虹
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虹のスペクトル
光の場合は波長の違いが色の違いに相当する。可視光線の波長は長い方から、6.563×10-4 mm 赤、5.893×10-4 mm 橙色、5.800×10-4 mm 黄色、5.461×10-4 mm 緑、4.861×10-4 mm 青、4.340×10-4 mm 藍色、3.968×10-4 mm 紫という順である[84]。
文化
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虹の色を何色とするかは、地域や民族・時代により大きく異なる。
例えば、日本では7色( 赤・ 橙・ 黄・ 緑・ 青・ 藍・ 紫)、アメリカやイギリスでは地方では6色( 赤・ 橙・ 黄・ 緑・ 青・ 紫)、ドイツや中国では5色( 赤・ 橙・ 黄・ 緑・ 青)、パプアニューギニアなどでは2色( 赤・ 黒)とされている。なお現代でも、かつての沖縄のように明、暗の2色として捉える民族は多い。
インドネシアのフローレンス島地方では、虹の色は、 赤地に 黄・ 緑・ 青の縞模様(色の順番としては、 赤 ・ 黄・ 赤・ 緑・ 赤 ・ 青・ 赤となる)とするが、この例のようにスペクトルとして光学的に定められた概念とは異なった順序で虹の色が認識されることも多い。
虹の色は言語圏によっても捉え方が異なる。実際に、ジンバブエのショナ語では虹を3色と捉え、リベリアのバッサ語を話す人々は虹を2色と考えている。このように、虹の色とはそれぞれの言語の区切り方によって異なる色の区切り方がなされるのである[85]。
虹の色が何色に見えるのかは、科学の問題ではなく、文化の問題で、何色に見えるかではなく、何色と見るかということであるという主張もある。
台湾高地の先住民セデック族の文化として、成人儀式(男性は首狩り、女性は機織りが上手くなった証し)として、虹の入れ墨が行われた。これは祖先の国(他界)へ行くための通行手形としての意味もある[86]。
伝承
ハワイのように虹が日常的にみられる地域もあるが、多くの地域では虹を見る条件が限られ世界各地で虹に関する伝説が伝承されている[1]。
キリスト教においては虹は「神との契約」「約束の徴」を意味する(創世記9章16節)。
中国には虹を龍の姿とする言い伝えがある[87]。明確に龍虹と呼ぶ地域(広東省増城市)や、「広東鍋の取っ手の龍」を意味する鑊耳龍(広東省台山市)と呼ぶ地域もある。
中世の日本では、虹の見える所に市場を立てた[88]。これは市場が、天界や冥府といった他界と俗界の境界領域に立てられるものという考えに基づき[88]、現代の感覚では理解しづらいが、墓場にすら市が立てられたのも境界領域と見られていたためであり[88]、『万葉集』において、柿本人麻呂が亡き妻を想って、「軽の市」に行き、妻をしのぶ歌を作ったのも、こうした考え方に基づく[88]。『枕草子』において、「おふさの市」=虹の市が登場し、中世の書物や貴族の日記にも、虹の立つところに市を立てなければならないという観念が確認でき[88]、これは虹が天と地の懸け橋という考え方に基づいていたためと見られ、神々が降りる場であり、それを迎える行事として市が開かれたと考えられる[89]。また中世貴族は虹が確認されれば、陰陽道の天文博士にそれが吉凶どちらかの予兆か占わせた[88]。ブロニスワフ・マリノフスキは、西太平洋のトロブリアンド諸島のクラと呼ばれる部族間の原始的交換儀式の際、呪術師に虹を呼び出す呪詞が唱えられる事例を報告しており、虹と原初的市の関係の古さが分かる[89]。
虹の根元にはお宝が眠るといった言い伝えもみられる[87]。
一方で、アイヌ民族は虹をラヨチと呼び、魔物として恐れていた(後述書 p.157)。このことに関して、中川裕は、美しいものに魔物が惹きつけられる(狙う)という考え方と関係すると指摘している[90](アイヌ語で魂をラマッ、死ぬことをライといい、ラ音には不吉な意味が含まれる)。
注釈
出典
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- ^ 西條敏美 2015, p. 48.
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- ^ 板倉聖宣 2001c, pp. 35–36.
- ^ ドイツのスコラ哲学者,自然学者。ラテン名 Theodoricus Teutonicus。ドミニコ会士で、1293年 - 1296年ドイツ管区長。プロクロスとアウグスチヌスの影響を受けて新プラトン主義的形而上学を展開,ドイツ神秘主義に影響を及ぼした。また虹の現象の画期的な説明を行なった。主著『知性と知られうるものについて』 De intellectu et intelligibili,『虹論』 De iride。(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
- ^ 板倉聖宣 2001b, pp. 35–36.
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- ^ ニュートン 1981, p. 24.
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- ^ Isaac Newton, Optice: Sive de Reflexionibus, Refractionibus, Inflexionibus & Coloribus Lucis Libri Tres, Propositio II, Experimentum VII, edition 1740:
Ex quo clarissime apparet, lumina variorum colorum varia esset refrangibilitate : idque eo ordine, ut color ruber omnium minime refrangibilis sit, reliqui autem colores, aureus, flavus, viridis, cæruleus, indicus, violaceus, gradatim & ex ordine magis magisque refrangibiles. - ^ Waldman, Gary (1983). Introduction to Light: The Physics of Light, Vision, and Color (2002 revised ed.). Mineola, New York: Dover Publications. p. 193. ISBN 978-0486421186
Newton named seven colors in the spectrum: red, orange, yellow, green, blue, indigo, and violet. More commonly today we only speak of six major divisions, leaving out indigo. A careful reading of Newton’s work indicates that the color he called indigo, we would normally call blue; his blue is then what we would name blue-green or cyan. - ^ 板倉聖宣 2001a, p. 9.
- ^ ドイツでは5色とされることも多い(鈴木孝夫、1978年、124頁)。全体の色の並びはロシア語ではもっと文学的に「すべての狩人はキジがどこに留まるかを知りたい。」という文章の各単語の最初の文字(КОЖЗГСФ)が色を現わす単語の最初の文字になるようにして覚える。
- ^ 板倉聖宣 2001a, p. 11.
- ^ 鈴木孝夫 1978, pp. 11–12.
- ^ 日高敏隆 1978, p. 21.
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- ^ 板倉聖宣 2001a, p. 29.
- ^ 明治6年神奈川県生まれ。神奈川尋常師範学校を明治29年に卒業。東京女子高等師範学校教授。(小野健司、2011、p.3)
- ^ 小野健司 2011, pp. 2–3.
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- ^ a b c d e f 網野 1988, p. 154
- ^ a b 網野 1988, p. 155
- ^ 中川裕『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』集英社〈集英社新書〉、2019年、157-158頁。ISBN 978-4-08-721072-9。
- ^ John M. McKinley and Paul Doherty (1979). “In search of the "starbow": The appearance of the starfield from a relativistic spaceship”. Am. J. Phys. 47 (4): 309-316. doi:10.1119/1.11834.
- ^ HippLiner -- A 3D interstellar spaceship simulator with constellation writing function
- ^ LIB_zine. “虹が持つスピリチュアルなメッセージとは? 特徴・状況別の意味10個”. 「マイナビウーマン」. 2023年8月7日閲覧。
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