保護処分取消制度に再審的性格を付与することは不可能ではなく、事実として同項は実務レベルではその役割をすでに担っている。よって、憲法の精神に照らしてその法意を探れば、同項は再審請求権に準じ、少年側に保護処分取消申立権と不服申立権を与えていると解釈されるべきである。その法文が職権主義に立つことは本来裁判所の主体性を強調するのみであり、少年側の申立権を否定することと必然的な関連はない。 また、確かに少年法第32条の法文は抗告対象を「保護処分の決定」に限定しているが、少年審判規則第55条が並べる保護処分取消事件および戻し収容・収容継続決定については、後者2つについては実務レベルで抗告が認められている。保護処分取消事件だけを例外とすることに合理性はない。 最高裁はかつて上告棄却決定に対する不服申立てを認めていなかったが、その後の判例変更によって上告棄却決定に対する異議申立てを認めている。これは、棄却判決に対してのみ不服申立権を認め棄却決定には認めないという不合理から、最高裁が刑事訴訟法を弾力的に解釈することで被告人を救済したものとして高く評価されている。最高裁はこの決定の精神に立ち戻り、少年法の抗告に関する規定も弾力的に解釈することで、成年に比して著しく不利な立場にある少年を救済せねばならない。 別の付添人である的場武治も、申立書で次のように述べている。曰く、少年法には、審判機関の中立公正を保つための除斥制度も、証拠法則を方式として定める規定も伝聞証拠禁止の原則もなく、よって少年審判では捜査機関の提出証拠がほぼ無条件にそのまま事実認定の材料とされる。このように極めて誤判の発生しやすい体制で、わずかに法文で明記された部分のみにデュー・プロセスが保障され、上記のような規定のない部分に保障されないような少年手続きは違憲の疑いを免れない。 抗告審決定が規定の不存在を理由に審理を拒否したのは、少年手続きそのものか裁判所の措置のいずれかに、デュー・プロセスを保障しない違憲があったものである。加えて一審決定にも、単なる証拠判断の誤りのみならず、少年手続きにおける少年側の立場の弱さを見落とし、事実認定に必要とされる格別慎重な配慮と審理を怠ったデュー・プロセス保障の違反がある。
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