PC-9821シリーズ
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シリーズの終焉
Windows 95の発売によりPC/AT互換機パーソナルコンピュータが爆発的に普及するにつれ、PC-9800シリーズのソフトウェア資産を背景としたPC-9821シリーズの優位性は薄れ、むしろ独自アーキテクチャであることが足かせとなりはじめた。既にハードディスクやCD-ROMドライブ、メモリなど、構成部品はほぼPC/AT互換機と同一になっていたが、Intelの新しいCPUとともに提供されるチップセットを採用しようにも、サウスブリッジは独自に専用LSIを開発する必要があった。しかも、そのままではディスクBIOSの仕様の問題などからソフトウェアの互換性を維持したままでの内蔵IDE HDDのバスマスタ転送(UDMAモード)への対応が困難であるなど、開発コストや性能面でPC/AT互換機と比較して著しく不利であった[注 15]。
また1995年にはMacintoshを除く他社の独自アーキテクチャのパソコンや、PC-9801シリーズ互換機であるEPSON PCシリーズの販売が次々と終了し、日本国内も完全にPC/AT互換機路線に移行した。PC-9821シリーズはMacintoshと共に「PC界の孤児」となったが、Pentium Proを搭載したPC-9821 St15(通称98Pro)はCPU発表と同月に、Pentium IIを搭載し、RCC社[注 16] のChampion1.0 チップセットをPC-9821用にカスタマイズして搭載した PC-9821 RvII26はCPU発表の2カ月後に発売されていた。
1997年10月、PC 97ハードウェアデザインガイドに完全準拠したPC98-NXシリーズが発表され、PC-9821シリーズは主役の座を降りることとなり、同時に1982年以来続いたPC-9800シリーズは第一線を退いた[注 17]。ただし、この時点ではPC-9821の新機種が併せて発表されたほか、Windows 95/NT4.0についても次期バージョンまではサポートされる旨が宣言されている。この時の公約通り、後にPC-9821版のWindows 98/SEとWindows 2000が発売された。
1998年夏には98MATE VALUESTARの生産終了により正式にコンシューマー市場からのPC-9821シリーズの撤退が発表され、PC-9800シリーズはビジネス機(MATE R、LaVie)やエンジニアリング用途(FC-9800)にラインナップが絞られていった。
その後もしばらくはMATE Rを中心に現行製品クラスのスペックの機種の提供は続けられたものの、PC-9821Ra系の機種は1996年(平成8年)登場のPC-9821Ra20(Pentium Pro 200MHz搭載)のバリエーションであり、特に1997年のPC-9821RaII23(Pentium II 233MHz搭載)以降はほぼ同一のマザーボードでITF/BIOS-ROMのみが修正される[注 18] という状況であった(後述)。
2000年5月、出荷時の標準構成としてはPC-9821シリーズの最高性能モデルとなるPC-9821Ra43(Celeron433MHz搭載)が発表された。しかしWindows 2000出荷開始後であったにもかかわらずMS-DOS 6.2プリインストールモデル[注 19] が提供されたことや、あえて旧世代のCPUが搭載されていたことから、既にこの頃には従来資産の継承以外はほとんど考慮されなくなっていた。
そして21世紀に入ってからもPC-9821Ra43には新モデルが追加されているが、付属CRTの変更のみで本体に変更は無く、ほどなくして[いつから?]PC-9821は受注生産のみという扱いに変わった。2003年9月30日、NECはPC-9821シリーズの受注を終了し、これをもってNECにおける全PC-9800シリーズのプロジェクトがクローズされた。ただし、サポートは継続するとアナウンスされていた。2010年、Microsoft社による最後の対応WindowsであるWindows 2000の延長サポートが7月13日に終了した。その後まもなく、最後の機種であるPC-9821Ra43およびNr300本体のサポート期限(生産終了後7年)も2010年10月末をもって終了し[7]、その時代の幕を下ろした。
- ^ PC-9821シリーズの下位機種であるXe10と共通設計のマザーボードを採用したため。なお、Xe10とBX4の出荷時でのハードウェアの相違点は搭載CPUや実装メモリ量、それに搭載FDDの台数(BX4は2台、Xe10は1台を搭載する)程度でしかない。
- ^ Mate Local Busを略してMLバスとも呼称される。
- ^ Initial Test Firmware
- ^ この問題についてのNEC側の公式見解は、9821とは「標準(出荷時状態)でWindows 3.1において640×480ドット表示が可能なもの」を指すとしていた。この問題はその後、「PC-9801」として発売された「PC-9801BX4」は「PC-9821Xe10」とマザーボードを共用してコストダウンを図る目的でPEGCがそのまま搭載されていて、いずれの機種でも640×480ドット256色表示が可能であったため、さらに混乱が深まった。
- ^ デバイスの種類ごとに異なるコネクタが位置をずらして配置されている。
- ^ Pentium-90MHz搭載。ただし、CPUソケットはSocket 5よりピン数が少ない専用品である。
- ^ AnはBIOSアップデート(プラグ&プレイ サポートソフト)の適用でPnPに対応した。
- ^ PCMデータを従来のFIFO転送ではなく、DMA転送で再生する。
- ^ のちのCanBeシリーズには拡張バススロットを廃止したモデル(Cr13)やPCIバススロットのみを実装したモデル(Ctシリーズ)も登場し、発展形と言えるCEREBシリーズでもこの仕様が踏襲された。
- ^ サウンド機能のシステムからの切り離しはMATE Xシリーズなどと違って不可である。
- ^ 従来はFDD2基を重ねて搭載可能なレイアウトであったが、2基を横並び増設とすることでファイルベイの位置を引き上げ、その下に生じた空きスペースに標準搭載の内蔵HDDを固定するように変更された。ただし、MATE-XであってもXc型番のデスクトップモデルでは、その後も従来のFDD縦並び型の筐体が使われ続けた。
- ^ 従来は専用グラフィックとサウンド機能はマザーボードに直接搭載であった。ただし、従来のMATE-XでもXe10やXb10にはそれらとは形状の異なるサウンド専用スロットがあり、モデルによっては最初からサウンドボードがドータボードの形で搭載されていた。
- ^ もっとも、増設されたPCIスロット1本はPEGCとWindows用グラフィックコントローラをセットで搭載する(ビデオメモリを共有する)特殊な設計の専用グラフィックカードが占有し、これを抜くとマシンそのものが起動しなくなるため、実質的な拡張性そのものはスタンドアローンで使用する限りは従来のMATE Xなどと大差ない。
- ^ 同じCPUとOSを搭載するPC-9821St20/L16が定価850,000円に対し、この機種は定価398,000円で、同時期に販売されていた同クラスのPC/AT互換機と比較しても低廉な価格であった。
- ^ 逆に後発となったことで、PIIX3以前の未成熟UDMAや、ノースブリッジである430HXの初期ロットのエラッタであるECCが使用できないなどのトラブルが収束するのを見越してからチップセットを採用することができた。
- ^ Reliance Computer Corporation、後のServerWorks社で、2001年にBroadCom社に買収された。
- ^ 初期のPC98-NXシリーズは独自性を打ち出すあまり、USBキーボードを標準としオンボードのPS/2ポートを廃止するなどの見切り発車的なレガシーフリー・デザインとしたため、PC/AT互換機とPC-9821シリーズ双方のユーザーから非難され、後にPS/2ポート等のレガシーインターフェースを搭載をする方向転換を行うこととなった
- ^ ソケット370版Celeronを搭載するRa40/43については、ソケットとスロットの間のソケット変換下駄(Micro Star社製MS-6905)を用いてCPUを実装してあった。
- ^ MS-DOSプリインストールモデルではプラグアンドプレイ機能などについてWindows 9xプリインストールモデルとは細部の挙動が異なるITF/BIOS ROMが搭載されていた。これはかつてのWindows NTプリインストールモデルと同様である。
- ^ Windows 2000(PC-98に限らない)で一部のXP用ファンクションを代弁するフリーソフトが存在する。
- ^ 2007年9月現在、ロムウィン社98BASEシリーズ、エルミック・ウェスコム社iNHERITORシリーズなどが製造・販売されているが、iNHERITORシリーズについては2007年9月28日での受注終了が予告されている
- ^ 『電脳辞典 1990's』 p.361によれば、CROSS reFERence keyの略で、この場合、"X"で"Cross"を表している。Cross referenceは文書内での相互参照を意味のことである。別名「変換キー」であるが、当時は広く使われていたかな漢字変換ソフトウェアのATOKでは変換動作はスペースキーに割り当てられていたため、その後は別の動作に割り当てられることが増えたとの説が、この文献では採られている。
- ^ 『電脳辞典 1990's』 p.331によれば、Negative cross reFERence keyの略であり、XFERの逆の意味である。同書 p.241では、事実上の無変換キーとして紹介されている。
- ^ キースキャンコードはPC/AT互換機用106キーボードとは異なり、PC-9800シリーズ汎用のものに準じるため、一部のゲームなど同コードを直接読み出すタイプのソフトウェアは正常動作しない。
- ^ PC/AT互換機は色々なメーカのドライブが使われていたが、98は長らくNEC純正機種が標準搭載されていた。ただし、MATE X以降やノートなどではSONYやシチズンなどのドライブが一部で採用されている。
- ^ ただし、1997年秋モデル以降のものを除く大多数の機種は4.3GB以上のHDDを接続するとBIOSレベルでハングアップする。PC/AT互換機との最大の違いは、2ポート4台の接続をPC/AT互換機で言う所の1ポート2台分のリソースで実現していた所である。
- ^ もっとも、PIO4のデータ転送レート上限にすら達しない性能のHDDが標準搭載されていた時代の話であり、NECはそれ以上を求めるユーザはPCIのUltraWide SCSIあるいはUltra SCSI対応のHDDを使用せよとの対応を取った(実際にも自社ブランドでPC-9821シリーズ対応BIOSを書き込まれたAdaptec製Ultra SCSI/UltraWide SCSI-I/Fカードをオプション提供した)ため、Ultra DMA-I/Fを提供することはなかった
- ^ ちなみにK6-2などの互換CPUの場合はこの問題は発生しない
- ^ もっとも、CPU載せ変えによるこれらの不具合は公式サポートされていないCPUをPC/AT互換機に搭載した場合でも発生する
- ^ これについてはWindows 2000ではPC/AT互換機と同様に改められ、増設フロッピーディスクドライブのドライブレターはハードディスクの後に割り当てられる仕様となった。また、Windows 98などでもインストール時のオプション設定でドライブレターをPC/AT互換機版と揃えることが可能である。
- ^ メガデモと称される有志作成のデモンストレーションではよりハードウェア構造の公開されていたGravis UltraSoundが圧倒的に支持されていた
- ^ PCM部の動作を86互換とWSS互換で必要に応じて自動的に切り替える仕様のサードパーティー製互換音源ボードも存在した。
- ^ 本来i430VXに標準搭載されているはずのUSBはサウスブリッジ側の機能であるためにPC-9800シリーズで利用することはできず、別途NEC製のUSBチップを搭載して実現されている[12]。
- ^ ただし、ITFの容量が増大した末期の機種では、互換性維持のためにディスクBASICなどから呼び出されるルーチン群はそのまま搭載されたものの、BASICインタプリタそのものの搭載は廃止された。
- ^ メルコのハイパーメモリCPUにより79.6Mまで増設可だが、Windows NT/2000ではメーカー公式ドライバが対応しておらず、このハイパーメモリ領域は認識されない。
- ^ As2は非搭載、Ap2は128KB標準搭載で、両者共に256KBまで増設可。
- ^ メイン基板上へのタンタルコンデンサ追加による回路修正が行われた。
- ^ MS-DOSやWindows 3.x/9xについては修正ユーティリティ配布で対応されたが、その種の方法では修正不可のWindows NTユーザ向けには対策版ITFを書き込んだROMへの交換が実施された。
- ^ この問題とは別に、Ap2/As2では特にカレンダ時計 (RTC) 自体が故障しやすいという持病も知られる。これは部品配置の関係で特にカレンダIC周辺の信号線が腐食で破断しやすいことが原因であり、必ずしもICそのものの不具合では無い(これに対して越年問題はIC側のバグに近い仕様が原因である)。DOSやWindows 3.1/9xでは日付や時刻が異常でも動作はするため気付きにくいが、Windows NT/2000ではいつまで待ってもログインが完了しないという深刻な不具合が生じるため、NTユーザーは修理に出すしかなかった。この点でも上記の越年問題と混同される可能性がある。しかし越年問題とは全く原因の異なる故障であり、DOSやWindows 3.1/9xを使う場合であっても修正ユーティリティで対応できるものでは無い。なお単なるバッテリ切れでも同様のカレンダ異常を生じることがあるが、その場合は日付・時刻を再設定すれば治ることが少なくない。
- ^ 出荷時状態ではAs3は非搭載、Ap2は128KB標準搭載で、両者共に256KBまで増設搭載可。
- ^ B-MATEの内蔵グラフィックアクセラレータはいずれもCL-GD5428で同じだが、Windows 9xのリファレンスドライバはBfがSV-98と共通であり、Be/Bs/Bpとは別扱いになっている。
- ^ Xsは非搭載、Xpは128KB標準搭載で、両者共に256KBまで増設可。
- ^ オンボードIDEがPIOモード2止まりである点はもちろん、PCIチップセットがPentium Proの頃の旧世代品であるため必然的にメモリが当時すでにほとんど見られなくなっていたSIMMのままだった。またビジネス向けであるためグラフィックアクセラレータも旧製品から据え置かれたほか、この頃(1999年)にはほぼ一般化していたUSBすら標準では搭載されなかった。
- ^ ただし、RaII23はBIOSが古いため、そのままではRaII23にCeleron433MHzを載せてRa43相当にすることはできない。
- ^ ただし、標準搭載のHDDやCD-ROMドライブはIDEタイプでありSCSI-I/Fは使用されていない
- ^ ただしSV-98 model3のデュアルプロセッサは対称型マルチプロセッサ (SMP) に対応しておらず、非同期マルチプロセッサ (AMP) である。FreeBSD(98)やWindows 2000はAMPに対応しておらず、デュアルプロセッサ運用にはWindows NTのようなAMP対応OSが必要になる[18]。
- ^ なお、この当時のタッチパッドは、現在主流の指先の微電流感知をする型とは異なり、パッドに掛かる圧力で作動する感圧式であり、タッチペンでの操作も可能であった。
- ^ 「特集・98とともに歩く, これからの10年」『Oh!PC』9/15号、ソフトバンク、1993年、137頁。
- ^ “PC-9800シリーズ受注終了のお知らせ”. NEC (2003年8月7日). 2003年8月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年10月1日閲覧。
- ^ a b SOFTBANK BOOKS、PC-98パワーアップ道場、ISBN 9784797305777
- ^ a b c d e 「特集 : 追う98、追われる98」『日経パソコン』1993年3月15日、130-145頁。
- ^ SE編集部、『僕らのパソコン30年史 ニッポンパソコンクロニクル』、翔泳社、2012年、p206。[1]
- ^ a b 「第2特集 : 浸透する台湾パソコン」『日経パソコン』1995年3月13日、182-187頁。
- ^ “修理対応期間について”. 121ware.com. 2010年10月7日閲覧。
- ^ http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/160729-1.pdf
- ^ 写真から「PC-9821 Xb10」と機種名が読み取れる。
- ^ 倶知安駅は北海道旅客鉄道(JR北海道)の駅で、そもそもJR北海道の経営自体が困窮している。なお、倶知安駅は北海道新幹線の延伸開業時に函館本線も高架化されることになっているが、運行管理システムについては未定。
- ^ 「Products Showcase」『月刊アスキー』1988年9月号、アスキー、190頁。
- ^ “小高輝真の「いまどきの98」 第1回”. Impress Watch (1997年1月30日). 2017年1月13日閲覧。。
- ^ 対応情報 CPUアクセラレータ NEC PC-9821 - ウェイバックマシン(2005年11月24日アーカイブ分)
- ^ SV-98model1
- ^ SV-98model2
- ^ SV-98model1A/model3
- ^ SV-98model1A2
- ^ “FreeBSD(98) SMP users”. 2018年3月22日閲覧。
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