ブタン ブタンの概要

ブタン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/04 15:11 UTC 版)

ブタン
識別情報
CAS登録番号 106-97-8
E番号 E943a (その他)
KEGG D03186
特性
化学式 C4H10
モル質量 58.12
外観 無色気体(常温常圧)
密度 2.76
相対蒸気密度 2.1
融点

−138℃

沸点

−0.5℃

出典
国際化学物質安全性カード
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

1849年エドワード・フランクランドによって発見された。名前の由来は酪酸の"but"にギリシア語における数字の末尾"ane"をつけたもの。

n-ブタンの爆発限界は 1.9~8.5vol%(空気中)。

反応

十分な酸素がある場合、ブタンは燃焼により二酸化炭素を生成する。酸素が不足した場合は不完全燃焼が起こり、すす一酸化炭素もともに生成してくる。

n-ブタンは無水マレイン酸生産の原料となる(下式)。この反応にはシリカゲルに担持されたリン酸バナジウムが触媒として利用される[1]

ブタンは他の炭化水素と同じく、フリーラジカル的な塩素化反応により 1-クロロブタンや 2-クロロブタンを始めとする多くの塩素化物に変わる。生成物の比率は2種類の C-H 結合の結合解離エネルギーの違いにより説明することができる。それぞれ末端炭素、内部炭素についての結合解離エネルギーはそれぞれ 425、411 kJ/mol であり、内部炭素の C-H 結合の方がわずかに弱く解裂しやすい[2]

利用

ブタンの民生利用は、ライターの燃料、エアロゾルスプレーの噴射剤のほか、液化石油ガス(LPガス、LPG)にプロパン等と混合して使用される。特にLPG自動車用の燃料であるオートガスは冬期等の寒冷期を除き基本的にはブタンとプロパンの比率が8:2となっている。調理用、キャンプ用などの手軽に利用可能なカセットコンロ燃料としてガス缶が市販されている。また、2009年には、ブタンを燃料とするエンジンホンダ・ピアンタFV200など)も開発されている。可燃性であるにもかかわらず、純粋なブタンをジクロロジフルオロメタンなどのフロンガスの代わりに冷媒として自動車に用いるという提案もある。さらに数年前国産ノンフロン冷蔵庫の冷媒はイソブタンが使われている。

工業利用では、石油化学における蒸気クラッキングの原料としても用いられる。

沸点が-0.5℃であるため、寒冷地でブタンボンベを使用する場合気化しないことがある。このため寒冷地ではプロパン、またはイソブタンを混合したものを使用する。前述のオートガスも寒冷期ではプロパンの割合が増やされる。


  1. ^ Coulston, G. W.; Bare, S. R.; Kung, H.; Birkeland, K.; Bethke, G. K.; Harlow, R.; Herron, N.; Lee, P. L. "The Kinetic Significance of V5+ in n-Butane Oxidation Catalyzed by Vanadium Phosphates" Science 1997, 275, 191 - 193. DOI: 10.1126/science.275.5297.191
  2. ^ Bond dissociation energies: Senosiain, J. P.; Han, J. H.; Musgrave, C. B.; Golden, D. M. Faraday Discussions 2001, 119, 173 - 189.


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