業
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ジャイナ教
西洋
西洋では、ドイツの思想家ゴットホルト・エフライム・レッシング(1729年 - 1781年)の時代から、生の繰り返しによる学びを通した個人の段階的な完成として、東洋よりはるかに楽観的な転生思想が唱えられてきた[46]。
心霊主義
フランス人アラン・カルデック19世紀に創始した心霊主義のキリスト教スピリティズム(カルデシズム)では、転生が信じられており、神から与えられた自由意思によって、転生する間に過ちを起こしてカルマを形成し、この負債であるカルマによって、その人に災いが起こると考えられた[47][48]。人間の苦しみの原因は自らが過去生で蓄積した負債であり、地上の生はこの負債の返済のためにある[47]。また人生の苦しみは神の恩寵でもあり、苦しみを通じて負債が軽減されることは神の期待に沿うことであり、苦しみを乗り越えることは大きな栄光であると考えられている[47]。スピリティズムにおいて、自由意思は負債の原因であると同時に救いを可能にするものであり、個人が救済されるか否かは全て個人の自由意思次第であり、救いは慈善活動、他者救済のみによって可能となる[47]。
エドガー・ケイシー(後述)と同時代には、心霊主義の霊媒モーリス・バーバネルがおり、彼に憑依した霊であるという「シルバー・バーチ」という人格によると、転生とは償いや罰が問題ではなく、進化のためにあり、「業という借金」は「教訓を学ぶための大切な手段」であるとされ、懲罰的な意味合いは中心から外されているか、完全になくなっている[49]。
神智学
19世紀に近代神智学を創始したロシア人オカルティストのヘレナ・P・ブラヴァツキーは、転生説を説き、その中核をカルマ論であるとし、それを「全存在を貫く不可侵の法則」であるとした[8]。身体的な進化のベースに霊的な進化があると主張し、人間は転生の繰り返しを通して神性の輝きに向かって進化するもので、連続する生はカルマの法則によって統括されていると考えた[50]。古代ギリシアやカルデックといったヨーロッパの転生説は、カルマ論が欠けているため、十分な「科学的真理」になりえなかったとみなしている[8]。
ブラヴァツキーはインドの伝統思想に傾倒したが、彼女の神智学のカルマ論は、その思想がインドの思想と異なることをよく示している[8]。彼女が言うカルマの法則は、善業善果(良い事をすれば良い結果となる)、悪業悪果(悪いことをすれば悪い結果となる)の因果応報の理で、これにより世の不正は正され、社会は進歩し、人間は神へと進化するという[8]。神智学のカルマの法則は、この「神への進化」という目的論と不可分であるとされ、止滅の方向が重視されるインドのカルマ論とは別物である[8]。インドにはそもそも進化という発想はなく、インドの業(カルマ)の理論では、神智学が言うような進化・発展とは逆に、止滅の方向で根元へと至る[8]。インドの輪廻・業の理論では、人間は生まれ変わって虫になることもあるが、神智学ではこうした考えは否定されており、インド・イラン学研究者の岡田明憲は、近代ヨーロッパ文化を特徴づけたダーウィンの進化論の影響と、さらにキリスト教的終末観に基づく目的論的歴史意識が見られると指摘している[8]。神智学はヨーロッパの限界を超えようとし、キリスト教を批判したが、その思想はヨーロッパ的な意識を脱し得ていない[8]。
ニューエイジ
近代神智学から直接生まれ変わりの思想を受け継いだニューエイジでは、転生やカルマが信じられている[51][52]。津城寛文によると、ニューエイジを一般に広めた女優のシャーリー・マクレーンなどの「スピリチュアルな」重要人物たちは、心霊診断家のエドガー・ケイシーを最大の権威として参照しており、ケイシーは現代アメリカの転生思想に最も大きな影響がある[53]。催眠状態のケイシーが語る「リーディング」で伝えた原則的な教訓は、「蒔いたものは刈り取らねばならない」という新約聖書の言葉を標語にするもので、死後も存在が続くと意識することによって生じる内面の正義を目的とする倫理である[53]。リーディングでは、カルマという用語で説明された[53]。ヒンドゥー教から用語を借りつつも、キリスト教内部に元々あった教えであることが暗に示されている[53]。ケイシーの教えには、カルマを活用することで生まれ変わりの機会を改善するという志向がある[53]。リーディングには、割り当てられた問題を今生で解決し、もう地球に転生しないかもしれないというごく少数の事例もあり、彼らは死後より高次の惑星に移行するとされている[53]。ケイシーはアトランティス大陸滅亡を歴史的事実として語り、その時のカルマにより現代社会の滅亡が近いという終末論を唱えた[54]。
ニューエイジの「カルマの法則」は、原因と結果に関する宇宙の法則、互いに結びつき道徳的な均衡へと向かう宇宙の傾向の一部であり、しばしば道徳的な意味で宇宙の進化と同じと考えられた[51][52]。悪や苦しみは幻影であるとされ、カルマは悪や苦しみとは無関係の概念になっている[51]。今の人生の課題は前世のカルマによって決められているという考え方は、生きる指針を見失い喪失感に苦しむ現代アメリカ人たちから、広い支持を得た[55]。
脚注
注釈
- ^ 原語の karman は、サンスクリットの動詞語根「クリ」(√kṛ)、為す) より派生した[1]。羯磨(かつま)と音写する[2]。
- ^ 原始仏典である阿含経典(二カーヤ)において、ウパニシャッドは言及すらされておらず、まったく存在していなかったと考えるからである[要出典]。登場するヴェーダも三つまでである[要出典]。
- ^ ただし、業因には、煩悩などの「業を起こさせる原因」という意味もあり、因業には「因と業」すなわち「主因と助縁」という意味もある[2]。
- ^ 業とその苦である報いのことを業苦という場合もある[2]。
- ^ 非善非悪の無記業は業果を引く力がない[2]。
- ^ 経量部や大乗仏教では、身・語を動初(どうほつ)する思(意志)の種子(しゅうじ)のことを指して業道という場合もある[2]。
出典
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- ^ 大田 2013. 位置No.1165/2698
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