松阪牛 産地偽装

松阪牛

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/06 06:43 UTC 版)

産地偽装

有名な牛であるため、産地偽装が起きやすく、松阪市及びその近郊の肥育農家にて組織を作り松阪牛の定義付けを行い、松阪牛個体識別管理システムを運用して、出荷した牛肉に専用のシール及び証明書を付け、個体識別番号により産地・肥育農家・移動履歴その他の情報が検索できる等、様々な対策を行っている。販売店には鈴の形をした看板が会員証として配布され、各々に会員番号が付加されている。販売時には、生産地を示す認証表示が販売店において行われている。

三重県は、生産者からの申請を受けて三重ブランドのひとつに認定している。

商標権問題

2008年5月、中国において松阪牛協議会が2006年5月22日に「松阪牛」での申請を行ったが、それより8ヶ月ほど早く「松阪牛」と1字違いの「松坂牛」が、中国人によって2005年9月29日に商標登録を申請されていることが三重県松阪市の調査で分かった[41]。しかし、松阪市の申請は、よく似たロゴが登録済み、一般的な食材として2010年4月28日付で却下された[42]

この申請過程で2001年に「松阪」の文字を使ったロゴマークが、2006年2月までに「松坂牛」や「松板」が中国において商標登録申請され、商標登録されていることなどが判明した。協議会は「松阪牛」「松阪肉」の商標を守るため、2009年7月には山中光茂市長が訪中し、中国商標局の幹部に適切な措置を求めていた[43]

2010年5月31日の松阪牛協議会の総会において会長の山中光茂市長が、民主党(県第4総支部)が協力的でないことを発言した。それに対して、民主党松田俊助支部幹事長は「ずっと民主党批判をしている山中市長の名前で国へ要望を上げるのは難しい」と発言した[44]

2010年6月の夕刊三重に、首相が交代するあわただしい政局や口蹄疫問題の発生が重なり農林水産省幹部との会談が延期されたため、自由民主党みんなの党に要望を聞いてもらうことになったことや、民主党参議院議員から協力的な申し入れがあったものの、1週間後に「幹事長室から明らかな圧力があり「動くな」と指令が出た」との返事を聞いたとする記事が掲載された[45]

その他

  • 近年では食肉だけでなく皮革加工品用材料としての利用が行われている。時計バンドメーカーバンビや生産者と縁の深い寺門ジモン等によってブランドSATOLI(さとり)が立ちあげられ、時計バンドや財布等が生産・販売されている。なお、正規品には三重県松阪食肉公社発行の認定書及び個体識別番号であるJPナンバーが発行され、食肉同様のトレーサビリティが確立されている。
  • 台湾では日本産品の評価が高く、それにあやかって日本ブランド風のネーミングが商品に付けられることがある。松阪牛は台湾で霜降り肉の代名詞となっており、そのイメージから豚肉の豚トロに相当する部位が「松坂豚(松坂豬、松坂肉)」の名称で販売されている[46]

注釈

  1. ^ 田幸和歌子が三重県農水商工部に問い合わせたところ、「まつざかぎゅう」でも誤りではないとの回答を得た[4]が、松阪牛協議会は誤りであると公式サイトで明記している[1]。松阪市は2005年の市町村合併を機に「松阪」の読み方を「まつさか」に統一した[1][5]。語呂の都合から「まつか○○」と濁るように呼称されることがあり、そのようなルビも散見される。地元では「まっつぁか」のように発音されることも多い[4][6]
  2. ^ 「大坂」が「大阪」に変更されたこともあり、1889年(明治22年)に「松坂」から「松阪」に改められた[5]
  3. ^ 平成の大合併で市町村の数は変わっているが、肥育エリアであった市町村と肥育エリアではなかった市町村が合併したりしたためこのような定義の仕方をしている。平成の大合併以降は松阪市、明和町、多気町、玉城町、度会町、大台町の全域と津市、伊勢市、大紀町の各一部が該当する[21]
  4. ^ 厳密には、牧場は株式会社和田金ファームとして分社化している[36]。牧場の開設当初は直営であった[36]

出典

  1. ^ a b c d e f 松阪牛協議会. “松阪牛とは”. 2019年1月6日閲覧。
  2. ^ a b c d 岡田 2015, p. 64.
  3. ^ 三重県地位向上委員会 編 2015, p. 99.
  4. ^ a b c d e 田幸和歌子 (2008年1月31日). “松阪牛は、いつから「まつさかうし」に?”. 2019年1月6日閲覧。
  5. ^ a b 松阪市 (2016年8月15日). “松阪市の概要”. 2017年5月31日閲覧。
  6. ^ 松阪のことは「まっつぁか」と言う”. 三重の会社 カラフル. 2019年1月6日閲覧。
  7. ^ 伊勢志摩編集室 1997, pp. 33–36.
  8. ^ 伊勢志摩編集室 1997, pp. 33–37.
  9. ^ 伊勢志摩編集室 1997, p. 37.
  10. ^ 伊勢志摩編集室 1997, pp. 18–29.
  11. ^ a b 伊勢志摩編集室 1997, pp. 18–30.
  12. ^ a b 大喜多 2007, p. 354.
  13. ^ 伊勢志摩編集室 1997, p. 22, 30, 44, 46.
  14. ^ 浅井 2008, p. 72.
  15. ^ 伊勢志摩編集室 1997, p. 40, 42.
  16. ^ 「わが街企業ファイル 和田金 独特の方法で松阪牛を飼育」読売新聞2005年7月20日付朝刊、三重A、25ページ
  17. ^ 伊勢志摩編集室 1997, p. 54.
  18. ^ 伊勢志摩編集室 1997, p. 52-53, 60-61.
  19. ^ 横田 2004, p. 130.
  20. ^ 岡田(2015):66 - 67ページ
  21. ^ a b 松阪牛生産区域”. 松阪市. 2018年8月18日閲覧。
  22. ^ 岡田(2015):67ページ
  23. ^ a b c d e "「松阪牛」使えず農家泣く 「肥育22市町村」外れた地域" 朝日新聞2002年8月17日付朝刊、名古屋版夕刊1ページ
  24. ^ a b c d e f "「松阪牛」ブランド保護で波紋 産地限定に農家反発 価格高騰、引っ越し組も" 日本経済新聞2002年9月16日付朝刊、24ページ
  25. ^ 浅井 2008, p. 75.
  26. ^ a b 浅井 2008, p. 74.
  27. ^ a b "「松阪牛」定義訴訟 異議の原告が敗訴" 朝日新聞2010年11月5日付朝刊、名古屋版社会面27ページ
  28. ^ a b c 松阪牛”. 農林水産省東海農政局. 2016年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年8月18日閲覧。
  29. ^ 横田 2004, p. 131-132, 134.
  30. ^ 横田 2004, p. 134.
  31. ^ 伊勢志摩編集室 1997, pp. 96–101.
  32. ^ 横田 2004, p. 130, 134.
  33. ^ ブース 2014, pp. 117–125.
  34. ^ 松阪牛とは”. 株式会社三重県松阪食肉公社. 2018年8月18日閲覧。
  35. ^ ブース 2014, p. 124.
  36. ^ a b 向笠・すきや連 2014, p. 177.
  37. ^ 伊勢志摩編集室 1997, p. 31.
  38. ^ ブース 2014, p. 126.
  39. ^ ブース 2014, p. 125, 127.
  40. ^ 松阪牛について”. 松阪牛の牛若丸. 2014年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年8月18日閲覧。
  41. ^ “中国に「松坂牛」? 「松阪牛」の商標登録ピンチ”. 朝日新聞. (2008年5月15日). オリジナルの2008年5月15日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2008-0515-1824-21/www.asahi.com/life/update/0515/NGY200805150005.html 2018年8月18日閲覧。 
  42. ^ “「松阪牛」本家の商標登録、中国却下 「一般的な食材」”]. 朝日新聞. (2010年5月12日). オリジナルの2010年5月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100514025801/http://www.asahi.com/national/update/0512/NGY201005120027.html 
  43. ^ “市長「政府のツケ…香川とブランド守る連携も」 松阪牛商標登録、中国却下”. 産経ニュース. (2010年5月13日). オリジナルの2010年10月30日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20101030152957/http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100513/fnc1005130918006-n1.htm 
  44. ^ 三重新聞夕刊版 2010年6月1日
  45. ^ 夕刊三重 2010年6月報道 幹事長室からの圧力[リンク切れ]
  46. ^ “【台湾ブログ】「松坂豚(ブタ)」にも合う! 日本発の塩麹を自作してみた”. サーチナ. (2014年1月3日). オリジナルの2014年1月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140104045907/http://blog.searchina.net/node/3358 2018年8月18日閲覧。 


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