気動車・ディーゼル機関車の動力伝達方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 04:08 UTC 版)
その他の方式
- 静油圧式
- 「押し出し式」とも言われる液体式の一種。液体をある圧力で押し出すポンプとその先にこれを受ける水車を設け、押し出された液体が水車を回す事で動力を伝達するという機構で、液体の圧力と押し出し量を変えることで車両の速度や引っ張り力を変えられる。
- 鉄道では内燃機関車の最初期に用いられた事があるが、成績が良くないので広まらなかった[2]。
- 空気(ガス)式[10]
- 機関で空気圧縮機を駆動し、これを機関の排気ガスで温めながら内燃機関とは別の機関車のシリンダー(蒸気機関車のシリンダーに当たる部位)に導き、このピストンを動かす方式。
- 長所
-
- 電気式などに比べて構造が簡易的で取り扱いに特別な知識を必要としない。
- 各部分の修繕が容易で特別な設備も必要としない。
- 引張力や速度はシリンダーのカットオフで調節できるので調節が容易であり、広い範囲で機関の全出力を使える。(構造は違うが電気式の強みと同等)
- 伝達にかかる重量が割合軽く、価格も電気式どころか歯車式より安い[注釈 16]。
- 短所
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- 構造は簡易であるものの空気圧縮機の設計が相当に難しい。
- 構造上空気圧縮機が高熱になるので放熱が必要になる。
- フリクション式
- 摩擦力を利用した駆動方式。詳細は「フリクションドライブ」および「無段変速機」を参照
関連項目
脚注
参考文献
- 山下善太郎「内燃電氣車」『電氣學會雜誌』第57巻第585号、電気学会、1937年、285-302頁、doi:10.11526/ieejjournal1888.57.285、ISSN 0020-2878、NAID 130003614468。
- 機械式変速機の伝達効率について(英文)
注釈
- ^ 一般的には、排気量が大きくなるに従いトルク曲線は平らになって行く。
- ^ 一応、クラッチを工夫すれば1926年時点で1,260馬力の機関車(ドイツ製、ソ連向け輸出機)に歯車変速機が使用された例もあるが、1937年時点でも「大馬力になると設計が難しくなるので、特にかみ合いクラッチの場合は現在は200馬力付近を限度。」とされていた。(山下善太郎「内燃電氣車」p.290)
- ^ 特急用のATR100や要人輸送用のATS1は294 kWの機関を1編成あたり2基搭載していた
- ^ 日本での機械式変速機を搭載した営業用気動車としては、1997年(平成9年)に営業休止(2002年〈平成14年〉廃止)した南部縦貫鉄道のレールバスであるキハ101・102が最後。同路線の廃止後もこの2両は展示運転のため稼働状態を維持している。
- ^ 最高速度180 km/hを可能としており、実用化に向けて200 km/h運転も視野に入れた試験運転が行われている。
- ^ モータアシスト方式ハイブリッド(パラレルハイブリッド)気動車を除く。モータアシスト方式ハイブリッド気動車は、エンジンの出力も直接動力として用いるため、少なくとも変速機、逆転機、推進軸は必要である。
- ^ 世界的にはアメリカ合衆国などで、大都市や地下線区間に乗り入れる場合での採用が見られ、例えばニュージャージー・トランジットのALP-45DP型は定格出力4,400 kWの電気機関車であるほか、出力1,567 kWのディーゼルエンジン2基による走行も可能である。また、ヨーロッパにおける例としてはスイスのレーティッシュ鉄道Gem4/4形機関車などがあり、スイスでは他にも入換用機関車などに例がある。
- ^ 1937年(昭和12年)に発表された山下善太郎の「内燃電氣車」では、「全体として成績が芳しくなく参考になるところもない」と言い切られている。
- ^ 満鉄向けの物では750 HPのジキイ型が日本における電気式ディーゼル機関車の始まりで、一応列車も引けたが速度が低く(単行70 km/h・平坦線での540 t列車牽引時は45 km/h)、停車時電源用に使えるなど工事用を考慮したものであった。その後気動車ではあるが動力集中式の500 H.P.で平坦線なら時速100 km/hほど出せる物が製造されている(満鉄ジテ編成)。
- ^ 民間向けでは、1953年(昭和28年)に富士製鐵室蘭製鉄所構内鉄道D-301として、DMH17Aを2基搭載し37 kW級電動機4基を駆動する35 t級D型電気式ディーゼル機関車が日立製作所によって製造されるにとどまった。
- ^ 例外的な存在として、釧路臨港鉄道(現・太平洋石炭販売輸送)が1970年に1両を購入した、ゼネラル・エレクトリック社のU10B形を日本車輌製造でノックダウン生産する形で製造したDE600形がある。国鉄DF50形引退後は10年程度、本機が日本唯一の電気式内燃車両であった時期がある。
- ^ 当初はドイツ・MTU社製の1,700 PS級エンジン、後の増備車では保守上の理由から、既存の液体式ディーゼル機関車であるDD51形の機関換装工事の際に採用したのと同型のコマツ製1,800 PS級エンジンを搭載。
- ^ 損失増大を防ぐため、国鉄末期からJR化以降に設計されたものでは、ステーターが一方の方向だけに自由に回転できるよう、ワンウェイ・クラッチ(爪クラッチ)が組み込まれ、さらに負荷や車速の変化に合わせ、トルコンのロック、アンロックをきめ細かく電子制御されるものが主流となっている。
- ^ 湿式多板型式で複動式になっており、直結用または変速用のクラッチ板に油圧作動のクラッチピストンを押付けることにより、動力が伝達される。
- ^ トルコン以外に直結クラッチを用いる「ロックアップ機構」の多用で、ある程度改善を図れる。
- ^ 1937年時点のデータで同規模程度のもので重量が電気式の35%、価格が電気式を100%とした場合歯車式(機械式)82%、空気式63%。
出典
- ^ 山下善太郎「内燃電氣車」p.289
- ^ a b c d e f g 山下善太郎「内燃電氣車」p.290
- ^ 世界初の環境に優しい『モータ・アシスト式ハイブリッド車両』の開発に成功! - JR北海道プレスリリース 2007-10-23
- ^ 山下善太郎「内燃電氣車」p.295-296
- ^ 山下善太郎「内燃電氣車」p.296
- ^ a b 山下善太郎「内燃電氣車」p.296第6表「本邦における内燃電氣車」・297-302「VIII本邦における内燃電氣車の實例」
- ^ [1]
- ^ 『新型特急車両の開発中止について』(PDF)(プレスリリース)北海道旅客鉄道、2014年9月10日 。2017年9月2日閲覧。
- ^ “開発費25億円の夢、鉄くずに JR北海道、新型特急試作車を解体”. 北海道新聞(どうしんウェブ) (北海道新聞社). (2017年3月3日). オリジナルの2017年3月3日時点におけるアーカイブ。 2017年9月2日閲覧。
- ^ 山下善太郎「内燃電氣車」p.290-291
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