高尿酸血症 高尿酸血症の概要

高尿酸血症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/17 14:52 UTC 版)

高尿酸血症
尿酸構造式
概要
診療科 内分泌学
分類および外部参照情報
ICD-10 E79.0
ICD-9-CM 790.6
DiseasesDB 5375
eMedicine med/1112
MeSH D033461

解説

生活習慣病として誰にでも起こりうる。体が合成する尿酸は食物由来の尿酸より数倍多いとされ、肥満が決定的な危険因子となる。プリン体の多い煮干しレバー白子などは長期にわたって大量に摂取すれば危険因子である[1]

グルコースリン酸化されてグルコース-6-リン酸となって細胞内に一時的に留まりゆっくりと解糖されるのに対して、アルコール果糖の代謝にあたっては急速に解糖が進み乳酸の大量に生成されてアシドーシスが進む場合があり[2]、尿酸の排泄や析出に影響を与え、痛風を起こすきっかけとなることがある。果糖は果物を常識的な量で摂っている分には問題ないが、工業的に作られた果糖を清涼飲料水から大量に飲むと問題が発生する懸念が否定できない。

特殊例には、先天性の原因としては、HGPRT欠損症レッシュ・ナイハン症候群)やAPRT(アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)欠損症が知られている。後天性の原因としては、薬物(利尿薬アスピリン)、悪性腫瘍などがある

詳細に検討すると、高尿酸血症をおこす患者は、尿酸の排泄が低下している患者と産生が亢進している患者にわけられる。日本では尿酸排泄低下型が60%、産生亢進型が20%、混合型が20%をしめる。

ヒトを含めたヒト上科は尿酸をアラントインに分解する酵素である尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ)が失活している[3] ことから高尿酸血症をひきおこす[注 1]。霊長類ヒト上科を除く多くのほ乳類はウリカーゼを有しており、尿酸5-ヒドロキシイソ尿酸に酸化し、さらにアラントインに酸化・代謝することができるため先天性の原因がないかぎり高尿酸血症がおこることはない。

尿酸オキシダーゼによる代謝反応)
尿酸5-ヒドロキシイソ尿酸アラントイン

なぜヒトを含む霊長類ヒト上科がウリカーゼを失ってしまったかは明らかではないが、進化の途中において突然変異によりウリカーゼを失ってしまった霊長類ヒト上科がその環境に適していた可能性はある。あるいは、ある時代の霊長類は肉・魚を主なエネルギー摂取源としなかったため体内へのプリン体の蓄積がなく、ウリカーゼがないことが生存について問題がなかったというのもありうる仮説である。

ヒト上科の共通の祖先が旧世界のサルから分枝した際に、尿酸オキシダーゼ活性が消失したものと推定される[4]

定義

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版」[1] によると、高尿酸血症 (hyperuricemia) は、尿酸塩沈着症(痛風関節炎、腎障害など)の病因であり、血清尿酸値が7.0 mg/dlを超えるものと定義する。性別、年齢は問わない。女性においては、血清尿酸値が7.0 mg/dl以下であっても、血清尿酸値の上昇とともに生活習慣病のリスクが高くなる。この場合は潜在する疾患の検査と生活指導を行うが、尿酸降下薬の適応ではない。


注釈

  1. ^ 下流をせき止められた川の状態である。

出典

  1. ^ a b 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版
  2. ^ 高橋隆一 高カロリー輸液施行中に認められるアシドーシス
  3. ^ Friedman TB, Polanco GE, Appold JC, Mayle JE (1985). “On the loss of uricolytic activity during primate evolution--I. Silencing of urate oxidase in a hominoid ancestor”. Comp. Biochem. Physiol., B 81 (3): 653?9. PMID 3928241. 
  4. ^ Ames BN, Cathcart R, Schwiers E, Hochstein P (November 1981). “Uric acid provides an antioxidant defense in humans against oxidant- and radical-caused aging and cancer: a hypothesis”. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78 (11): 6858–62. PMC 349151. PMID 6947260. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC349151/. 
  5. ^ J Adv Res. 2017 Sep;8(5):495-511. PMID 28748116
  6. ^ Radiol Clin North Am. 2004 Jan;42(1):169-84. PMID 15049530
  7. ^ Am Fam Physician. 1999 Feb 15;59(4):925-34. PMID 10068714
  8. ^ Postgrad Med. 1999 Oct 1;106(4):115-6, 119-23. PMID 10533512
  9. ^ Semin Arthritis Rheum. 1999 Aug;29(1):56-63. PMID 10468415
  10. ^ 桑原政成, 丹羽公一郎, 西裕太郎 ほか、「健康診断受診者の血清尿酸値と尿中pHが腎機能に及ぼす検討」『痛風と核酸代謝』 2012年 36巻 1号 p.73-, doi:10.6032/gnam.36.73, 日本痛風・核酸代謝学会
  11. ^ Ann Rheum Dis. 2017 Jan;76(1):29-42. PMID 27457514
  12. ^ Arthritis Rheum. 2002 Aug;47(4):356-60. PMID 12209479
  13. ^ 膠原病・リウマチ診療 第4版 p281-303 ISBN 9784758318075


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