マルクス経済学 資本の有機的構成と利潤率の傾向的低下

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マルクス経済学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/23 05:09 UTC 版)

資本の有機的構成と利潤率の傾向的低下

資本の有機的構成の高度化に伴う利潤率の傾向的低下の法則を指摘し、恐慌の根拠について考察を加えた。

マルクスは、資本主義経済では、必然的に、資本の有機的構成が高度化するように運動し、その結果、利潤率が低下すると論じた(資本論第3巻13-15章)[2]

資本の有機的構成が高度化するのかについては、以下のように説明される(資本論第1巻10,23章第2節)[2]。他の資本家が従来の生産技術を用いているあいだに新技術を導入した資本家は、従来より短い労働時間の産物を従来の価値で売ることができるので、通常の剰余価値を上回る特別剰余価値を獲得できる[2]。しかし、新技術が普及すれば、価値はふたたび労働時間どおりに計算されるので、特別剰余価値は消滅する[2]。新技術は、一般に手作業を機械に置き換えるものであるから、不変資本cに比して可変資本vを少なくする。よって、c/vの値は傾向的に大きくなる[2]。マルクスは、利潤獲得を目指す個別資本の行動は、長期的には、利潤率を低めるとして、そこに資本主義の矛盾をみた[2]

搾取

窮乏化法則

マルクスは『資本論』第1巻「資本の蓄積過程分析」で、資本主義のもとでは労働者階級の状態は悪化し、窮乏化(Verelendung)せざるをえないと論じた[3]

その他のマルクス経済学の特徴

  • 資本を独自の運動法則を持つ主体と捉え、資本家を資本の運動を担う、資本という経済的カテゴリーの人格化と規定した。
  • 失業者産業予備軍(= 相対的過剰人口)として資本によって再生産されているとした。
  • 再生産の諸条件について、再生産表式を用いて検証した。
  • 産業資本と商業資本からなる現実資本と、利子生み資本、架空資本または擬制資本の間の乖離を指摘し、景気変動についてのリアルな分析を行った。
  • 古典派経済学の三位一体的定式(trinity formula)を退けた。
  • 株式会社というものを、実体としての資本家の存在を消滅させるが故に「消極的な資本の揚棄」として評価し、労働者株主であるような生産協同組合を「積極的な資本の揚棄」がなされたものとした[4]

マルクス以後のマルクス経済学

マルクスが分析の対象として『資本論』で理論化したのは、当時最も発展した資本主義国であった19世紀イギリス資本主義で、20世紀以後飛躍的に発展した資本主義を十分に捉えてはいないという時代的制約がある。

マルクス以後のマルクス経済学の著作としては、20世紀初頭では、ルドルフ・ヒルファーディングの『金融資本論』や、レーニンの『帝国主義論』がある。

1970年代以降は、フランスのレギュラシオン理論のほか、カナダ・イギリスのジェラルド・コーエンやアメリカのジョン・ローマーらによる分析的マルクス主義などがある。


  1. ^ 深澤竜人「限界効用価値説の展開と労働価値説との対比―マルクス経済学と「限界革命」IV 」山梨学院大学現代ビジネス研究第11号(2018)p.68.
  2. ^ a b c d e f 三土修平『経済学史』新世社, 1993年、p.123-126.
  3. ^ 窮乏化法則』 - コトバンク
  4. ^ “New Associationist Movement(NAM)の原理 第二版”. NAMセンター評議会. (2001年7月1日). オリジナルの2016年6月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160603082638/http://nam21.sakura.ne.jp/nams/newprin.html 
  5. ^ 田中秀臣、安達誠司『平成大停滞と昭和恐慌: プラクティカル経済学入門』NHK出版〈NHKブックス〉、2003年8月、10頁。ISBN 4-14-001978-6OCLC 54424370 
  6. ^ 橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、216頁。
  7. ^ 橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、221頁。
  8. ^ a b 橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、227頁。
  9. ^ マルクス経済学Ⅰ”. gslbs.keio.jp. シラバス・時間割. 慶應義塾大学. 2022年11月30日閲覧。 “年度・学期 2022 春”
  10. ^ マルクス経済学”. 慶應義塾大学通信教育部シラバス. 慶應義塾大学. 2022年11月30日閲覧。 “設置年度 2022”
  11. ^ 経済学部シラバス 令和 3 年度 (2021 年度)”. 大阪市立大学 経済学部. p. 79. 2022年11月30日閲覧。


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