青い山脈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/15 21:12 UTC 版)
登場人物
主要人物
- 島崎雪子
- 私立海光女学校の若い英語教師。新子のクラスの担任。
- 寺沢新子(しんこ)
- 海光女学校の5年生。
- 金谷六助
- 「今年大学に入ってるはずなんだけど、落第した」[8]高等学校生。駅前通りの丸十商店の息子。
- 沼田玉雄
- 独身の青年医師。海光女学校の校医。
金谷六助の周辺人物
- 富永安吉
- 金谷六助の友人。愛称ガンちゃん。「戦争の後期に六ヵ月ばかり招集された」[9][10]高等学校生[11]。庭球部のマネージャー。
- 弥吉(やきち)
- 金谷六助の父[10]。
- おとく
- 金谷六助の母[10]。
海光女学校
- 笹井和子
- 1年生。
- 松山浅子
- 5年生。寺沢新子の同級生。
- 野田アツ子
- 5年生。寺沢新子の同級生。
- 武田
- 校長。
- 八代(やしろ)
- 教頭。
- 田中
- まだ若い体育の教師。
- 白木
- 家事担当の教師。
- 岡本
- 国語・漢文担当の老教師。
- 井口甚蔵
- 理事長。市会議員。ブローカー。
父母
梅太郎と周辺人物
評価
作者の石坂洋次郎は、自身の著作について芸術性が薄い傾向で、とくに教師を辞めてからの作品『青い山脈』や『石中先生行状記』、『陽のあたる坂道』、『光る海』などは「通俗性が濃厚に沁(し)み出ている」と、1972年72歳の時に述懐している[13]。
大島渚は、『青い山脈』について性の問題を掘り下げない石坂洋次郎の「通俗的良識」の甘さと、政治などの「危険」な外的要因を避けている点を指摘する一方[14]、「この戦後最初の新聞連載小説が、私たちに与えた新鮮な感動については、それを実際にあじわった人間以外には、いくら説明しても、それを実感として伝えることはできないだろう。(中略)私は今もなお『青い山脈』の文章のひとつ、ひとつ、ことに登場人物の会話のひとつ、ひとつを昨日の記憶のようになまなましく、生理的に思い出すことができる」と、15歳の時に読んで受けた感動を1975年に回想した[15][16]。
西尾幹二は、第二次大戦後の日本の民主主義を批判的にとらえる視点から1997年に『青い山脈』を批判して否定した[15]。西尾の『青い山脈』批判の要点は、第1に社会や意識の改革における女性上位、第2に戦勝国アメリカ合衆国への迎合意識、第3に個人主義の偏重および国家意識の欠如、第4に発表後50年経過し期限切れによる存在意義の消滅である[15]。
高橋源一郎は、2010年ごろ30年以上ぶりに『青い山脈』を読み、太宰治らが生み出した戦後文学としてもっとも充実した作品であると評し、とくに兵役経験者で高等学校一の読者家である登場人物の富永安吉に注目し、作品の主軸ととらえた[17]。
三浦雅士は2020年に出版した『石坂洋次郎の逆襲』で、その小説について戦前・戦中・戦後を通じて女性の視点で社会を見たその自由主義的な一貫性を高く評価し[18]、『若い人』や『青い山脈』などについてもその明朗健全より重要なのは作品の主人公である女性の登場人物が「主体的に男を選び、主体的に行動する」点であると論じた[19][20]。
書誌
- 『青い山脈』新潮社、1947年、342頁、19 cm[21]。
- 『石坂洋次郎作品集 1』「青い山脈」「山のかなたに」新潮社、1951年、440頁、19 cm[22]。
- 『青い山脈』新潮社、新潮文庫、1952年、301頁、16 cm。
- 『青い山脈』新潮社、新潮文庫、1968年改版、301頁、16 cm、ISBN 4101003041[23]。
- 『石坂洋次郎文庫 5』「青い山脈」「山のかなたに」新潮社、1966年、445頁、20 cm[24]。
- 『青い山脈』小学館、P+D BOOKS、2018年、334頁、18 cm、ISBN 4093523436。
- 他に文学全集などに収録されている。
- ^ a b 無署名「石坂洋次郎の素顔」『石坂洋次郎』人と文学シリーズ 現代日本文学アルバム、学研、1980年、158頁。
- ^ a b 「青い山脈」『デジタル大辞泉』小学館、コトバンク。2022年5月10日閲覧。
- ^ a b 森英一「青い山脈」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館、コトバンク。2022年5月10日閲覧。
- ^ a b 坂尻昌平「青い山脈 映画」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館、コトバンク。2022年5月9日閲覧。
- ^ 「「青い山脈」連載始まる 恋愛・民主主義の「伝道師」昭和22年6月9日」(アーカイブ)『朝日新聞』(2010年6月19日付夕刊)、「昭和史再訪セレクション」『朝日新聞どらく』。2022年5月10日閲覧。
- ^ 無署名「石坂洋次郎文学へのいざない」『石坂洋次郎』人と文学シリーズ 現代日本文学アルバム、学研、1980年、22頁。
- ^ 小松伸六「解説」『石坂洋次郎』新潮現代文学 9、新潮社、1979年、394頁。
- ^ 『青い山脈』「日曜日」章。
- ^ 高橋源一郎『今夜はひとりぼっちかい?』講談社、2018年、241頁。ISBN 4062180111。
- ^ a b c 『青い山脈』「一つの流れ」章。
- ^ a b 『青い山脈』「和解へ」章。
- ^ 『青い山脈』「理事会開く」章。
- ^ 石坂洋次郎(1972年12月)「石坂洋次郎文学紀行/ふるさとの山に向いて」『石坂洋次郎』人と文学シリーズ 現代日本文学アルバム、学研、1980年、94頁。
- ^ 大島渚『体験的戦後映像論』朝日新聞社〈朝日選書〉、1975年、100-102頁。
- ^ a b c 千葉慶「『青い山脈』的なるもののゆくえ」『ジェンダー史学』第13巻、ジェンダー史学会、2017年、5-19頁、doi:10.11365/genderhistory.13.5。
- ^ 大島渚『体験的戦後映像論』朝日新聞社〈朝日選書〉、1975年、90-91頁。
- ^ 高橋源一郎『今夜はひとりぼっちかい?』講談社、2018年、241-242頁、253-260頁。
- ^ 三浦雅士『石坂洋次郎の逆襲』講談社、2020年、38頁他。ISBN 4065186013。
- ^ 三浦雅士『石坂洋次郎の逆襲』講談社、2020年、2-7頁、170頁他。
- ^ 「石坂洋次郎の逆襲「はじめに」より抜萃」講談社BOOK倶楽部。2022年5月13日閲覧。
- ^ 「青い山脈」国立国会図書館サーチ。2022年5月9日閲覧。
- ^ 「青い山脈 ; 山のかなたに」国立国会図書館サーチ。2022年5月12日閲覧。
- ^ 「青い山脈」国立国会図書館サーチ。2022年5月12日閲覧。
- ^ 「青い山脈・山のかなたに」国立国会図書館サーチ。2022年5月12日閲覧。
- ^ 「P+D BOOKS 青い山脈 Kindle版」Amazon.com. 2022年5月9日閲覧。
- ^ 『現代長編小説全集 2 石坂洋次郎集』講談社、319頁
- ^ 『現代長編小説全集 2 石坂洋次郎集』講談社、472頁
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