リキュール 製法

リキュール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/29 14:59 UTC 版)

製法

リキュールの製造工程
アブサンの蒸留所

リキュールには様々な製法があり、一般には香味原料からの成分の抽出、配合、熟成、仕上げの各段階を経て作られる。

まず、ベースにどのような蒸留酒を使用するかを決定する。このとき、蒸留を繰り返してエタノールを極めて高い濃度にまで濃縮して作られた中性スピリッツウォッカのような癖の少ない、つまりエタノールと混合物に近い蒸留酒を選択することが多い。もちろん、敢えて癖のある蒸留酒を選択し、その癖を活かすという方法を取る場合もあるし、中には2種類以上の蒸留酒を混ぜたものをベースとすることもある。

その次にベースの蒸留酒、または水(温度は様々)に、香味原料からの成分の抽出を行う。このとき、次の4方式が用いられる。蒸留法、浸漬法、エッセンス法、パーコレーション法のいずれか、またはこれらを組み合わせる。

蒸留法
ベースの蒸留酒と香味原料を混合、または水と香味原料を混合し、それを蒸留釜で蒸留して香味成分だけを残す方法。蒸留後、甘味料着色料を加えることもある。濁りのない澄んだリキュールを作ることができ、高級なリキュールはこの方法で作られることが多い。ただし繊細な芳香を残したい場合や、ベリー類の果実のように加熱によって変質してしまう香味原料を使用する場合には向かないという欠点がある。
浸漬法
浸漬法は、冷浸法と温浸法に分けられる。最も古くからリキュール作りに用いられてきた方法である。蒸留は行わない。
  • 冷浸法(または冷浸漬法)とは、ベースの蒸留酒に香味原料をそのまま漬け込んでしまう方法。浸漬期間は任意。日本の家庭で作られる梅酒カリン酒などの果実酒は、普通この方法を用いる。
  • 温浸法(または温浸漬法)とは、湯に香味原料を漬け込んで、湯が冷えたらベースの蒸留酒を加えておく方法。浸漬期間は任意。
いずれの方法でも、甘味料や着色料を加えることもある。
エッセンス法
ベースの蒸留酒に、別途抽出しておいたエッセンスオイルを加えて香りを付ける方法。すなわち香料の添加である。合成香料が用いられることもある。蒸留法や浸漬法など他の方式と併用される場合も多い。なお香料としてだけではなく、味を補うための調味料としてエッセンスオイルを加えることもある。
パーコレーション法
香味原料に、ベースの蒸留酒または水を循環させながら、香りや味を抽出する方法。コーヒーを抽出する際のパーコレータ法と似ている。加熱によって変質してしまう香味原料から成分の抽出を行う際に使用する。

これらの方法ででき上がった原酒をブレンドしたり、そこにさらに香味液を加えたりすることもある。その後、任意の期間熟成してから出荷される。


注釈

  1. ^ フランス語発音: [likœːʁ] リクール
  2. ^ アメリカ英語発音:[lɪˈkɜːr] リー、イギリス英語発音:[lɪˈkjʊə(r)] リキュ
  3. ^ Rosolioイタリア語で「太陽のしずく」の意。
  4. ^ 「これはワインをベースとしたものであり、厳密にはリキュールではなかった」とする説、「ブランデーをベースに麝香シナモンなどで香りをつけたものであった」とする説などがある。

出典

  1. ^ a b c d 「クラフト リキュール和の薫り」『日経MJ』2020年1月13日(トレンド面)
  2. ^ 日本ホテルバーメンズ協会『HBAバーテンダーズオフィシャルブック』(ごま書房、2007年)p.132.
  3. ^ 小島武彦監修『リキュールで楽しむカクテル321 第2刷』(日本文芸社、2004年)p.10.
  4. ^ 日本ホテルバーメンズ協会『HBAバーテンダーズオフィシャルブック』(ごま書房、2007年)p.134.
  5. ^ 橋口孝司『スピリッツ銘酒事典』(新星出版社、2002年)p.177.
  6. ^ a b c 渡辺一也監修『リキュール&カクテル大事典』ナツメ社、2004年、17頁。 
  7. ^ 橋口孝司『スピリッツ銘酒事典』(新星出版社、2002年)p.178.
  8. ^ 前衛派日本酒〈04〉学ぶほどにもっと美味しく楽しめる。日本酒の基本”. メトロミニッツ. 2015年11月11日閲覧。
  9. ^ 『カクテルをたしなむ人のレッスン&400レシピ』日本文芸社、2021年、39頁。ISBN 978-4537218695 


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