森本晃司 (アニメーター)とは? わかりやすく解説

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森本晃司 (アニメーター)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/20 01:24 UTC 版)

もりもと こうじ
森本 晃司
生年月日 (1959-12-26) 1959年12月26日(64歳)
出生地 日本和歌山県
職業 アニメ監督映像作家アニメーター
活動期間 1979年 -
配偶者 福島敦子
主な作品

監督
ロボットカーニバル - フランケンの歯車
『とべ! くじらのピーク』
彼女の想いで MAGNETIC ROSE
『KEN ISHII - EXTRA』
音響生命体ノイズマン
GLAY - サバイバル
アニマトリックス - BEYOND
宇多田ヒカル - Passion』(アニメーションパート)
Genius Party Beyond - 次元爆弾


アニメーター
スペースコブラ』(原画)
ゴルゴ13 劇場版』(原画)
SF新世紀レンズマン』(メカニックデザイン・原画)
迷宮物語 - 工事中止命令』(原画)
ダーティペア 劇場版』(OPアニメ)
AKIRA』(作画監督補)
魔女の宅急便』(原画)

マクロスプラス』(コンサートシーンアニメーション)
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森本 晃司(もりもと こうじ、1959年[1]12月26日 - )は、日本のアニメーション監督映像作家ビジュアルクリエイターアートディレクター[2][3]。クリエイティブチーム「phy(ファイ)」主宰。アニメ制作会社STUDIO4℃」創立メンバーの一人[4]京都精華大学客員教授文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査委員(第17回、第18回、第19回)。ビジュアルクリエイターとして世界各国のアートプロジェクトに参加、企業へのアートディレクションやCM、プロダクトデザイン、空間デザインなどアニメーション制作以外の分野で活動も積極的に行っている。

経歴

和歌山県海草郡美里町(現在紀美野町)出身[1]。山の村で育ち、幼少時代から絵を描いて過ごす。『宇宙戦艦ヤマト』を見てアニメーション制作を志す[5]。それ以外にも『ルパン三世』や『ガンバの冒険』、『未来少年コナン』などの作品に衝撃を受ける[5]。特に『ガンバの冒険』に影響を受け、監督の出崎統の名前を意識するようになる[5]

大阪デザイナー専門学校を卒業後、出崎統の所属していたアニメ制作会社マッドハウスに入社[4][5]。入社前は出崎や宮崎駿などの演出家の方が気になっていて、作画について考えるようになったのは実際にアニメーターになってから[5]。最初に意識したアニメーターは金田伊功で、森本にとっては金字塔のようにそびえ立った存在だった[5]。影響を受けたのはいわゆる金田ポーズのようなわかりやすい部分ではなく、アクションの作り方やエフェクトなどだった[6]。また『ルパン三世(新)』の第145話「死の翼アルバトロス」や映画『カリオストロの城』を作画したテレコム・アニメーションフィルム友永和秀からも影響を受け、破片や爆発を細かく描くようになった[6]

1980年、出崎統と杉野昭夫が新しく設立したスタジオあんなぷるに移り、アニメーターとして頭角を現す[7]

あんなぷる在籍中、『黄金戦士ゴールドライタン』でのなかむらたかしの作画に衝撃を受け、すぐに友人を介してなかむらに一緒に仕事をしたいと申し入れる[6]。そして後に妻となるアニメーターの福島敦子を連れてあんなぷるを辞め、フリーになる[4][6]

1987年、オムニバスOVA『ロボットカーニバル』の「フランケンの歯車」で監督デビューを果たす[8]

1988年スタジオジブリの草創期を支えた一人、田中栄子と映像制作集団STUDIO4℃を創設[7][8]。森本が『魔女の宅急便』の制作に参加したことから、当時ジブリのラインプロデューサーだった田中との親交が深まり、「自分たちのパブリックスペースを作りたい」という森本と佐藤好春の願いに田中が賛同したのがきっかけだった[9]

1991年、『とべ! くじらのピーク』で劇場作品を初監督する。

2011年、STUDIO4℃を離れる。少数精鋭のクリエイティブチーム「Φ Phy」を主宰し、以後はそこを拠点に制作活動を展開する[8]

人物

大友克洋押井守たちから絶大な支持を受けるアニメーターとして活躍した後、監督や演出も手掛けるようになる[2][8]。1980年代前半にリアルさとトリッキーな面白さを合わせもつ作画スタイルでアニメーターとしてファンを魅了すると、後半には大友克洋に才能を認められて『迷宮物語』『AKIRA』等の大友関連作品にメインスタッフとして参加する[5]。オムニバス映画『迷宮物語』の「工事中止命令」では、大友監督のもと、なかむらたかしと二人で作画にあたり、28歳の時には大友が自身の漫画を映画化した初長編作品『AKIRA』で、設定および作画監督補に抜擢される[10]。そして30歳の時に大友原作のオムニバス映画『MEMORIES』の一篇「彼女の想いで - MAGNETIC ROSE」(脚本:今敏)で監督を務める[注 1]。『AKIRA』以降、湯浅政明近藤高光などの作画を手掛けるアニメーターと組んだ演出の仕事が増えていく。森本自身は、「自分としては、(『AKIRA』を)作画で参加する作品の最後にしようと思っていた」と語っている[10]

デジタル技術を取り入れることにも積極的で、3DCGによる作品も手がけている[5]セガ・エンタープライゼスとシンクの共同出資による3DCGスタジオ、トリロジーの立ち上げにも参加。CGクリエイターのマイケル・アリアスやプロデューサーの竹内宏彰などと共に、松本大洋の漫画作品『鉄コン筋クリート』の3DCGパイロット版を監督する[注 2]。同作品は第3回文化庁メディア芸術祭デジタルアート部門優秀賞と第14回マルチメディアグランプリ1999CG部門最優秀賞を受賞した[11][12]

オムニバスアニメーション作品『アニマトリックス』では、映画「マトリックス」を監督したウォシャウスキー兄弟直々のオファーにより、その内の一本「ビヨンド」を監督・脚本した。2人はかねてから森本晃司作品に強い影響を受けてきたという。

生粋のテクノファンでも知られる音楽好きの森本は、アーティストとのコラボレーションにも積極的に取り組んでいる[2]。1996年にケン・イシイのミュージック・ビデオを監督したのを皮切りに、その後も宇多田ヒカル浜崎あゆみGLAYといったアーティストのMVを手がけて行った[4]。ケン・イシイと組んだ『EXTRA』のビデオは、アジアの混沌とした都市空間を音楽とともに突き抜ける快楽的な疾走感などが国内外から絶大な評価を受けた[2]。その斬新で緻密な世界観を描いたアニメーションMVは世界的に話題となり、ヨーロッパを中心とした日本のアニメーションブームのきっかけの一つとなった[3]。1999年、GLAYのメンバーであるJIROのアプローチを受け、シングル『サバイバル』のMVを監督。日本のビデオ・DVDシングルの歴代売上第1位を記録した(2013年時点)。森本ファンである事を公言していた宇多田ヒカルのアプローチにより、2005年にUtada名義でリリースされた彼女のアルバム『EXODUS』の楽曲を使用したミュージック・ビデオ集『Fluximation』[注 3]を総監修。1997年のショートフィルム『音響生命体ノイズマン』では、菅野よう子のテクノ音楽とコラボレーションした。

主な作品

テレビアニメ

OVA

映画

ミュージック・ビデオ

  • ケン・イシイ『EXTRA』(1995年) - 監督・キャラクターデザイン・絵コンテ・作画
  • ブルートーンズ4-Day Weekend』(1998年) - 監督・キャラクターデザイン・絵コンテ・作画
  • GLAYサバイバル』(サバイバル2.7-D)(1999年) - 監督・キャラクターデザイン・絵コンテ・作画
  • キセル『次元ループ』(2002年) - 監督
  • 宇多田ヒカルPassion』(2005年) - アニメーションパート監督・原画
  • Utada×Koji Morimoto『Fluximation』(Utadaのアルバム『EXODUS』収録曲全14曲を各40秒ずつ使ったMV集)(2005年)
    • 01『Opening』 - 監督・原画
    • 03『Exodus'04』 - 監督・原画
    • 09『Crossover Interlude』 - 監督・原画
  • 『Amazing Nuts!』(rhythm zoneのアーティストとSTUDIO4℃のクリエイターによるアニメMV作品集)(2006年) - 原画
    • RAM RIDER「GLASS EYE」 - キャラクター原案
  • 元気ロケッツ『Breeze』(2007年)
  • システム7『火の鳥』(2007年) - mu-℃ magic名義
  • たむらぱんゼロ』(2008年)
  • Gong『How To Stay Alive』(2009年) - mu-℃ magic名義
  • MASTERLINKSUPER SPEED』(2010年)
  • システム7『POSITIVE NOISE』(2011年) - mu-℃ magic名義
  • スタージル・シンプソン『Mercury in Retrograde』(2019)

CM・トレーラー

  • トビラを開けて(NTT ON-DEMANDデモ映像)(1995年) - 監督・作画監督・キャラクターデザイン[14]
  • NTTPCコミュニケーションズInfoSphere』(1997年)[14]
  • 『Mary Jane:-Le Saunda-』(香港、中国でのみ放送)(2000年) - 監督
  • コンピュータ総合学院HAL(2001年) - 監督
  • CAPCOMゲームボーイ『ロックマンエグゼ3』(2002年) - 監督
  • NIKE CM『天狗の恐怖』編(2004年) - 監督
  • NIKE CM『Nike Blazer Mid iD: Realcity』(2008年) - 監督
  • 四国地方限定CM[注 9]『MARUNOUCHI HELIOS』(2009年) - 監督
  • web広告『Attraction/魅力』(フランス政府の禁煙広告キャンペーン)(2010年) - 監督
  • 四国地方限定CM part2『MARUNOUCHI HELIOS』(2011年) - 監督
  • 『KOJI MORIMOTO × NAVIelite』(2016年) - iPhone,Android向け本格カーナビアプリ「NAVIelite」とコラボレーションした短編アニメーション
  • MONOアルバム『Rays of Darkness』(「Recoil, Ignite」)& 『The Last Dawn』(「Where We Begin」)オフィシャルCM(2014年) - アニメーションティーザー映像監督・キャラクターデザイン・原画・美術監督・背景

テレビ番組

  • MTV「JAPAN TOP 20」(1987年) - オープニング[14]
  • JET TV』ステーションID(1996年) - OPアニメーション
  • 『COMPUTER CHANNEL』ステーションID(1998年)
  • 『裏路地ダイヤモンド』『デジタル横丁ハッピーあります(DIGITAL YOKOCHO -IT IS HAPPILY-)』(2000年)
  • TBS系『バラエティーニュース キミハ・ブレイク』(2008年) - OPアニメーション
  • iOS/Android向けスマートフォンゲーム『【18】キミト ツナガル パズル』(2016年) - VRトレーラー

イベント映像

  • 関西新空港開港記念イベント「恐竜博(KYORYU HAKU)」(1995年) - 展示映像
  • 「25th Anniversary マジック:ザ・ギャザリング展」(2018年) - 短編アニメーション "φ"

舞台

  • 『羊人間012』(2013年12月) - 脚本・演出

受賞履歴

書籍

  • 2001年 裏路地ダイヤモンド
  • 2004年 Oレンジ

脚注

注釈

  1. ^ この作品は、リドリー・スコット監督が好きな作品として挙げている。
  2. ^ のちにマイケル・アリアスが劇場版の監督を務める。
  3. ^ 携帯サイトでのみダウンロードが出来る配信作品として話題になった。
  4. ^ ショートムービー53本シリーズという異例の構成は森本自身のアイデア。
  5. ^ 2011年、パリカルティエ財団現代美術館「MOEBIUS-TRANSE-FORME」およびアメリカ ロサンゼルス Little Tokyo Design Weekにて上映。
  6. ^ ゲーム『ストリートファイターIV』の家庭用版初回購入特典DVDに収録されている長編ムービー。
  7. ^ 実写映画『ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー』の本編終了後に公開された、本編には登場しないキャラクター春日野さくらを主人公としたショートアニメ。
  8. ^ トヨタの高級車ブランド、レクサスとハリウッドの制作会社によって製作されたショートフィルム作品『LEXUS SHORT FILMS』の5本中の1本。実写パートの監督はHIKARI(宮崎光代)が担当[13]
  9. ^ RNB南海放送、EBCテレビ愛媛、ITVあいテレビ、EAT愛媛朝日テレビの4局放送。

出典

  1. ^ a b Genius Party BEYOND 公式ガイドブック 2008, p. 82.
  2. ^ a b c d アニメーション界の大御所、森本晃司が初の舞台に挑戦!『羊人間012』間もなく披露!”. Tokyo Art Beat. 株式会社アートビート (2013年11月21日). 2022年2月20日閲覧。
  3. ^ a b 押井守監督・森本晃司監督による短編アニメ公開、KENWOODとコラボ「“つながる”ことで広がる未来」を表現”. ガジェット通信. 東京産業新聞社 (2020年12月20日). 2022年2月20日閲覧。
  4. ^ a b c d MASTERLINK、最新PVは森本晃司監督による映像作品”. BARKS. ジャパンミュージックネットワーク (2010年10月5日). 2022年2月20日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h animator interview森本晃司(1)”. WEBアニメスタイル. 株式会社スタイル (2001年6月18日). 2022年2月20日閲覧。
  6. ^ a b c d animator interview森本晃司(2)”. WEBアニメスタイル. 株式会社スタイル (2001年6月23日). 2022年2月20日閲覧。
  7. ^ a b タニグチリウイチ (2021年6月28日). “先鋭に王道を乗せジブリ沈黙の時代に存在感示すアニメスタジオSTUDIO4℃”. IGN Japan. 産経デジタル. 2022年2月20日閲覧。
  8. ^ a b c d 夢の世界を、自由自在に描く──TVアニメ「18if」、森本晃司インタビュー (3)”. アキバ総研. カカクコム (2017年9月18日). 2022年2月20日閲覧。
  9. ^ スタジオ4℃はこうして出来た!!”. BEYOND CITY. STUDIO4℃. 2022年2月20日閲覧。
  10. ^ a b animator interview森本晃司(3)”. WEBアニメスタイル. 株式会社スタイル (2001年7月11日). 2022年2月20日閲覧。
  11. ^ a b 歴代受賞作品 第3回 デジタルアート(ノンインタラクティブ)部門優秀賞”. 文化庁メディア芸術祭. 文化庁. 2022年2月20日閲覧。
  12. ^ a b "マルチメディアグランプリ1999"グランプリが決定!”. アスキー. 角川アスキー総合研究所 (1999年12月2日). 2022年2月20日閲覧。
  13. ^ 光岡三ツ子 (2013年8月7日). “LEXUS SHORT FILMS 近未来の日本でレクサスが空を飛ぶ——ショートフィルム『A Better Tomorrow』”. GQ JAPAN. コンデナスト・ジャパン. 2022年2月20日閲覧。
  14. ^ a b c 『音響生命体ノイズマン』DVD 追加情報 特典映像タイトル決定!”. WEBアニメスタイル. 株式会社スタイル. 2022年2月20日閲覧。
  15. ^ a b Attraction/魅力”. STUDIO4℃. 2022年2月20日閲覧。

参考文献

外部リンク




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