植木鉢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/06 07:13 UTC 版)
分類
栽培鉢と鑑賞鉢
植木鉢は、植物の生理に合致することと、鉢そのものの美観という2つの条件を満たされることが重要である。これらのどちらかに重点を置くかにより、栽培用の鉢と装飾、展示用の鉢がある。ビニールポットや駄温鉢はもっともシンプルな栽培専用鉢であるが、一般的には両者を兼ねているものが多い。欧米では装飾専用の鉢が発達しており、鑑賞に適した状態になった植物を栽培用の鉢のまますっぽり収めるか、植え替えて使用する。また切り花を活けるためなどにも使用する汎用的なものであり(つまり排水孔がないものが多い)、美しく装飾されたものが多く、鉢そのものが観賞に堪えうる美的価値を持っている。このようなものを英語では"Jardiniere"または"Cache pot"と呼び、栽培用のものは"Planter"、"Flower pot"等と言うことが多いが、それほど厳密に使い分けられてはいない。高い台とセットになっていることもある。一方盆栽などの日本や中国の伝統的な園芸では、植物と鉢がよくなじんで一体化することが重要なので、このような飾り鉢はあまり使われないが、植物の美しさを引き立てつつ、しかもそれに見劣りしない風格と美を有する鉢であることが重要である。
形状による分類
- 朝顔型
- 西欧の庭園では、古くから修景用に大きな植木鉢が置かれることが多く、このようなものの多くは、口が朝顔状に開いた古代ギリシアの壷を模した形状をしており、植木鉢としてだけでなく花瓶としても使われる。室内用のものもあり、把手や台がついていることが多い。
- 桶型、筒型
- 栽培用植木鉢として最も一般的なものである。口に向かってやや広がっていく形のものが最も多く、また使いやすい。把手や脚がついているものもある。
- 瓶型、樽型
- 口がややすぼまった形状のもので、飾り鉢に多い。欧米では木樽や中国の金魚鉢、日本の火鉢や瓶を流用することもしばしばある。排水孔がなく、花瓶兼用のものも多い。
- 箱型
- 立方体、または左右か上下に長い直方体で、日本でプランターと呼ばれるものには長方体のものが多いが、英語では"Planter"と"Flower pot"に形状的区別はない。これも実用的で使いやすいもので、木製や金属製、プラスチック製のものも多い。よく道端で魚の発泡スチロール容器や木箱を転用しているものが見られる。上下に長い箱形のものとしては盆栽用の懸崖鉢に例が見られる。
- 楕円筒型
- センターピースとして使われる豪華な飾り鉢に多い。台や脚、把手がついているものが多い。
- 皿型
- 高さよりも直径がはるかに大きいもので、「浅鉢」、更に平らなものは「平鉢」とも呼ばれる。盆栽鉢やシダ鉢、播種用の鉢(パン)に多い。縁、楕円、長方形、多角形と色々な形のものがある。脚のついているものも多い。
- 椀型、逆円錐型、角型
- 底が平らではないもので、高台がないものもあり、多くが釣り鉢に用いられる。また縦に半分に切った形のものがウォールポケットに用いられる。
- 板型
- 広義の植木鉢の範疇に含まれるものと考えて、ヘゴなどから作った通気性のある板に、ランなどの着生植物を水苔等で植え付けるもの。垂直に使用するので、根付くまでは針金等で植物を固定する。また水平方向での利用として、特に草もの盆栽で、ほとんど平らな陶板や自然石の板に植え付けるものもある。
- 擬物型
- 動物や人間、貝、切り株、器具などの形状を模したもの、また人間が鉢を抱えたりしているデザインのものも近年は非常に多い。
- 不定型
- 石をそのままくり抜いたもの、流木、大型の貝殻などの自然物の流用、また不整形な陶器など。イワヒバの根塊や苔玉も広い意味で植木鉢と言える。
このほか幅、奥行きに対し高さの比率が大きい(見込が深い)鉢を「深鉢」と言う。
用途による分類
- 置き鉢
- 一般的な、台や地面に置いて使用、鑑賞する鉢
- つり鉢
- 天井や軒からつり下げて栽培、鑑賞する鉢
- ウォールポケット
- 屋外や室内の壁にかけて栽培、鑑賞する鉢
また、特定の植物用、ジャンル用に特化したものも見られる。これらはその植物の生理や形状に合わせたり、視覚的効果を狙って作られている。
- 盆栽鉢 - さまざまな形があるが、浅いものが多い。懸崖用の高さの比率が大きい鉢を「懸崖鉢」という。
- 朝顔鉢
- 菊鉢
- 桜草鉢 - もともと瀬戸焼の陶器で、日用品としての容器「孫半土(まごはんど)」を流用したもの。形状や色、保水性などがサクラソウに合致していたため愛用された。現在はこれに似せた陶器が製作される。
- 蘭鉢 - ラン科植物は多くが根に十分な通気を必要とするうえ、高価なものも多いので、独特の鉢が用意される。
- 睡蓮鉢
- 水栽培グラス
- バルブポット
- ビニールポット - 軟質プラスチック性のものを言う。黒色のものがよく知られており、苗など多量に栽培する場合に、軽くて扱いやすいため用いられる。ポリポットとも呼ばれる[1]
また、植木鉢と保温用のカバーが組み合わされているものもある。ワーディアンケース、アクアリウムもその意味で植木鉢の一種とも言いうる。
大きさ、サイズ
植木鉢の大きさは、植える植物体の大きさや数にほぼ対応して決められる。細かくいえば、見た目の美的バランス、植物の地下部の形態や量、また培養土の総保水量と植物の生活に必要な水分量とのバランスなどでほぼ決まる。もちろん灌水量や置き場所の環境等である程度調節できるので、それほど厳格なものではない。植木鉢の最上部の縁の直径を計りサイズを決める。
さまざまな大きさのものがあり、小さなものではミニ盆栽用の直径3センチメートルほどのものから、巨大なものでは1メートル以上のものまである。大鉢、中鉢、小鉢という分け方もあるが絶対的なものではない。一般的な園芸では、およそ直径15センチメートルから20センチメートル前後が中鉢、30センチメートル程度以上が大鉢と呼ばれることが多い。一号、一寸は3cm程。高さが同じでも、直系が違えば号数が異なる。日本では、一般的な植木鉢は完全に正確ではないが尺貫法に準拠した規格で製作されていることが多い。たとえば「三号鉢」は口径が約三寸、「七号鉢」は同じく約七寸、「十号鉢」または「尺鉢」は口径約十寸(一尺)という具合である。五号以下では五分ずつ小さなサイズがあることが多い。同じようにイギリスの古い植木鉢では、同様にほぼインチ、フィートにしたがっていることが多い。
注釈
- ^ 植木鉢無しの状態、つまり植物の根に土がついただけの状態のものを例えばコンクリートやタイル張りの場所に置いても、水をやるたびに土壌が流れていってしまい、やがて根がむき出しになってしまう。また植木鉢無しでは、植物の角度(姿勢)が安定しない。
出典
- ^ 『栽培法及び作業法』, 職業訓練教材研究会 (2005年2月10日),ISBN 978-4786310218
植木鉢と同じ種類の言葉
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