パーミット級原子力潜水艦 パーミット級原子力潜水艦の概要

パーミット級原子力潜水艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/28 09:27 UTC 版)

パーミット級原子力潜水艦
水上航走中のSSN-612 ガードフィッシュ
基本情報
艦種 攻撃型原子力潜水艦
命名基準 魚名
建造期間 1958年-1967年
就役期間 1961年-1996年
建造数 14隻
前級 スキップジャック級
次級 スタージョン級
要目
排水量 水上:3,705t
水中:4,311t
全長 84.9m
最大幅 9.7m
吃水 7.7m
機関方式 原子力ギアード・タービン方式
主機
推進器 7翼ハイスキュード・スクリュー×1軸
出力 15.000SHP
電力 ガピーIC型電池×126個1群
速力 最大(水上/水中):15kt/28kt
潜航深度 396m (安全潜入深度)
乗員 94名(士官9名、先任兵曹12名、下士官兵73名)
兵装

Mk.63 533mm水圧式魚雷発射管×4門

C4ISTAR
  • Mk113(SSN-593)
  • Mk113 Mod2(SSN-594以降)
  • レーダー
  • SS-2A
  • BRD-6
  • WLR-1
  • ソナー
  • BQQ-1Bシステム(BQS-6B、BQR-7、BQS-8)、BQG-3 PUFFS、WLR-9A
  • テンプレートを表示

    本来の1番艦にあたるスレッシャー(USS Thresher, SSN-593)を1963年の沈没事故で喪失したために、2番艦パーミット(USS Permit, SSN-594)の名からパーミット級と呼ばれる。

    概要

    試験艦「ノーチラス」の成功を踏まえて、原子力による無制限の動力と水中性能に優れた涙滴型船殻の技術的統合であるスキップジャック級が建造されたが、高い速力を発揮しうる潜水艦がもつ水中雑音という問題点も判明した(旧ソ連のノヴェンバー級の情報分析もこの点に対する意識を強めた)。こうした問題点に対する対策としてノブスカ計画(Project Nobska)と呼ばれる一連の研究が行われ(1956年)、その研究成果を適用した潜水艦の建造が企図された。その試行であった「タリビー」(USS Tullibee, SSN-597)は、しかしながら、高度の静粛性や大深度への潜航能力、大きな探知距離を備えたソナーといった提案を実現したものの、引き換えに兵装搭載容量や速力性能において著しく劣るものとなり、この艦それ自体は成功とはみなされなかった。タリビーにより実証されたコンセプトとスキップジャック級の高速性能を兼備した、より実用的な艦級として設計されたのがこのパーミット級である。

    ノブスカ計画では「静粛化」・「運用深度増大」・「ソナー性能の向上」の3点が提案された。これらの実現、すなわち、

    • タービン、モーターなど騒音源となる船内の機器類をラフトに載せて船体外に雑音を放出するのを防止する。また、原子力潜水艦として初の7翼ハイスキュード・プロペラを採用することにより、より低速で静粛な回転で推進力を得られるようにする[1]
    • HY-80高張力鋼により船体を構築し、運用深度を増大させる
    • 長距離探知・捜索の可能な大型の球形ソナー・アレイを搭載する。これによって艦首部分が占有されたため、魚雷発射管は船体中央部に外反角を付けて設置する[2](この、艦首に巨大な球形ソナーを配置し、船体中央部に魚雷発射管を設置する魚雷型船型の設計は、本級以後に建造された全てのアメリカ海軍の戦闘用潜水艦に踏襲されている[1])。

    といった設計[3]によって、潜航深度増大(+180m)と静粛化(-約10dB)を実現したものの、容積が増大した機関部を収容するために、船形はスキップジャック級の涙滴型からより並行部分の多い魚雷型になり水中排水量の増加(+800t)につながった。こうした船体の大型化による水中抵抗の増大を相殺するためにセイルが50%縮小された[3]結果、通例2本搭載されるはずの潜望鏡は1本に減らされたほか、通信・ESMなどの電子マストも減らされた[1]

    原子炉はスキップジャック級に引き続いてS5W原子炉が採用され、出力にも変更はなかったが、上述のごとく設計に「配慮」がなされたため、排水量増による水中抵抗の増大もかかわらず速力の低下は1ktに抑えられた。また、同型原子炉の信頼性向上が図られたことにより、スキップジャック級に搭載された原子炉では炉心命数が連続最高出力発揮時間換算で5,000時間に過ぎなかったものが、2倍の1万時間に延長された[4]

    スレッシャー喪失の教訓とSUBSAFE(後述)を踏まえて、本級後期の3隻(「フラッシャー」「グリーンリング」「ガトー」)は建造中に設計が修正され、その結果、他の同級艦より大型のセイルと10フィート長い船体を持つようになった[3][5]。その他、「ジャック」は実験的に、減速ギアを介さずにタービンと推進シャフトを直結した直接駆動推進システム[6]と2重反転プロペラを搭載したことにより姉妹艦より20フィート長い船体となったものの、かつての実験潜水艦「アルバコア」の場合とは異なり、期待されたほどの成果は上がらなかった[3][6][7]

    スレッシャー沈没事件

    1963年4月10日、1番艦スレッシャー(USS Thresher, SSN-593)がコッド岬東方でオーバーホール後の公試中に沈没(乗員108名、その他士官4名、文官17名、総員死亡)した。

    この事故後、就役中の全艦にSUBSAFE改装(海水管装置と原子炉管制系の改善、非常ブロー・システムの増設、気蓄器の耐圧を従来の3,000psiから4,500psiに引き上げる)が実施されたほか、DSRV(深海救難潜水艇)を開発するきっかけとなった。


    注釈

    1. ^ サブロック、後にハープーントマホークが追加。
    2. ^ a b c d 6番艦は大規模オーバーホールと大規模改修により特殊任務艦に改装され、水中排水量7,800 t、全長122.4 m、喫水8.8 m、水中速力20 ktとなった。
    3. ^ 1960年以降WEC S2W

    出典

    1. ^ a b c Peter Lobner. “60 Years of Marine Nuclear Power:1955 – 2015 Part 2: United States” (PDF). Lynceans Group of San Diego. 2021年3月11日閲覧。(p85/280)
    2. ^ Peter Lobner. “60 Years of Marine Nuclear Power:1955 – 2015 Part 2: United States” (PDF). Lynceans Group of San Diego. 2021年3月11日閲覧。(p85-86/280)。当初本級はAN/BQQ-2ソナーを搭載し、後日改修時にAN/BQQ-5に換装された。
    3. ^ a b c d SSN-594 Permit class”. globalsecurity.org. 2021年3月12日閲覧。
    4. ^ Peter Lobner. “60 Years of Marine Nuclear Power:1955 – 2015 Part 2: United States” (PDF). Lynceans Group of San Diego. 2021年3月11日閲覧。(p40/280)
    5. ^ a b Peter Lobner. “60 Years of Marine Nuclear Power:1955 – 2015 Part 2: United States” (PDF). Lynceans Group of San Diego. 2021年3月11日閲覧。(p89/280)
    6. ^ a b c d Peter Lobner. “60 Years of Marine Nuclear Power:1955 – 2015 Part 2: United States” (PDF). Lynceans Group of San Diego. 2021年3月11日閲覧。(p107/280)
    7. ^ これらパーミット級のバリエーションによる艦容の変化について、次の文献に掲載されている比較図を参照。Peter Lobner. “60 Years of Marine Nuclear Power:1955 – 2015 Part 2: United States” (PDF). Lynceans Group of San Diego. 2021年3月11日閲覧。(p89/280)
    8. ^ SSN-594 Permit class”. FAS.org. 2012年2月6日閲覧。 ただし左記FAS.orgのページの年号には個別に疑問の残る情報があるため、その訂正に用いた文献は該当箇所で個別に示す。
    9. ^ FAS.orgは1996年(22 Jul 1996)としているが、1960年に発注されて1996年に就役というのは明らかに不自然な記述であるとおもわれるため、Flasher (SSN-613)”. NavSource Naval History. 2023年2月6日閲覧。により訂正する。


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