行商
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/24 06:50 UTC 版)
概説
行商は、客の注文を受けて運搬して行く配達とは異なり、顧客のいそうな地域を商品を運搬しながら販売する方法で、広義には定期的に開催される市場を巡って物品を販売する業態や、所定の地域を巡回しながら呼び止められたらその場でサービス[1]を提供する羅宇屋、包丁・はさみ研、靴磨きのような業態も含まれる。小売業に対して使用される言葉であり、卸売は行商とは言わない。商品の質[2]によっても行商範囲は異なり、取れたその日に消費される必要のある生鮮食品は都市周辺部や都市内部で採れたり作られた食品を運んで売り歩くが、より長期間の保存ができる物品などでは都市から都市へと渡り歩くような業態も存在する。
運搬は、現代では背中に背負って電車などの公共交通機関を利用したり、自転車やオートバイやリヤカー、あるいは軽トラックなどの自動車を使うことが多い。また、中世[3]から昭和の中頃までの日本でも、天秤棒を担ぎ、その両端に売りものをぶら下げて運搬することがあった。販売の場所は路上や空地、公園の一角を間借りするか、あるいは戸別訪問をする。
商売は元来、販売される商品がたくさんある場所や人から多くない場所や人へ融通するものであり、行商はそれを仲立ちする商売の起源ともいえる販売方法である。
なお、元来固定施設(店舗)で営業することがほとんどであった業種でも自動車に営業設備を設けて営業する形態が近年増えてきている。これらの設備を移動店舗、この販売形態は移動販売または無店舗販売と称し、一般的に行商という用語は使われない。加えて移動式の施設を用いて飲食物を提供する形態を屋台と称するが、移動する範囲も狭く広義の行商ではあるが行商と呼ぶことはない。
世界的に見てもこういった業態は多々存在し、都市部の市場で仕入れた物品を村落などを巡回する形で売り歩いた商人などの例は古今東西で枚挙に暇が無い。
この中にはシルクロードを行き交った商人たちのように、命懸けで山越え・砂漠越えをして点在する集落に物品を持ち込んだ者もいれば、そうやって多くの商人の手を経てもたらされた異国の物品をまことしやかな説明を付けて売る者も一部には存在した。中世ヨーロッパにおけるオカルティズムの中には、そういった商人の作り上げた説明が、真に受けられたと考えられる物品も数多く伝わっており、例えば「ウニコール」[4]がユニコーンの伝説と関連付けられ、解毒薬として流通していた。
いわゆる貿易も、当初の頃はこういった行商で都市間を巡回していた商人や隊商が担っており、これが交通・輸送技術の発達にも従い、より組織化され相互連結されて海外貿易などの極大な交易網に発展していったと考えられる。
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