BMW・5シリーズ
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5代目(2003年 - 2010年)E60/E61
「E60」はセダン、「E61」はツーリング(ワゴン)のモデルコードである。
先代に比べて車体寸法が拡大したが、重量増加を抑えるため、Aピラーよりも前、フロント部分はアルミニウム構造とされた。当初搭載されたエンジンは、直列6気筒は先代モデルに搭載されていたエンジン(M54)を流用、V型8気筒はバルブトロニックを装備した新型のものであり、2.0 L 4気筒エンジンや、ディーゼルエンジンも設定されていた。変速機はMTのほか、全てのエンジンに新しい6速ATが組み合わされた。
技術面では「アクティブステアリング」と呼ばれる、ステアリングギア比を走行速度によって変化させる可変ギアレシオ・パワーステアリングが搭載され、これには横滑り防止機構と連動して自動的にカウンターステアを当てる機能も備わっていた。また、「ダイナミックドライブ」と呼ばれる、モーターとスタビライザーを組み合わせによってコーナリング中に左右のロールを抑え、乗り心地と操縦性を確保する機能も設定された。E6X・7シリーズに先行装備された、iドライブ(アイドライブ)と呼ばれる車内快適装備の操作のためのコンピュータシステムも搭載された。
外観デザインはエッジを多用するなどして、従来のBMWとは大きく異なったイメージのものであった[4]。これには賛否が分かれたものの、デザインを革新的なものにすることはBMW社内上層部による決定事項であり、オーナーであるクヴァント家もこの新しいデザインを強く支持していたという[4]。このデザインはクリス・バングルが率いるBMW社内のデザインチームによるもので、実際に採用された作品は、イタリア人デザイナーのダヴィデ・アルカンジェリ(Davide Arcandeli)によるものだった[4]。ただしダヴィデは、急性白血病によりこのモデルの発売前に死去している。
歴史
2005年にはエンジンを一新、直列6気筒にはバルブトロニックが採用され、マグネシウム合金を用いての軽量化や低燃費が試みられた。V型8気筒エンジンは従来の4.4 Lを拡大した4.8 Lと4.0 Lが追加された。同時期にヘッドアップディスプレイをオプション設定され、特別に用意されたボディカラーやインテリア素材でオーダーメイド可能なプログラム、BMWインディビデュアルも開始された。
2007年にマイナーチェンジが行われ、フロントグリル、バンパー、ライト類の意匠変更のほか、トランスミッションも改良され、シフト時のタイムラグが従来の半分となった。530iはエンジンが変更されて出力が向上した。
日本での販売
2003年(平成15年)に販売が開始され、翌年にはワゴンの「ツーリング」と、パッケージオプションとして『Mスポーツ』仕様が追加された。販売された全てのモデルにおいて変速機はATのみの設定であり、アクティブステアリングも標準装備として販売された。
E60/E61(2003年 - 2007年) / E60LCI/E61LCI (2007年 - 2010年) | |||||||
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グレード | 型式 | 排気量(cc) | エンジン | 最高出力(ps/rpm) | 最大トルク(kgm/rpm) | 変速機 | 駆動方式 |
525i(2003年 - 2005年) / 525iツーリング(2004年 - 2005年) | M54B25 | 2,493 | 直列6気筒DOHC | 192/6,000 | 25.0/3,500 | 6速AT | 後輪駆動 |
525i/525iツーリング(2005年 - 2010年) | N52B25A | 2,496 | 218/6,500 | 25.5/2,750-4,250 | |||
530i(2004年 - 2005年) | M54B30 | 2,979 | 231/5,900 | 30.6/3,500 | |||
530i/530iツーリング(2005年 - 2007年) | N52B30A | 2,996 | 258/6,600 | 30.6/2,500-4,000 | |||
530i/530iツーリング(2007年 - 2010年) | 272/6,650 | 30.6/2,750 | |||||
530xiツーリング(2007年 - 2010年) | 四輪駆動 | ||||||
540i(2005年 - 2010年) | N62B40A | 3,999 | V型8気筒DOHC | 306/6,300 | 39.8/3,500 | 後輪駆動 | |
545i(2003年 - 2005年) | N62B44A | 4,398 | 333/6,100 | 45.9/3,600 | |||
550i(2005年 - 2010年) / 550iツーリング(2006年 - 2010年) | N62B48B | 4,798 | 367/6,300 | 50.0/3,400 |
M5
M5として第4世代に相当するE60型M5は、F1技術のフィードバックによる新開発のV型10気筒DOHCエンジンを搭載する。馬力は先代の400馬力からさらに107馬力アップし507馬力である。この507という数字は幻のロードスター「BMW 507」をリスペクトした結果とも言われている。ただし常時507馬力モードではなく、始動時はエンジン保護の理由から400馬力モードであるが「P500」と「P500S」モードを選択することにより507馬力を発生する。
ハンドルに備わるMボタンでは「シフトスピード」、「エンジンマネージメント」、「EDC」などのセッティング内容を割り当てることができ、Mボタンを押すことで瞬時にそのセットアップを呼び出すことができる。またいわゆる隠しモードも存在し、DSCオフ状態でエンジンマネージメントを「P500Sモード」とすることにより、最高シフトスピードが元来の「5」から「6」に変更可能となる。運転席側フロントガラスにエンジン回転数、速度、ナビメッセージなどを映し出すヘッドアップディスプレイも備え、さながらF1パイロットのような気分も味わえる。
変速機は油圧によりクラッチを作動させる、2ペダルMTのセミオートマチックトランスミッションとなる7速SMGを搭載する。米国仕様では7速SMGと6速MTが選択できるが日本仕様はSMGのみ。さらにスタートアシスト機能も加わる。0-100km加速は4.7秒。
外装は専用エアロパーツで、フロントフェンダーにはエア・アウトレットが空いているが機能上の放熱効果はない。リヤのMスポイラーは日本では標準装備だが、海外では選択制。足周りには専用19inアルミホイールが装備されるが、オプションでM6用ホイールも選択でき、リヤのオフセットが張り出していることもありマニア間ではM6ホイールも人気である。M5、M6ホイールどちらともBBS製。
速度リミッターはメーター読み270km/hで作動する。欧州にはワゴン仕様であるM5ツーリングも存在するが、日本国内には正規輸入されておらず製造台数もまたセダンが1万5000台以上製造されたのに対してツーリングは1028台のみの製造と稀少である。
E60(2004年 - 2007年) / E60LCI(2007年 - 2010年) | |||||||
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グレード | 型式 | 排気量(cc) | エンジン | 最高出力(ps/rpm) | 最大トルク(kgm/rpm) | 変速機 | 駆動方式 |
M5 | S85B50A | 4,999 | V型10気筒DOHC | 507/7,750 | 53.0/6,100 | 7速SMG | 後輪駆動 |
注釈
- ^ 欧州仕様など、その他地域の仕様は車体外側のロービームが内側のハイビームに比べ外径が大きくなっている。
- ^ アルピンホワイトのボディにグレーのグラデーションが施されている。
- ^ リアサスはこの代からインテグラルアーム式<5リンク>となる。
- ^ 前期型525iは先代525i(E34)と比べて出力が192馬力→170馬力とダウンしていたため、欧州では523iとして販売されていたが、日本では525iを名乗っていた。
出典
- ^ BMW Japan (2009年4月16日). “BMW 5 シリーズ500万台記念キャンペーン開始。”. 2009年6月5日閲覧。
- ^ 80年代輸入車のすべて- 魅惑の先鋭 輸入車の大攻勢時代. 三栄書房. (2013). pp. 44. ISBN 9784779617232
- ^ 80年代輸入車のすべて- 魅惑の先鋭 輸入車の大攻勢時代. 三栄書房. (2013). pp. 44. ISBN 9784779617232
- ^ a b c Design -The new BMW 5 Series Michael Frank, Forbes.com, 2003-6-2 平成23年10月16日閲覧
- ^ “Car Watch BMW、SUVの使い勝手を備えたセダン「Concept 5 Series Gran Turismo」”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “BMW JAPAN : ニューBMW グランツーリスモ誕生”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “Car Watch BMW、新型「5シリーズ」とそのハイブリッド・コンセプト”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “BMW 5シリーズ 新型にツーリング発表…スポーツワゴンの新基準”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “BMW JAPAN : ニューBMW 5 シリーズ セダンを発表”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “BMW JAPAN : 75%エコカー減税対象モデル、ニューBMW 523iセダンを発表”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “Car Watch 【2010北京ショー】BMW、新型5シリーズ ロングをワールドプレミア”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “BMW JAPAN : ニュー BMW 5 シリーズ ツーリングを発表”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “BMW JAPAN : BMW 5 シリーズに圧倒的な環境性能を誇る新世代エンジンを採用”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “BMW JAPAN : BMW JAPAN : BMW 5 シリーズ ツーリングのモデル・ラインナップがさらに拡充”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “BMW JAPAN : BMW 5 シリーズ528i セダンおよびツーリングに新世代BMW ツインパワー・ターボ・エンジンを搭載”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “BMW JAPAN : ハイブリッド・システムを搭載したBMW ActiveHybrid 5 を導入”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “BMW JAPAN : ニューBMW 523d BluePerformance登場”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “BMW JAPAN : BMW グランツーリスモに優れた環境性能と動力性能を実現する最新テクノロジーを搭載”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “BMW JAPAN : ニューBMW 5 シリーズを発表”. 2016年3月19日閲覧。
- ^ “BMW、5代目「M5」を発表”. webCG. (2011年6月21日) 2021年12月13日閲覧。
- ^ “新型5シリーズ・ツーリング発表&3月のジュネーブショーで初公開へ(carview!) - スクープ - carview! - 自動車”. 2017年8月28日閲覧。
- ^ “New BMW 5 Series Long Wheelbase premieres in Shanghai”. 2017年8月28日閲覧。
- ^ “新型BMW 5シリーズを発表”. 2017年8月28日閲覧。
- ^ “新型 BMW 5 シリーズ ツーリングを発表”. 2017年8月28日閲覧。
- ^ 株式会社インプレス (2019年7月26日). “BMW、「5シリーズ」にクリーンディーゼル+4WDの「523d xDrive M Spirit」”. Car Watch. 2019年7月26日閲覧。
- ^ “独BMW、4WDシステム搭載の新型「M5」を9月発売。11万7900ユーロから - Car Watch”. 2017年8月28日閲覧。
固有名詞の分類
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