音戸の瀬戸 文化

音戸の瀬戸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/31 08:20 UTC 版)

文化

音戸の舟唄

映像外部リンク
NHK新日本風土記アーカイブス
音戸の舟唄

日本の著名な舟唄の一つ[注 4]。いつごろからか船頭の舟唄が作られた[44]。江戸時代には歌われていたとされ、渡船の近代化により歌われなくなっていったが、昭和30年代に高山訓昌が編曲したものが今日の音戸の舟唄となり、昭和39年保存会を設立し、歌い継がれている[49]

船頭可愛や音戸の瀬戸は 一丈五尺の艪がしわる

船頭可愛いと沖行く船に 瀬戸の女郎衆が袖濡らす
泣いてくれるな出船の時にゃ 沖で艪櫂の手が渋る
浮いた鴎の夫婦の仲を 情け知らずの伝馬船
安芸の宮島廻れば七里 浦は七浦七恵比寿
ここは音戸の瀬戸清盛塚の 岩に渦潮ドンとぶち当たる

— 音戸の舟唄、[50]

音戸清盛祭

5年あるいは6年に1度旧暦3月3日に開催[51][52]

清盛を偲んで行われていた念仏踊りが祭りの起こりと言われている[51]。これが天保年間(1830年から1844年)に時代行列へと変わった[51]。現存最古の記録は天保5年(1834年)旧暦7月16日・17日に行われたものになる[52]。戦後のことである1952年から開催費用が原因でしばらく休止し、1979年呉市無形文化財に指定、1991年に祭りとして復活した[51][52][53]

太鼓を鳴らしながら、毛槍の”投げ奴”、開削工事者に扮した”瀬堀”、大名の所持品を運ぶ”挟箱”、道中奴や道化踊りを交えた約500人が音戸の瀬戸沿いの道をねり歩く[52][53][54]

音戸清盛太鼓保存会

1992年音戸町制60周年記念事業として、清盛と音戸をテーマに作られた[55]

文学

船玉の ぬさも取あへず おち滝つ 早きしほせを 過にける哉 — 今川貞世、[3]

今川貞世は1389年(康応元年)『鹿苑院殿厳島詣記』にて一句詠んでいる。

舟宿暗門 憶曾随家君泊此 今十一年矣

 篷窓月暗樹如烟
  拍岸波声驚客眠
   黙数浮沈十年事

    平公塔下両維船 — 頼山陽

頼山陽は漢詩を残している。これは現在、おんど観光文化会館うずしおに掲げられている。

君よ 今昔之感 如何 — 吉川英治、[3]

吉川英治は『新・平家物語』を書くにあたり当地を取材に訪れ、瀬戸を見おろす丘に立ち一言残している[56]。 音戸の瀬戸公園にこれが吉川直筆で書かれている「吉川英治石碑」が建立されている[56]

天耕の 峯に達して 峯を越す — 山口誓子、[57]
寒港を 見るや軍港 下敷に — 橋本多佳子、[57]

山口誓子の方は句集『青銅』の中にあるもので、現在の音戸の瀬戸公園付近から対岸の倉橋島を見て詠んだ[57]。山口の弟子にあたる橋本多佳子のものは呉港を見て詠んだもの[57]。共に音戸の瀬戸公園に句碑が建立されている[57]

夕空のもともろともにしづまれり瀬戸に見さくるにし東の海
 瀬戸いでて落ちあふ潮は夕凪の海にうごきて渦ひろげゆく  — 葛原繁、[58]

葛原繁歌碑も音戸の瀬戸公園に建立されている。

ロケ地


注釈

  1. ^ のち1179年(治承3年)頼盛は厳島神社に寄進している[20]
  2. ^ 小早川氏の本姓は桓武平氏良文流土肥氏庶流。
  3. ^ 約4.5mの櫓がたわむ。
  4. ^ 地元では「日本三大舟唄」と言われている[42]。大阪『淀川三十石舟唄』山形『最上川舟唄』と共に三大舟唄であるとする説もある。

出典

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