ATOK
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/08 16:33 UTC 版)
概要
ATOKは、前身のKTIS (Kana-Kanji Transfer Input System) から一太郎のかな漢字変換部分として改版したソフトウェアであり、KTIS2の後の1985年に初版であるATOK3が登場した[3]。ATOKは日本語かな漢字変換ソフトウェアの中で歴史が長いもののひとつで、一定規模のシェアを保ち続けている。
ATOKは変換精度や学習能力が高く、カスタマイズ(プロパティ・環境設定)の柔軟性がある。他方、他のソフトウェアと相性的な問題が発生することも時折見られる。動作が重いときやソフトウェアの配色設定によっては入力に支障が出る場合もある。これらは動作検証が不十分なためである。
ATOKは、かな漢字変換ソフトウェアの黎明期において、競合するソフトウェアが変換アルゴリズムにさまざまな工夫を凝らす中、変換アルゴリズムよりも辞書の質に重点を置く手法で変換精度を高めることに成功している。他社製のものでも学習を重ねることによって変換精度を高めることが可能であったものの、ATOKは初期状態から比較的高い精度を持っていたのが特徴であったといわれる。
ATOK7以降は一太郎とは別に単体販売も開始した。一太郎には最新版のATOKが付属するものの、出荷数はATOK単品の方が多いなどジャストシステムの主力製品になっている。2008年(平成20年)9月2日からは、月額あるいは年額ライセンス形態でも提供している。
当初のMS-DOSとその後継であるWindowsのほか、Macintosh、Linux、HP-UX、Solaris、Windows CE、Palm OS、Androidとさまざまなプラットフォームに移植しており、また後述の+ATOKもある。
バージョンアップはWindows版を先行させており、リリースが遅れがちな他OS版ではATOK離れが見られた時期があった。
かな漢字変換ソフトウェアが日本語の規範となるのを見越し、1992年に『ATOK監修委員会』を発足させた。座長は作家の紀田順一郎。
ATOKは一般用語の変換精度が高い一方、差別用語とされる単語や卑猥な単語などに対しては、MS-IMEと比べ強い自主規制を行っている。例えば、一般的にも広く用いられる小人(こびと)ですら初期の状態では変換することができない(詳しくは表現の自主規制#出版などを参照のこと)。ただし、単語登録の機能で「こびと→小人」のように強制的に変換させることはできる。また「小人」を「小(こ)」「人(びと)」に分割して変換することにより、自動的に学習して変換できるようになることもある。また初期状態においては、「しょうにん→小人」へ変換することはできる。また「陰唇」のように生理学用語の一部を登録していない。ジャストシステムはこの件に関して、誤用によって差別や障害に苦しむ人々の目に触れることなどを防止するためとの見解を出している[4][リンク切れ]。初期の状態で入っていない語句を使用したい利用者は、ATOKダイレクト(正規登録ユーザーのみが利用可能な追加辞書機能)を追加することにより変換が可能となっている。
連携電子辞典(広辞苑、明鏡国語辞典等)、連想変換辞書(角川類語新辞典、日本語使いさばき辞典等)、専門用語変換辞書(医療・電気・電子・情報等の変換・対訳)をATOKから利用できるようにすることで、著述業や専門職などヘビーユーザーにも普及した。
ATOK15以降、日本語の方言や文語体など、さまざまな日本語変種への対応を始めているのも特徴の一つ。最新版は駅名やカタカナ語から英語への変換(パーソナルコンピュータ→personal computerなど)を実装している。ローマ字入力から任意の英単語(yomu→readなど)や英単語索引入力機能などの新機能が充実した。
ATOK 2010からはプログラムがUnicodeに対応し、サポート外ではあるが、日本語版以外のWindowsでも利用できるようになった。ATOK 2011からはTSFに対応するようになった。
ATOK 2017からは変換エンジンを刷新し、ディープラーニングによる日本語の解析結果を利用して変換効率を向上させている。
2022年現在、下表の製品がある。
対応環境 | 製品名 |
---|---|
Android | ATOK for Android ATOK for Android [Professional] |
iOS | ATOK for iOS [Professional] |
macOS | ATOK for Mac |
Windows | ATOK for Windows |
REALFORCEには通常品にATOK専用のキーを3個追加した『REALFORCE CUSTOM Limited Edition』があり、ジャストシステムのオンラインショップ限定で販売されている。
注釈
- ^ ATOK 40周年記念、1年間のライセンス、10台まで使用可能、Windows/Mac/Android/iOSの4つのOSに対応。
出典
- ^ “文献固定アドレス用結果一覧|J-PlatPat [JPP]”. 独立行政法人工業所有権情報・研修館. 2021年6月13日閲覧。
- ^ “ATOK Passport|Products | JustSystems” (英語). JustSystems | ジャストシステム. 2021年6月13日閲覧。
- ^ Corporation, JustSystems. “ATOK 進化の歩み|ATOK 30周年記念サイト|ATOK.com”. ATOK.com. 2021年6月13日閲覧。
- ^ 変換辞書をめぐるFAQ | ATOK.com
- ^ ATOKの基本講座:ATOKヒストリー
- ^ “黎明期 ジャストシステムの日本語テクノロジー”. ATOK.com (2003年3月1日). 2021年3月13日閲覧。
- ^ “「ATOK Passport」提供開始、Windows/Mac/Android向けATOKが月額300円”. INTERNET Watch (2011年11月8日). 2013年2月17日閲覧。
- ^ “動作環境/製品構成”. ジャストシステム (2015年8月5日). 2015年8月5日閲覧。
- ^ “【速報】新ATOK、パッケージ版廃止で月額制のみに”. PC Watch (2017年12月5日). 2018年2月10日閲覧。
- ^ “動作環境/旧バージョンとの機能比較| ATOK for Windows”. ジャストシステム (2020年2月7日). 2020年2月7日閲覧。
- ^ “携帯の統合プラットフォーム、ATOK採用”. ITmedia エンタープライズ (2007年10月16日). 2011年5月28日閲覧。
- ^ 次世代コンピュータエンタテインメントシステム「プレイステーション 3」に「ATOK」が標準搭載 ~ゲームソフトやサービスでの快適な日本語入力を実現~ - 2006年11月13日 ジャストシステム
- ^ 太田純 (2005年1月12日). “大画面+ATOK、「W21CA」の文字入力の実力は?”. 効率よいメール入力を考える:第1回. ITmedia +mobile. 2011年5月27日閲覧。
- ^ a b “スマホ向けATOKの買い切り版、10月末でサポート終了へ Android版はサブスクで継続”. ITmedia NEWS (2021年10月6日). 2021年11月2日閲覧。
- ^ 「ATOK+手書き入力」が便利な日本語入力「NX!input」 - ケータイWatch・2012年2月22日
- ^ 『スマートフォン史上最高レベルの日本語入力システム「Super ATOK ULTIAS」を共同開発』(プレスリリース)富士通株式会社、株式会社ジャストシステム、2014年4月24日 。2019年6月13日閲覧。
- ^ 宮本真希 (2010年9月21日). “iPhoneのIMEとしてATOK提供「あきらめていない」”. ITmedia. 2011年5月27日閲覧。
- ^ “ジャスト、日本語入力システム「ATOK Passport」がiOSに対応--2022年2月から値上げも”. CNET Japan (2021年11月2日). 2021年11月2日閲覧。
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