フィリピン軍 空軍

フィリピン軍

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/01 02:31 UTC 版)

空軍

空軍のFA-50

フィリピン空軍は、2021年現在、17,600名の現役兵及び16,000人の予備役、作戦機214機を有する[15]

2011年現在、対ゲリラ作戦に主眼を置いて、軽武装ヘリコプターおよび汎用ヘリコプターが主力となっている。2005年にF-5が退役して以降、固定翼機はCOIN機および軽攻撃機のみとなり、戦闘機を保有しない期間が長かったが、国防改革プログラムの一環として、韓国製のFA-50戦闘爆撃機12機の導入が決定された。2015年11月より配備が開始されている[28]。また2015年からはEADS CASA C-295輸送機の受領も開始された。

中国の海洋戦略による反動もあり、重要な防衛の要衝である第一列島線に位置するフィリピンでは、在比米軍も呼び戻した上で、急速な軍拡を続ける中国人民解放軍に対抗するため、自国の軍備も急速に近代化をはかるとしている。同時に日本から艦艇などの供与も求めているが、自国の安全を守る努力はまず自国軍からという大原則もあり、輸送能力・兵站能力強化の必要性が国際的な専門家から指摘されている。関係者によると、インドネシア軍などのようにオーストラリアからC-130型輸送機の中古供与を模索する動きもあるという。

沿岸警備隊

フィリピン沿岸警備隊Philippine Coast Guard)は平時にはフィリピン運輸通信省の機関であり、武装して沿岸警備などを行う法執行機関。戦時にはフィリピン国防省の付属機関になる。

従来はフィリピン沿岸警備隊法(1967年)に基づきフィリピン海軍の隷下にあったが、1998年4月15日に大統領令により海軍から分離され、海上保安機関として独立した。これにより軍事目的への転用を厳しく制限されている日本などからのODA援助が可能となった。PCGが正式にフィリピン運輸逓信省の組織になったのは、フィリピン共和国法第9993号(フィリピン沿岸警備隊法2009年)による(成立:2010年2月12日)。

概要

PCGは、日本の海上保安庁をモデルとしており、 海上における安全確保、すなわち人命・財産保護のため、海上捜索救助、航行安全管理、海上法執行、海洋環境保全等の業務を担っている[29]

PCGの予算は約2億7480万ドル(2021年度)で、約20000名の隊員と、日本が供与した巡視船97m型2隻やフランスが供与した83m型1隻を主力とする約62隻の船艇、5機の航空機(ヘリコプター、輸送機など)等を有する[30][31]

移管されたPCG隊員の殆どは海軍の出身者で、日本からのODA援助に含まれる技術協力として派遣された海上保安官やJICAメンバーなどが、10年以上にわたり法執行機関の隊員としての育成に携わった。

日本との関係

PCG自体、日本の海上保安庁をモデルとしているほか、海難救助のため「海猿」をモデルとする潜水士グループや特別警備隊銃器対策部隊をモデルとする約200名の特殊作戦グループが編成されているなど日本との結びつきが強い。

近年、日本政府では、自国の地政学上のシーレーン防衛の観点から、通信システムや巡視船の供与などの援助を実施している。

2013年12月、日本政府の有償資金協力(ODA)「フィリピン沿岸警備隊海上安全対応能力強化事業」(フェーズ1)を対象として、国際協力機構(JICA)はフィリピン共和国政府と187億3,200万円を限度とする円借款貸付契約に調印[32]。 フィリピン共和国運輸通信省が発注者となり フィリピン沿岸警備隊が使用する 40m 級多目的船 10 隻の建造および特別予備品の供与を2015年5月にジャパン マリンユナイテッド丸紅協力により受注[33]。2016年-18年に10隻が引き渡された。これはびざん型巡視船 (2代)をベースとしている。

2016年10月、日本とフィリピンの間で「フィリピン沿岸警備隊海上安全対応能力強化事業」(フェーズ2)を対象とした円借款契約が締結。2020年2月3日、フィリピン運輸省が発注者となりテレサ・マグバヌア型巡視船の建造を三菱重工業が受注。2022年、テレサ・マグバヌア型巡視船2隻が引き渡された。これはくにがみ型巡視船をベースとしており、同沿岸警備隊で最大の艦艇となる。

フィリピンは、中国と南シナ海のスプラトリー諸島タガログ語名カラヤーン群島)の領有権・海域を巡る係争を抱えているうえ、2016年には中国船がルソン島東沖合の浅い海域「ベンハム隆起英語版」をフィリピン政府に無断で探査した。このためフィリピン沿岸警備隊は2017年5月、日本から供与された巡視船をベンハム隆起海域に派遣した[34]

一方、現状運用中の大型巡視船は計3隻しかなく、多数の大型艦船を展開する中国海警局に圧倒されている沿岸警備隊はテレサ・マグバヌア型巡視船5隻の追加供与を要望している。2023年10月19日、沿岸警備隊のガバン長官は、日本から大型巡視船5隻の追加供与を受ける見通しになったと明らかにした。 追加供与が年内に日比間で正式合意に至らず「準備期間が長くかかる可能性がある」としたものの、手続きが進行中としている[35]


  1. ^ Senate panel OKs proposed 2015 DND budget” (英語). GMA NEWS (2014年10月3日). 2015年2月21日閲覧。
  2. ^ a b Morton, p.9
  3. ^ Morton, p.12
  4. ^ a b Morton, pp.28-30
  5. ^ Morton, p.13
  6. ^ Morton, p.27
  7. ^ MacArthur, Douglas (1964). Reminiscences of General of the Army Douglas MacArthur. Annapolis: Bluejacket Books. ISBN 1-55750-483-0. p.103
  8. ^ 池端、生田(1977:145-146)
  9. ^ プラシャント・パラメスワラン (2015年7月31日). “フィリピン、中国との領有権争いの切り札は”. ニューズウィーク. http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/07/post-3809.php 2015年8月2日閲覧。 
  10. ^ Comer 2010, p. 8, Philippine Defense Reform (PDR), globalsecurity.org, DND and AFP: Transforming while Performing Archived 2006年1月28日, at the Wayback Machine., Armed forces of the Philippines.
  11. ^ Comer 2010, p. 36
  12. ^ a b 荒木雅也「各国の海兵隊〈5〉」『PANZER』第550号、アルゴノート社、2014年2月、52頁。 
  13. ^ International Institute for Strategic Studies (25 February 2021). The Military Balance 2021. London: Routledge. p. 294. ISBN 9781032012278. https://www.iiss.org/publications/the-military-balance/the-military-balance-2021 
  14. ^ a b SIPRI arms transfer database”. Stockholm International Peace Research Institute (Information generated in 17 June 2011). 2011年6月21日閲覧。
  15. ^ a b International Institute for Strategic Studies (25 February 2021). The Military Balance 2021. London: Routledge. p. 294. ISBN 9781032012278 
  16. ^ US Coast Guard Transfers High Endurance Cutters Hamilton and Chase to the Philippines and Nigeria”. US Coast Guard (2011年5月). 2011年6月15日閲覧。
  17. ^ a b 海人社「世界の艦船 2012年12月号」
  18. ^ 「海外艦艇ニュース フィリピンがイスラエルから戦闘艇を調達」 『世界の艦船』第953集(2021年8月特大号) 海人社 P.183
  19. ^ Navy Journal Yearend Edition 2009, page 14.Navy Public Affairs Office, Headquarters - Philippine Navy, 2009
  20. ^ AFP submits P42B wish list to House defense panel”. Malaya (2011年1月27日). 2011年1月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年1月29日閲覧。
  21. ^ AFP needs P42.1 billion for security program”. Philstar Online (2011年1月27日). 2011年1月29日閲覧。
  22. ^ 日本がフィリピン軍に練習機の供与検討、海上監視に利用=関係者 | ロイター
  23. ^ 防衛省・自衛隊:大臣臨時記者会見概要 平成28年5月2日(17時47分~18時00分)
  24. ^ 海自機2機、フィリピンに引き渡し 初の貸与 日本経済新聞 2017年3月27日付
  25. ^ “日本が比軍に自衛隊機を貸与へ、譲渡できず苦肉の策”. ロイター. (2016年5月2日). https://jp.reuters.com/article/philippine-president-aquino-idJPKCN0XT0ME/ 2016年5月3日閲覧。 
  26. ^ 海自練習機、比に無償譲渡=安保能力向上を支援”. 時事通信 (2017年10月26日). 2017年12月10日閲覧。
  27. ^ “海自練習機 比に譲渡 無償で初、中国進出念頭”. 日本経済新聞. (2018年3月26日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28565480W8A320C1EAF000/ 2018年7月30日閲覧。 
  28. ^ フィリピン空軍、10年ぶりの超音速戦闘機 KAI FA-50PHクラークに到着
  29. ^ フィリピン沿岸警備隊海上安全対応能力強化事業(フェーズ2)事業評価”. 独立行政法人 国際協力機構. 2023年11月25日閲覧。
  30. ^ Bloodline: New PCG commandant is a third-generation uniformed officer” (英語). Manila Bulletin. 2023年11月25日閲覧。
  31. ^ Publisher, Web (2021年1月25日). “Marina, Coast Guard see lower 2020 budget, CAB gets more” (英語). PortCalls Asia. 2023年11月25日閲覧。
  32. ^ フィリピン共和国向け円借款契約の調印
  33. ^ フィリピン共和国運輸通信省向け 「40m 級多目的船 10 隻建造及び特別予備品の納入」(ODA 案件)の受注
  34. ^ 東南ア、軍備増強へ動く シンガポールは独から潜水艦”. 日本経済新聞電子版2017年5月17日. 2017年6月7日閲覧。
  35. ^ フィリピンに大型巡視船5隻追加へ 日本が供与”. 日本経済新聞 (2023年10月19日). 2023年11月24日閲覧。





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