ニイハウ島事件 異なる見解

ニイハウ島事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/23 19:53 UTC 版)

異なる見解

現地住民によって戦闘機用の通話暗号表の入った用具嚢を持ち去られたため、キャンプに放火することで西開地らは暗号表の隠滅を図った。その後、放火を知った現地住民の前から逃走し、山中で拳銃を用いて自殺した。現在の通説は現地住民が米軍当局からの褒賞欲しさについた虚偽の証言であるとの見解も存在するが、島民に負傷者が出ているのは事実で、3発撃たれてなお格闘するのは不自然で、実際の怪我の程度については疑問の余地はあるものの、事実は概ね通説通りだというのが大勢である。

事件の余波

歴史家ゴードン・プランゲは、「3人の日系人住民が(大日本帝国海軍の)パイロット側に転向したあまりもの素早さ」がハワイの住民を困惑させたとしている。またプランゲは「より悲観的な者はニイハウ島事件を、日系人はたとえアメリカ市民だろうと信用できず、彼らにとって都合がいい状況であった場合は日本側に寝返るかもしれない引証とした」と述べている[16]

小説家のウィリアム・ホルステッドは、「ニイハウ島事件は、日系人の強制収容に至る決定に影響した」と主張している[17] 。彼によれば、新谷と原田家の行動はアメリカ海軍の報告書に記されたと言う。1942年1月26日のアメリカ海軍のC・B・ボールドウィン中尉による公式文書の中で、以下のように記されている。「それまで反アメリカの傾向がなかった2人のニイハウ島の日本人住民が、日本の支配がその島において可能だと思われた際にそのパイロットを助けたという事実は、それまでアメリカに忠誠を誓っていた日本人住民が、さらに日本の攻撃が成功すると思われた場合、日本を支援するかも知れないという可能性を示している」[18]

しかし実際は、日系アメリカ人の強制収容実施の計画はこの報告書の提出に先立って、フランクリン・D・ルーズベルト大統領アメリカ陸軍カリフォルニア州によって進められていた。

記念碑

西開地の故郷である愛媛県波止浜(現在は今治市の一部)には、花崗岩の柱が建てられている。その柱には、事件の物語と、彼は「戦闘」で死に、「彼の功績は永遠に続く」と刻まれている[17]

西開地の零戦の残骸は、真珠湾のフォード島のアメリカ海軍基地内にある「太平洋航空博物館」内に展示されている。


  1. ^ 戦史叢書10 1967, pp. 361–363四 戦果の判定と被害/被害
  2. ^ 戦史叢書98 1979, pp. 92–96.
  3. ^ 戦史叢書10 1967, pp. 283–285第三潜水部隊の進出
  4. ^ 戦史叢書98 1979, p. 96.
  5. ^ 土本匡孝, 平和:「ニイハウ島事件 日系2世の汚名返上を」, オッショイ!九州, 毎日新聞, 2011年12月7日.
  6. ^ 高橋賢三, 「甲飛の友」, 蒼空の記憶.
  7. ^ 戦史叢書10 1967, pp. 339–341第二次攻撃隊の攻撃
  8. ^ 戦史叢書10 1967, pp. 614–616第二次攻撃隊制空隊(零戦35機)の編制
  9. ^ #飛龍飛行機隊調書(1)p.4
  10. ^ 戦史叢書10 1967, pp. 374–375開戦時の海上兵力配備
  11. ^ a b 戦史叢書10 1967, p. 392.
  12. ^ 戦史叢書10 1967, pp. 406–408三 各潜水部隊の作戦
  13. ^ 戦史叢書10 1967, p. 407.
  14. ^ a b Lord, Walter (1957). Day of Infamy. Henry Holt and Company. pp. 188–191. ISBN 0-8050-6803-1 
  15. ^ 姓の「カナヘレ」は、定冠詞の「カ」、「森」の意の「ナヘレ」で構成されている。(Dictionary translation.) カナヘレはニイハウ島に祖先を持つ家族にとって一般的な姓である
  16. ^ Prange, Gordon W. (1962). December 7, 1941: The Day the Japanese Attacked Pearl Harbor. New York: McGraw Hill. pp. 375–77
  17. ^ a b William Hallstead (2000年11月). “The Niihau Incident”. 2017年3月15日閲覧。
  18. ^ Beekman 1982, p. 112






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