利潤率の傾向的低下の法則
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利潤率の傾向的低下の法則(りじゅんりつのけいこうてきていかのほうそく、英: law of the tendency of the rate of profit to fall, 独: Gesetz des tendenziellen Falls der Profitrate)とは、マルクス経済学における資本主義経済の法則の一つ。資本家が剰余価値を不変資本により多く振り分けると、資本の有機的構成が高度化する。すると総資本に対する剰余価値率(搾取率)は低下する。すなわち、利潤率は必然的に低下することを示した法則である。マルクスが『資本論』第3巻第3編で論じた。
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- ^ 「マルクスは資本家が労働生産性の引き上げをめざして導入する新生産方法は資本有機的構成を高めるため、たとえ実質賃金率が普遍であっても平均利潤率は傾向的に低下せざるをえなくなると考えていた。」「筆者の「定理」はこれを批判するものであった」置塩信雄「<論考>新生産物の導入と利潤率 (第300号記念号 『大阪経済大学の75年・主要論文選』)」『大阪経大論集』第58巻第4号、2007年11月、 151-159頁、 ISSN 0474-7909、 NAID 120005534490。
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- ^ 神田敏英「利潤率の傾向的低下法則と置塩定理を巡る論議」『岐阜大学地域科学部研究報告』第6号、2000年2月、 81-100頁、 ISSN 1342-8268、 NAID 120006339515。
- ^ 神田敏英「利潤率の傾向的低下法則と置塩定理を巡る論議」『岐阜大学地域科学部研究報告』第6号(pp.81-100)がp.81で「以下、技術的並びに有機的資本構成高度化を前提に論ずる」という前提自体が問題である。
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- ^ 「特定のパラダイムは、それによって現実をシャープに見させてくれる面と、逆に現実を見えなくさせる面とを必ずもつ。またある時代には通用したパラダイムも、時の経過とともに通用力や説明力が衰えるということもある。私はこのことの自覚が最も必要だと思う」(北原勇・伊藤誠・山田鋭夫『現代資本主義をどう視るか』青木書店、1997年、pp.244~p.245の山田発言)
- ^ 「マルクスの『資本論』の精密な読み込みによって、理論的に堅固でかつ、現代でも十分通用可能な経済学の知識を修得できる、という判断を前提とする伝統的なマルクス主義社会科学の学問的方法は説得力を失ってきた事は間違いない。」吉原直毅『労働搾取の厚生理論序說』岩波書店, 2008. 引用個所は、以下に公開されている。http://www.ier.hit-u.ac.jp/~yosihara/exploit1.pdf
- ^ 小澤光利「いわゆる「プラン問題」再考」『経済志林』第77巻第3号、法政大学経済学部学会、2010年3月、 415-425頁、 doi:10.15002/00006055、 ISSN 00229741、 NAID 120002142812。
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- ^ 高須賀義博(1985)『マルクスの競争・恐慌観』岩波書店、第2章「マルクスの競争観」。
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- ^ トマ・ピケティ著『21世紀の資本』、第2部第6章 p.360
- 1 利潤率の傾向的低下の法則とは
- 2 利潤率の傾向的低下の法則の概要
- 3 法則の実証的研究
- 4 参考文献
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