パラリンピック 切手

パラリンピック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/02 01:42 UTC 版)

切手

西ドイツ発行のパラリンピック切手

これまで多くの国々から発行され、障害者スポーツへの社会の理解と認識を深めるための周知活動の一翼を担っている。初のパラリンピック切手は、1964年にアルゼンチンから発行された東京パラリンピックの記念切手である[35]

日本から発行された初のパラリンピック切手は、1998年2月に発行された長野パラリンピックのもので、アイススレッジホッケー(パラアイスホッケー)が描かれている[36]。ちなみに、2002年8月には世界車椅子バスケットボール選手権大会の記念切手が発行されている[37]2012年ロンドンパラリンピックでは、イギリスは自国のパラリンピックチームが金メダル獲得すると、24時間以内に記念切手を発行するという企画を実施した[38]。日本でも2016年リオデジャネイロパラリンピックでは自国から金メダル獲得選手が出た場合には翌日に記念フレーム切手を発行するという企画を行っている[39]

運営上の問題

ソウル大会より、オリンピックと同一の開催地になってからパラリンピックへの注目が増し、障害者スポーツの認知度が向上したことにより、問題も発生し始めた。その主な原因はオリンピックと同様にメダルを取れるかどうかで注目度が全く違うため、いわゆる勝利至上主義的な姿勢が指摘されている。

ドーピング
ドーピング検査はソウル大会から実施され、オリンピックと同様、厳格に実施されているが、選手が常用する医薬品に禁止物質が含まれている場合、禁止物質を含まない医薬品を処方してもらうか、治療目的使用に係る除外措置(TUE)[40]国際競技連盟に申請するなどの対応が必要となる。
ブースティング
ブースティングとは意図的に引き起こされた自律神経過反射[注 7]のことで、ドーピング禁止行為には含まれてはいないが、IPCハンドブックなどにより禁止行為とされている。精神的・心理的興奮を促し競技能力が高まることがあるとされるが、脳出血を引き起こす可能性があるなど命に係わる危険行為である[20][41]
機具
車椅子義足などの機具を使う競技において、最先端の機具はスポーツ医学人間工学機械工学材料工学などを駆使し、選手の体格に合わせたオーダーメイドで製作され、軽くフィットするようになっている。これらの機具は数十万円から百万円以上と高額になるが、このような機具を買えるのは経済的に豊かな(もしくはスポンサードを受けている)選手のみであり、結果的に途上国よりも先進国の選手が有利になってしまいがちである。
日本では、生活用義足に医療保険が適用されるが、スポーツ用は一切適用されず、個人で全額を負担しなければならないため、金銭的理由で出場を諦める選手も出ている[20]
1988年ソウルパラリンピック以降、オットーボック英語版[注 8]による車椅子義肢などの無料修理工場が整備され、義肢装具士などが少なく、費用も高い開発途上国の選手にとって、これらのサービスが無料利用できる事は、大会への参加動機にもなっている[42]
障害の偽装
2000年シドニー大会男子バスケットボール知的障害クラス金メダルスペインチームに障害者を装った健常者がいたことが発覚し、2002年ソルトレイク大会から知的障害者クラス[注 9]を実施しないことになった。これは、IPC加盟団体であるINAS-FIDが、障害の選手資格の基準を再度明らかにし、各国の国内パラリンピック委員会(NPC)とも調整を行わなければ、復帰は難しいという状況を明らかにしたからであり、これから先の大会で実施するかどうかは、その都度、各国NPCの競技運営のモラル次第という厳しい結果となった。
その後、2012年開催のロンドン大会では、知的障害者クラスに関し、「障害認定の厳格化等の条件を満たした」とIPCから承認を受けたいくつかの競技・種目が再び実施された。IPCは、ロンドン大会では医師の証明書や実技試験を課す国際基準を作成したが、実効性には疑問の声がある[20]
韓国では2014年仁川2018年ジャカルタでのアジア・パラリンピック競技大会の柔道競技で、韓国代表において健常者が視覚障碍者を装った大規模な障害偽装が行われたと報道された。これを受けて韓国障碍者スポーツ協会は選手選考において障害者スポーツ等級だけでなく障害者登録を必須条件とするようルールを改正した[43]
商業化
観客が増え、ロンドン大会では史上最多270万枚のチケットが売れ、約4,500万ポンド(約56億円)の売上を記録。オリンピックと異なり、会場広告が許されている。南アフリカ共和国オスカー・ピストリウス選手は数多くのCMで巨万の富を得ている。一方でオリンピックに比べ強化費が少なかったり、助成金やスポンサーが集まらない選手も多い[44]。また、競技に参加どころか生きること自体が難しい国もある[20]
報奨金
各国が報奨金で障害者スポーツ振興を図っているが、日本でもJPSAが実施し、2008年北京パラリンピック以降の金メダリストに100万円、銀メダリストに70万円、銅メダリストに50万円が贈られた。のちに増額され、2014年ソチパラリンピック以降の金メダリストに150万円、銀メダリストに100万円、銅メダリストに70万円となった。将来的には日本オリンピック委員会の報奨金と同額[注 10]とすることを目標にしているが、財源確保のための協賛企業の確保をいかにしておこなうか、そのためには大会自体のブランド価値を高めるという課題が残る[45]

選手

時代により選手層の変化が指摘されている。

元兵士の選手
アメリカ同時多発テロ事件以降はアメリカと同盟国の軍事行動により、身体に障害を負った傷痍軍人が増え、原点回帰ともいえる状況となっている。兵士は障害者となる前からトレーニングを積んでいるため基礎的な身体能力が高く、障害を負ってからスポーツを始めた者より優位との見方もある[22]

注釈

  1. ^ 参加国はイギリスとオランダの2カ国。
  2. ^ この大会で実現した「全ての身体障害者の大会」も定着せず、この後も国際大会は車椅子競技者のための国際ストーク・マンデビル競技大会のみが行われた。
  3. ^ IOCはオリンピックとは全く無関係な大会にオリンピック類似の名称を使うことに対し、永らく難色を示していた。
  4. ^ 夏季大会は1996年アトランタパラリンピック、冬季大会は1998年長野パラリンピックから参加が認められたが、2000年シドニーパラリンピックにおいて、出場した健常者選手による知的障害者偽装が発覚したことを契機に、知的障害者選手はしばらく参加出来ず、参加復活は夏季大会に関しては2012年ロンドンパラリンピックからであった。冬季大会に関しては、最短でも2022年北京パラリンピックまで待つこととなる。
  5. ^ 2010年のバンクーバーパラリンピックを除く。
  6. ^ 夏季大会では2004年のアテネパラリンピックから開会式を生中継している。
  7. ^ 重度の脊髄損傷障害者に見られる症状で、急激に発症する高血圧と頭痛などが特徴。
  8. ^ パラリンピックのワールドワイドパートナーの1社である。
  9. ^ 知的障害者の競技は、IPC加盟団体のひとつである国際知的障害者スポーツ連盟(以下INAS-FID)によるワールドカップが競技ごとに開催されているほか、日本国内の大会では知的障害者クラスも一緒に大会が行われている。この他、INAS-FIDとは別に、知的・発達障害者の競技大会としてスペシャルオリンピックスが実施されている。
  10. ^ 金メダリストが300万円(リオデジャネイロオリンピックからは500万円)、銀メダリスト200万円、銅メダリスト100万円。

出典

  1. ^ 「見果てぬ夢」実現を フェローの旗で五輪参加へ デンマーク領フェロー諸島”. 47NEWS. 2021年9月5日閲覧。
  2. ^ 北欧島国出身のパラ選手がマラソン中にお辞儀し、声援に応えたわけ:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年9月5日閲覧。
  3. ^ 石井尚 (2013年9月6日). “20年夏季五輪:五輪・パラ開催都市、8日決定 「あの感動を日本で」 県内選手、熱い思いと期待 /岡山”. 毎日jp. 毎日新聞社. 2013年9月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年9月13日閲覧。
  4. ^ 65歳大井さん「東京で金」 2020年パラ五輪へ意欲”. 岩手日報 (2013年9月10日). 2013年9月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年9月13日閲覧。
  5. ^ HISTORY AND USE OF THE TERM ‘PARALYMPIC’
  6. ^ 日本パラリンピック委員会|パラリンピックとは|パラリンピックの歴史
  7. ^ 特集/もう1つのオリンピック 日本の3月、パラリンピック。 パラリンピックの歴史
  8. ^ 北京パラリンピック・シンボルマーク”. 人民中国 2008年1月29日. 2012年9月25日閲覧。
  9. ^ パラリンピック競技大会(夏季大会)の開催状況”. 厚生労働省. 2012年9月27日閲覧。
  10. ^ パラリンピック年表”. 日本パラリンピック委員会. 2022年1月31日閲覧。
  11. ^ パラリンピック競技大会(夏季大会)の開催状況”. 厚生労働省. 2012年9月27日閲覧。
  12. ^ パラリンピック年表”. 日本パラリンピック委員会. 2022年1月31日閲覧。
  13. ^ パラリンピック独自の競技種目としてこん棒投が第1回大会から採用されている、
  14. ^ 2014年2月16日 中日新聞朝刊 サンデー版 世界と日本大図解シリーズNO1134
  15. ^ 第1回 ロンドンでは悲願の金メダルを! | 二宮清純の視点|障害者スポーツをスポーツとしてとらえるサイト"挑戦者たち" [CHALLENGERS.TV]
  16. ^ SPORTS COMMUNICATIONS - 車いすテニスプレーヤー国枝、プロ宣言
  17. ^ 朝日新聞デジタル:パラリンピック選手強化、五輪と一元化 競技性高まり - スポーツ
  18. ^ 2014年8月7日中日新聞朝刊22面
  19. ^ 障害者スポーツに関する事業の移管について(通知):文部科学省”. www.mext.go.jp. 2018年6月9日閲覧。
  20. ^ a b c d e 小学館発行 週刊ポスト 2013年11月8,15日号パラリンピックの「知られざる真実」
  21. ^ スポーツ庁 文科省外局に 15年度発足目指す
  22. ^ a b c “戦場の悪夢”と金メダル ~兵士とパラリンピック~ - NHK クローズアップ現代+ - NHK
  23. ^ a b c d e f g h 国内外一般社会でのパラリンピックに関する認知と関心 調査結果報告”. 日本財団パラリンピック研究会. 2017年12月15日閲覧。
  24. ^ 信濃毎日新聞 - 信毎web - 長野パラリンピック フロント
  25. ^ 記者会見で大会の見どころを紹介!『リオ 2016 パラリンピック競技大会』”. スカパーJSAT株式会社 (2016年8月5日). 2021年9月8日閲覧。
  26. ^ 全力応援!NHKソチパラリンピック2014
  27. ^ 冬季パラリンピック開会式、NHKが生中継へ - YOMIURI ONLINE
  28. ^ 放送予定
  29. ^ NHKリオパラリンピック公式サイト
  30. ^ スカパー!がパラリンピック中継に意欲…立ちはだかる放送権の壁”. CYCLE やわらかスポーツ情報サイト (2016年3月16日). 2021年9月8日閲覧。
  31. ^ J:COMオリジナルチャンネル「J:テレ」 東京2020オリンピックに続き、「東京2020パラリンピック競技大会」を放送”. PR TIMES (2021年7月12日). 2021年9月8日閲覧。
  32. ^ 「東京2020パラリンピック馬術競技」番組の放送について”. グリーンチャンネル (2021年8月16日). 2021年9月8日閲覧。
  33. ^ 東京2020パラリンピック民放テレビの取り組み概要について”. 日本民間放送連盟 (2021年8月3日). 2021年9月8日閲覧。
  34. ^ パラリンピック、民放が初めて一部生中継…各局1種目ずつ”. 読売新聞 (2021年8月4日). 2021年9月8日閲覧。
  35. ^ Olympic Games”. colnect.com. 2012年9月25日閲覧。
  36. ^ 長野オリンピック冬季競技大会・長野パラリンピック冬季競技大会”. 日本郵便. 2012年9月25日閲覧。
  37. ^ 世界車椅子バスケットボール選手権大会記念80円郵便切手”. 日本郵便. 2012年9月25日閲覧。
  38. ^ ロンドン・パラリンピック関連切手発行情報”. livedoorニュース 2012年8月30日. 2012年9月25日閲覧。
  39. ^ リオデジャネイロ 2016 日本代表選手 金メダリスト公式フレーム切手の販売” (PDF). 日本郵政. 2016年9月13日閲覧。
  40. ^ 公益財団法人日本アンチドーピング機構 TUE
  41. ^ 日本身体障害者陸上競技連盟HP内 日本パラリンピック委員会 ブースティングについての考え方
  42. ^ 2016年11月29日22時25分(放送)NHK総合テレビ「修理工場は眠らない パラリンピックを支えた職人たち」
  43. ^ 目が見えないと医師をだましてメダルまで獲得したパラリンピック韓国代表”. www.chosunonline.com. Chosun Online | 朝鮮日報. 2020年12月6日閲覧。
  44. ^ 障害者スポーツ:依然少ない助成金 スポンサー探し奔走中 - 毎日新聞
  45. ^ 2014年5月21日 中日新聞朝刊





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