全日本ラリー選手権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/17 15:38 UTC 版)
概要
1979年の全日本ラリードライバー選手権を前身として1980年から全日本ラリー選手権となった。2000年以降の運営支援は同年に発足したJRCA (Japanese Rally Competition Association) により行われ、JAF公認規定の元で全国各地の主催者により、2012年以降は4月 - 10月の期間に年間9戦が開催されている。参戦するドライバー及びコ・ドライバーは、国内B級以上のライセンスが必要となる。
クラスは排気量を基準として6つに分けられ、2006年からは2005年までのクラス順位とは別に、全クラスを含めて真のNo.1を決める総合順位が設定された[注 1]。使用車両はグループN規定に近い国内規定に準じたもので改造範囲が狭く、室内は内張りが除かれロールケージが取り付けられているが、エンジンはリストリクターの装着を除けば市販車とほぼ同じである。競技区間は閉鎖されたコースのSSと、一般車両に混じり移動する区間のリエゾンに分かれ、それぞれの規則に則って走行する。
近年は、SUPER GTのGT300クラスと同様に、キャラクターやイラストなどがボディに描かれた痛車も増加している。これは注目を集める目的も有るが、SUPER GTを始めとするオンロードレースと異なり、プロモーター[注 2]が存在せず、各地の主催者が持ち回りで開催しているため、将来的な競技継続の観点からも国内ラリーの認知度を高めて新規の客層を開拓する必要性が高まったことによる[1]。2008年のメロンブックスシティ、2011年のCJRTサトリアネオ、2016/2017年のインギング86などクラスタイトルの実績も多い[2]。
近年F1ウィナーのヘイキ・コバライネンが参戦しており、総合を含む3度のタイトルを獲得している。またWRC(世界ラリー選手権)元トップドライバーのヤリ=マティ・ラトバラも2023年にスポット参戦した。
主なイベント
2024年全日本ラリー選手権
Rd | 名称 | ホストタウン | 開催時期 | 開催開始年 | 路面 | 総走行距離 | SS総距離 | SS数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | Rally三河湾2024 Supported by AICELLO | 愛知県蒲郡市 | 3月1日~3日 | 2024年 | ターマック | 253.06 km | 80.52 km | 14 |
2 | ツール・ド・九州2024 in 唐津 | 佐賀県唐津市 | 4月12日~14日 | 1997年 - | ターマック | 348.81 km | 76.78 km | 12 |
3 | 久万高原ラリー | 愛媛県久万高原町 | 4月26日~28日 | 2006年 - | ターマック | |||
4 | YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg | 京都府京丹後市 | 5月10日~12日 | 2012年 - | ターマック | 291.20 km | 113.66 km | 12 |
5 | MONTRE 2024 | 群馬県嬬恋村 | 6月7日~9日 | 1984年 - 2003年、2012年 - | ターマック | 639.44 km | 109.46 km | 10 |
6 | 2024 ARK ラリー・カムイ | 北海道ニセコ町 | 7月5日~7日 | 2018年 - | グラベル | |||
7 | RALLY HOKKAIDO | 北海道帯広市 | 9月6日~8日 | 2006年 - | グラベル | |||
8 | 第51回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2024 supported by KYB | 岐阜県高山市 | 10月18日~20日 | 1971年 - | ターマック |
過去に開催された主なラリーイベント
名称 | ホストタウン[注 3] | 開催時期 | 開催年 | 路面 | 総走行距離 | SS総距離 |
---|---|---|---|---|---|---|
KYOTO南丹ラリー | 京都府南丹市 | 5月 | 2007年 - 2009年 | ターマック | 約250km | 約80km |
がんばろう! 福島 MSCCラリー[注 4] | 福島県棚倉町 | 6月、11月[注 5] | 2004年 - ? | グラベル | 約370km | 約70km |
ひえつきラリー[注 6] | 宮崎県椎葉村 | 5月 | 1986年 - 2005年 | グラベル | 約280km | 約50km |
ひむかラリー in 美郷[注 7] | 宮崎県美郷町 | 5月、6月 | 2007年 - 2011年 | グラベル[注 8] | 約330km | 約100km |
シンフォニーラリー | 京都府南丹市 | 6月 | 2006年 | ターマック | 約210km | 約45km |
ARKラリー洞爺[注 9] | 北海道洞爺湖町 | 7月[注 10]、9月 | 2011年 - ? | グラベル | 約380km | 約80km |
ラリー・イン・シリベシ[注 11] | 北海道倶知安町 | 7月 | 2010年 | グラベル | 約470km | 約100km |
Rally in Akaigawa[注 12] | 北海道赤井川村 | 7月、8月、9月 | 1998年 - 2008年 | グラベル | 約400km | 約100km |
とかち2006 | 北海道陸別町 | 7月 | 2006年 | グラベル | 約335km | 約80km |
Rally of Tsumagoi | 群馬県嬬恋村 | 2月 | 2017年 - ? | スノー/アイス | 約410km | 約90km |
モントレー in 群馬[注 13] | 群馬県嬬恋村 | 7月 | 1984年 - 2003年、2012年 - | ターマック[注 14] | 約500km | 約70km |
FMSC吉野ヶ里マウンテンラリー[注 15] | 佐賀県吉野ヶ里町 | 8月、9月 | 2007年 - 2009年 | ターマック | 約240km | 約60km |
新城ラリー[注 16] | 愛知県新城市 | 3月[注 17]、9月、10月 - 11月[注 18] | 2007年 - 2023年 | ターマック | 約280km | 約80km |
スケジュール
イベントにより1日間 - 3日間で行われ、それぞれの1日をDAY (デイ) と呼称する。DAYは、実質的なレース区間であるSS (Special Stage: スペシャルステージ) と計測地点のTC (Time Control: タイムコントロール)、SSとSSを結ぶ移動区間 (ロードセクション) となるリエゾンに分けられ、競技はアイテナリーと呼ばれるタイムスケジュール表に沿って進められる。スタート間隔はイベントに異なるが、通常は1分、上位のドライバーは2分となっている。
準備
競技前にレッキと呼ばれる下見走行を行い、ドライバーとコ・ドライバーはコース状況を把握してペースノート[注 19]の製作を行う。コースは実際に競技で使われるコースを走れるが、使用する車は競技車両ではなく一般車両となる。シェイクダウンと呼ばれる、実際に競技車両を使用して最終チェックを行った後[注 20]、違反の有無を確認する車検後に、競技車両は、ドライバーを含め全ての関係者は競技開始まで触れることが出来ないパルクフェルメと呼ばれる車両保管所に置かれる。
リエゾン
一般公道を移動する区間で、道路交通法に従い一般車両に混じって走行し、TCに入る時間は車両毎に指定されている[注 21]。道路運送車両法に定められた保安基準を満たしていない場合は公道走行を止められる可能性があり、特にSSでのトラブルで車が破損した場合などに問題となる。リエゾンも競技の一部であり、主催者から示されるコマ図に従って走行するというラリー競技当初の姿が現在も残っている。
SS
一般公道を閉鎖して作られたタイムトライアル区間の[注 22]スペシャルステージ (Special Stage) で、SS (エスエス) と呼ばれる。スタート地点はTC内に設置され、ドライバーは全開でアタックする。各DAY最後のSS終了後はTCに移動してリエゾンを通り、サービスパーク[注 23]と呼ばれる本部に戻る。その後、車両は再びパルクフェルメに保管されて次のDAYの競技開始を待つ。
注釈
- ^ シリーズチャンピオンについても同様。
- ^ 興行のための統括団体
- ^ 拠点となる町の意味で、本部などが置かれる。
- ^ 2011年、従来の“MSCC東京ラリー”から改名すると同時に開催時期を11月→6月に変更。JAF東日本ラリー選手権併催
- ^ 2011年以降
- ^ 2005年に九州南部を襲った台風により、使用していた林道などのコースが大きな被害を受けたため、隣町の美郷町に開催地を移し、2007年に“ひむかラリー in 美郷”として再スタートした[3]。
- ^ 1986年から2005年まで椎葉村をホストタウンとして“ひえつきラリー”が開催されてきたが、2005年に九州南部を襲った台風により、使用していた林道などのコースが大きな被害を受けたため、隣町の美郷町に開催地を移した[3]。
- ^ 一部ターマック
- ^ ラリー・イン・シリベシから移行。
- ^ 2012年以降
- ^ Rally in Akaigawaの主催者が舞台を移して開催した[4]。2011年にARKラリー洞爺へ移行。
- ^ 1998年 - 2006年の名称は、KIRORO Traverse Kamuiminndara
- ^ 2013年まではモントレー in 渋川として開催され、渋川市がホストタウンとなっていた[5]。
- ^ 一部グラベル
- ^ 2007年は、FMSC久留米 - 吉野ヶ里マウンテンラリーとして開催された。ホストタウンは福岡県久留米市。
- ^ JAF中部・近畿ラリー選手権併催
- ^ 2019年
- ^ 2012年から2018年まで
- ^ 名前の通り走行ペースのほか、コーナーの曲がり具合や進入速度、注意事項などが記載されている。
- ^ この際はシェイクダウン専用のコースを使用する。
- ^ 交通渋滞などで遅くなったもしくは早く着いてしまったなど、リエゾンで生じた誤差を正すのが目的。
- ^ 一定間隔で1台毎にスタートして区間タイムを競う。
- ^ 整備やセッティングなどの各種作業が許されるが制限時間がある。
- ^ 2019年から導入された新規定で、2018年までのRN(FIAグループN)とRR(FIAグループR1〜3)にグループR5車両を追加したもの。
- ^ 2014年から導入された新規定で、2006年1月1日以降のJAF登録車両が対象。ほぼノーマル状態の車両となる。
- ^ 2013年から導入された新規定で、ほぼノーマル状態の車両となる。
- ^ 例として、スバル・インプレッサWRX STI(2007年)は本来の排気量は1997.8ccだが、排気量換算は3396.3ccとなる。
- ^ AEは指定無し
- ^ AEは指定無し
- ^ ポイント数はWRCのパワーステージと同じだが、パワーステージは各DAYではなく、最終日の最終SSが対象。
- ^ 2WD車は従来の選手権にも参加可
- ^ アクシデントなどでクラスごとにSSなどの成立区間が異なる場合があった。
- ^ WRCを始めとする国際ラリーは基本的にSSラリーの為、それに特化したドライバーが生まれていくが、アベレージ・ラリーはCP (チェックポイントと呼ばれるタイム計測地点) 通過時の正確性が最重要項目であり、速さ以外の要素で勝敗が決まることも多く、SSの速さを競うラリーとは似て非なるものとなってしまったことから、駆動方式の統合と共に全てSSラリーに変更され、国際ラリーとほぼ同じ競技にする事となった。
出典
- ^ “ラリーに痛車で参戦、声優ラジオ番組で新規層開拓の取り組み--CUSCOジュニアラリーチーム”. CNET Japan. (2013年11月29日)
- ^ メロンブックスシティ、大逆転の末、念願の王者へ! 痛車が全日本ラリー選手権クラスチャンピオンに!
- ^ a b “全日本ラリー選手権 第5戦 / 宮崎県”. 横浜ゴム. (2007年5月)
- ^ “2010年 全日本ラリー選手権 第5戦 ラリー・イン・シリベシ”. JRCA. (2010年2月)
- ^ “モントレー2014 in 群馬”. ラリー・モントレ
- ^ 2016年日本ラリー選手権規定で、クラス区分が大幅に変更 2015.05.13 by PLAYDRIVE
- ^ “2006年から全日本ラリーは大きく変わりました。”. JRCA
- ^ a b “NRSの歴史”. NRS
固有名詞の分類
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