利潤率の傾向的低下の法則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 09:59 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動利潤率の傾向的低下の法則(りじゅんりつのけいこうてきていかのほうそく、英: law of the tendency of the rate of profit to fall, 独: Gesetz des tendenziellen Falls der Profitrate)とは、マルクス経済学における資本主義経済の法則の一つ。資本家が剰余価値を不変資本により多く振り分けると、資本の有機的構成が高度化する。すると総資本に対する剰余価値率(搾取率)は低下する。すなわち、利潤率は必然的に低下することを示した法則である。マルクスが『資本論』第3巻第3編で論じた。
なお、利潤率が常に低下するわけではなく、低下傾向に反対に作用する要因もあり、長期的に見れば利潤率は低下する、ということから、マルクスは利潤率の低下を「傾向的低下」と呼んだ。景気循環の中で、利潤率は上下するが、景気の下降局面で利潤率が低下することは利潤率の傾向的低下の法則ではない。
この法則を数理的に詳しく研究した者に柴田敬と置塩信雄がいる。彼らの発見した定理は、柴田=置塩の定理、または置塩の定理と呼ばれる。
論争の起源と経緯
マルクスが『資本論』第Ⅲ巻において「利潤率の傾向的低下法則」を論証したことに対して、まもなくツガン・バラノフスキー(1901)の批判が現れた[1]。これに対して、カール・カウツキー(1901-02)の反論などが現れた[2]。しかし、マルクスやカウツキーらの論証に問題があることは、ボルトケヴィチ(L. von Bortkiewicz)[3]や柴田敬(1935-36)[4],ポール・スウィージー(Paul M. Sweezy)(1942)[5],ジョーン・ロビンソン(Joan Robinson)(1942)[6]らに引き継がれて決着を見なかった。その間の事情については板木雅彦(2004)第1節「置塩定理に至る論争の展開」[7]を見よ。石塚良次は、「利潤率低下」論は、生産価格論と並ぶ、「欧米でのいわゆる「マルクス・ルネサンス」における二大論争の係争主題」であると評している[8]。
数学的「証明」
論争は戦後にも続き、富塚良三(1954)[9]やロスドルスキー(1956)[10]は、議論を「資本の有機的構成と剰余価値率のうち,どちらがより急速に上昇していくか」に集約し、「剰余価値率がどれだけ上昇してもけっして越えることのできない上限が存在し,この上限そのものが資本の有機的構成の高度化によって低落する」ことが主張された。その証明は、次のようなものであった。
具体的に、不変資本をC 、可変資本をV 、剰余価値をM 、利潤率をr とおくと、
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