宅地建物取引士 概要

宅地建物取引士

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/13 12:10 UTC 版)

概要

宅地建物取引士は、1958年(昭和33年)に当時の建設省(現・国土交通省)が宅地建物の公正な取引が行われることを目的として創設した資格である。

名称

創設当初は「宅地建物取引士」ではなく、「宅地建物取引員」という名称であったが、1965年(昭和40年)の法改正により「宅地建物取引主任者」となった。その約半世紀後の2014年(平成26年)6月25日に「宅地建物取引業法の一部を改正する法律[1]」が公布され、これにより従来の「宅地建物取引主任者」は2015年(平成27年)4月1日より現在の「宅地建物取引士」となった[2]。また、当法改正と併せて、宅地建物取引士の定義や業務の明文化、信用失墜行為の禁止、知識及び能力の維持向上などの義務が追加された。

略称
試験実施団体、国土交通省、及び業界団体は略称として主に「宅建士」を使用している[3][4]
英名
Real Estate Notary[5][6]
意味は不動産公証人(不動産の取引(契約等)の法律行為の適法性等について、公権力を根拠に証明・認証する者)である。尚、旧資格名である「宅地建物取引主任者」の英名は「Real Estate Transaction Specialist」[7][8] であった。

制度

宅地建物取引士制度は、高額かつ権利関係も複雑な不動産取引を扱う宅地建物取引業者に対して、国の法律(宅地建物取引業法)に基づいて行う国家試験に合格し、不動産に関する専門知識を有する宅地建物取引士を設置し、(宅地建物取引士による)重要事項説明の義務を課すもので、これにより知識の乏しい購入者等が、取引上の過誤によって不測の損害を被ることを防止することを目的としている。その為、宅地建物取引業者は常に取引に宅地建物取引士を関与させ、責任の所在を明らかにして、購入者から説明を求められた時、何時でも適切な説明をなし得る態勢を整えさせ、公正な取引を成立させることに努めなければならない。

上記の様に、宅地建物取引業者は宅地又は建物の売買、交換または賃貸借の契約が成立するまでの間に、取引の相手方に対し一定の重要事項について宅地建物取引士による重要事項説明書の交付と説明をなす義務があり、これが宅地建物取引士の最も重要な職務である。この重要事項説明書の交付と説明に当たり、宅地建物取引士が説明義務を果たさず、相手方に損害を与えたときは、単に宅建業者のみでなく宅地建物取引士個人も共同不法行為者として損害賠償の責任を負う。この場合、宅地建物取引士の説明義務違反行為は「宅地建物取引士として行う事務に関し不正又は著しく不当な行為」(宅地建物取引業法68条1項3号)に当たり違法行為となるからである。

業務範囲と関連規正法

宅地建物取引士として携わる業務範囲は、以下の表を参照すること。

名称 事業を規制する法律 法制度に固有業務がある専門家
不動産取引業 建物売買業・土地売買業 宅地建物取引業法 宅地建物取引士
不動産代理業・仲介業 宅地建物取引業法 宅地建物取引士
不動産賃貸業 不動産賃貸業 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律
(特定転貸事業関係)
貸家業・貸間業
駐車場業
不動産管理業 分譲マンション マンションの管理の適正化の推進に関する法律 管理業務主任者
賃貸住宅 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律
(賃貸住宅管理業関係)
業務管理者
オフィスビル等

業務に付随して、上記以外の各種法律の規制を受ける場合がある。


注釈 

  1. ^ 宅地建物取引士登録を受けた者が死亡した場合は、相続人がその死亡を知った日から30日以内。
  2. ^ 20歳未満でも親権者から営業の許可を受けた者(民法第6条)や、婚姻による成年擬制(民法第753条)により、成年者と同一の行為能力を有するに至った未成年者は、登録可能である。
  3. ^ a b 執行猶予を受けていて、取り消されることなくその期間が満了した場合、刑法第27条により「刑の言渡しは、効力を失う」ため、5年待たずとも登録を受けることができる。
  4. ^ 「暴力関係の罪」とは、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定されている罪、傷害罪(刑法第204条)、傷害現場助勢罪(刑法第206条)、暴行罪(刑法第208条)、凶器準備集合及び結集罪(刑法第208条3項)、脅迫罪(刑法第222条)、背任罪(刑法第247条)、暴力行為等処罰ニ関スル法律に規定されている罪をいう。いっぽう、過失傷害罪(刑法第209条)はここでいう「暴力関係の罪」に含まれない。
  5. ^ 「事務所」とは、本店(会社以外では主たる事務所)、宅地建物取引業を営む支店、継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で宅地建物取引業に係る契約締結権限を有する使用人を置くもの、をいう。本店はそこで宅地建物取引業を営んでいなくても事務所とみなされる。
  6. ^ 「事務所以外の場所」とは、継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外の場所、10区画以上の宅地または10戸以上の建物の分譲を行う際の案内所、10区画以上の宅地または10戸以上の建物の分譲の代理・媒介を行う際の案内所、業務に関する展示会その他の催しを実施する場所、をいう。なお、契約の締結や申込を受けない場所については、専任の宅地建物取引士の設置義務はない。
  7. ^ 宅地建物取引業を営もうとする者は、2つ以上の都道府県の区域内に事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあっては国土交通大臣の、1つの都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあっては当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない。

出典 

  1. ^ 国土交通省:宅地建物取引業法の改正について
  2. ^ 不動産適正取引推進機構:不動産取引に関する資格・試験制度の変遷
  3. ^ 一般財団法人不動産適正取引推進機構:不動産売買の手引き
  4. ^ 宅建士スタートアップフォーラム開催について(主催:業界団体、後援:国土交通省)
  5. ^ 法務省:日本法令外国語訳データベースシステム戸籍法施行規則法令翻訳(Regulation for Enforcement of the Family Register Act)
  6. ^ 法務省:法令外国語訳業務の流れ
  7. ^ 国土交通省:日本での不動産取引に関する基礎的な法制度等を英語で紹介します
  8. ^ 国土交通省:Flow of Real Estate Transactions(住宅取得・賃借に関するフロー )
  9. ^ 国土交通省:宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 より引用。
  10. ^ 35条書面とは|不動産用語を調べる【アットホーム】”. www.athome.co.jp. 2024年1月19日閲覧。
  11. ^ 国土交通省:第19回国土審議会土地政策分科会:杉田不動産業政策調整官発言 より引用。
  12. ^ 37条書面とは|不動産用語を調べる【アットホーム】”. www.athome.co.jp. 2024年1月19日閲覧。
  13. ^ 国土交通省:宅地建物取引士に係る法定講習充実検討委員会検討結果報告書
  14. ^ 大学生におすすめの資格は?就職活動で活かせる資格を6つ紹介! | 資格の情報サイト | スクールセレクト
  15. ^ 不動産適正取引推進機構:宅地建物取引士資格試験委員(順不同、敬称略)
  16. ^ NYの弁護士よりも東京の宅建士は希少性がある? 「悪文で難易度を上げているだけ」”. ITmedia ビジネスオンライン. 2022年11月7日閲覧。
  17. ^ 法律第百三十一号(昭三二・五・二七)”. www.shugiin.go.jp. 2022年11月7日閲覧。
  18. ^ a b 宅地建物取引主任者資格試験事業
  19. ^ 東京都宅地建物取引業協会 より引用。





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