砂糖依存症 砂糖と疾患

砂糖依存症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/08 21:40 UTC 版)

砂糖と疾患

アメリカ人の肥満の原因は砂糖、とくに「果糖にある」とされる。コロラド大学デンバー校のリチャード・ジョンソン(Richard Johnson)によると、ブドウ糖が全身の細胞で代謝されるのに対し、果糖は肝臓が中性脂肪にして(※果糖を代謝できるのは肝臓だけ)蓄積する。これが続くと、肝機能が低下し、脂肪肝の原因となる[3]。また、血中の中性脂肪の濃度が高い状態が続くと、高血圧脂質異常症を発症する。血糖値を維持しようとして膵臓がインスリンの分泌量を増やすことで、インスリン抵抗性を発症、さらには糖尿病メタボリック症候群を発症し、心臓発作のリスクが増大する[3]。ヒトが運動不足になる原因も砂糖依存によるといわれ、「糖分の摂取は一時的に高揚感が得られるが、エネルギーを奪われる」という[3]

砂糖中毒

アメリカ合衆国の歯科医師ウェストン・プライス(Weston Price)は、狩猟採集生活を送っている集団の食生活についての研究をまとめた報告書『食生活と身体の退化―先住民の伝統食と近代食その身体への驚くべき影響』(1939年)の中で、「砂糖を食べるようになってから、虫歯を患ったり、栄養不足に伴う病気が増えた」と述べている。ジョン・ユドキン(John Yudkin)は、著書『Pure, White and Deadly』(1972年)の中で、「肥満や心臓病を惹き起こす犯人は砂糖であり、食べ物に含まれる脂肪分は、これらの病気とは何の関係も無い」と断じている。ユドキンの主張を支持する者の1人として、カリフォルニア大学神経内分泌学者ロバート・ラスティグ(Robert Lustig)がおり、カリフォルニア大学が製作・公開したラスティグによる講演『Sugar: The Bitter Truth』の中で、「砂糖は毒物であり、ヒトを肥満にさせ、病気にさせる」「砂糖の含有量が多いものには課税すべきだ」と断じており[9]、著書『Fat Chance』の中でもそのように主張している。また、「砂糖はカロリーがあるだけで栄養価は皆無であり、肥満をもたらすだけでなく、タバコアルコールと同じように中毒性が強く、含有する成分の果糖が内分泌系に悪影響を与え、心臓病や心臓発作、2型糖尿病を発症するリスクを高める」として、「砂糖の含有量が多いものには課税すべきである」との主張を科学雑誌ネイチャー誌( 『Nature』 )に発表した[10]アメリカ心臓協会(The American Heart Association)は、糖分の過剰摂取について「砂糖は高カロリーで栄養が無いからだ」として警告しているが、ジョンソンやラスティグは、「カロリーの問題ではない」と述べている。

サイエンス・ジャーナリストのゲアリー・タウブス(Gary Taubes)は、2016年に出版した著書『The Case Against Sugar』(『砂糖に対する有罪判決』)の中で、「砂糖は『中毒性の強い薬物の一種』であり、ヒトを肥満にさせるだけでなく、心疾患の原因でもあり、健康を脅かす」「肥満とは、身体がホルモン障害を惹き起こした結果であり、そのスイッチを入れるのは砂糖である」と断じている[11]

カナダの腎臓内科医ジェイスン・ファン(Jason Fung)も、「砂糖の摂取は、血糖値および血中のインスリン濃度を速やかに急上昇させ、その状態を長時間に亘って持続させ、さらにはインスリン抵抗性をも同時に惹き起こす」「砂糖や人工甘味料は、インスリン抵抗性を惹き起こす直接の原因となる」「『どれくらいの量なら砂糖を摂取してもいいか』というのは、『どれくらいの量ならタバコを吸ってもいいのか』という質問と同じである」「砂糖を食べると太る。この事実に異を唱える者はいないだろう」「太りたくない、体重を減らしたいのなら、真っ先にやるべきなのは、糖分を厳しく制限することである」と断じている[12]


  1. ^ a b c d Hoebel BG; Rada P; Avena NM (2008). “Evidence for sugar addiction: behavioral and neurochemical effects of intermittent, excessive sugar intake”. Neuroscience and Biobehavioral Review 32 (1): 20–39. doi:10.1016/j.neubiorev.2007.04.019. PMC 2235907. PMID 17617461. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2235907/. 
  2. ^ a b c Margaret L. Westwater; Paul C. Fletcher; Ziauddeen (2016-06-02). “Sugar addiction: the state of the science”. European Journal of Nutrition (Springer Nature) 55: 55-69. doi:10.1007/s00394-016-1229-6. 
  3. ^ a b c d e f g リッチ・コーエン「砂糖の誘惑、その甘くない現実」ナショナル ジオグラフィック2013年8月号、日経BPnet,2013年8月8日。
  4. ^ Kathleen DesMaisons, Ph.D. (1998). "Potatoes Not Prozac." Simon & Schuster. ISBN 141655615X
  5. ^ Blass, E., E. Fitzgerald, and P. Kehoe, Interactions between sucrose, pain and isolation distress. Pharmacol Biochem Behav, 1987. 26(3): p. 483-9. PMID 3575365.
  6. ^ a b (Leah Ariniello, Brain Briefings, October 2003)
  7. ^ a b Tufts University Health & Nutrition Letter.New York:OCT 2002. Vol.20, Iss.8; Pg.1,3pgs. Media reports of sugar being addictive were inaccurate and speculative
  8. ^ WHO/FAO release independent Expert Report on diet and chronic disease(WHO)
  9. ^ Sugar: The Bitter Truth - YouTube
  10. ^ Robert H. Lustig, Laura A. Schmidt and Claire D. Brindis (2012年2月2日). “VOL.482 NATURE, P27 The toxic truth about sugar”. Nature. 2019年10月15日閲覧。
  11. ^ Taubes, Gary (2016). The Case Against Sugar. New York City: Alfred A. Knopf. ISBN 978-0307701640 
  12. ^ Fung, Jason (2016). The Obesity Code: Unlocking the Secrets of Weight Loss. Canada: Greystone Books. ISBN 9781771641258 





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