トゥールーズ 文化

トゥールーズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/20 06:13 UTC 版)

文化

建築遺産

ベルト状の大通りはフランス国内で最も保存状態の良いものである。宗教建築遺産は、ジャコバン派教会からなる大建築が有名である。本堂はヤシ(フランス語でパルミエ)に似た柱構造である。

さらに最近は、エアバス社工場や、レ・ザバトワール(fr:Les Abattoirs、現代美術館)やシテ・ド・レスパスを訪問する観光客が増えている。

建物と広場

ウィルソン広場の噴水

トゥールーズは特徴ある建物が多い。市役所機能があるキャピトル邸は、19世紀芸術家の作品を所蔵する部屋や、オペラ、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団を擁し、同名のキャピトル広場もあり、最もよく知られている。キャピトル邸の後ろには、かつて監視塔に使われたドンジョン・ド・キャピトルがあり、現在は市観光局が入っている。

ウィルソン広場は、ジャン・ジョーレ小路中程、市中心部への入り口にある。レンガ建ての建物は、公園の周囲に集まっている。この広場は、バーやカフェのテラス、映画館が数多く軒を連ねる活気ある場所である。

ガロンヌ河岸と埠頭は、18世紀に整備された。アンリ・マルタン埠頭とトゥニ埠頭は、氾濫が起きても川の流れに沿って歩けるようレンガで築かれ、かつての橋の跡も発見された。全長220mのヌフ橋は、トゥールーズ最古の橋である。サン=ピエール橋は1987年に架けられた金属製の橋である。ガロンヌのわずかに下流はバザクルで、ここにはトゥールーズから最初に移住した人々がつくった洗い越しがある。洗い越しは現在、夏の数ヶ月間にガロンヌ川の十分な水位を維持するためのダムとなっている。流れに非常に近い場所に、ラ・グラーヴ病院と付属礼拝堂があり、銅製の礼拝堂ドームのおかげでよく見える。トゥールーズの水道塔は、写真のギャラリーや展示場所が設置されている。

その他の特色ある建物として、ミディ運河に近いトゥールーズ・マタビオ駅、サン=ミシェル刑務所、パレ・ニールがある。パレ・ニールは最初、当時のフランス元帥アドルフ・ニールの命令で建てられた防衛施設であった。ピュルパン=アンスリにあるローマ時代のアンフィテアトルム跡は、市内にあるローマ時代の建物のうち唯一完全な状態のものである。

邸宅

ルネサンス期に染料アイの貿易で栄えたトゥールーズでは、多くの地元ブルジョワ階級が凝った装飾の邸宅を建てた。それらには塔が載せられていた(権力の象徴であり、市に重要な人物であることを認識させるため)。従って、市中心部での邸宅の数は74軒を下回らない。

  • 主な邸宅
    • ヴュ=レザン邸(現在はホテル・メニエとなっている)
    • アッセザ邸(現在は美術館)
    • デュメ邸(現在考古学博物館)
    • バジ邸

カフェとホテル

1890年代のグラン・カフェ

トゥールーズには、下町の半ば舗装された通りにテラスを設けた多くのカフェがある。ウィルソン広場、サン=ジョルジュ広場、サン=ピエール広場などに面したカフェでは晴れた日になると、しばしば混み合う。コーヒー文化の大きな時代は、19世紀終わりから20世紀前半であった[66]。かつてラファイエット広場と呼ばれていた現在のウィルソン広場周囲には、最も美しいカフェが連なる。1900年、4人の実業家が集まってグラン・カフェ匿名会社を創設し、当時5つの店を所有していた。これらのカフェが、1960年代のカフェ全体を活性化させたことは注目に値する。

キャピトル広場には目を見張るホテル建築が並ぶ。グランド・オテル・ド・オペラはかつてサン=マルティアル神学校があった場所にたつ。反対側はオテル・デュ・グラン・バルコンで、ジャン・メルモーズアエロポスタル時代のサン=テグジュペリが常宿としていた。

宗教建築

サン=セルナン大聖堂

カトリックの建築物がトゥールーズで数多く、幾つかは有名である。サン=セルナン大聖堂は同名の地区にあり、1998年にフランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路の一つとして、UNESCO世界遺産に登録された。現在の教会は南部ロマネスク様式で、1878年に献堂された。

ジャコバン教会と付属礼拝堂は、ガロンヌ川とキャピトル広場との間にある。13世紀から14世紀にかけて建設された、ラングドック・ゴシック様式の宝石を完全にレンガで実体化した修道院建築である。高さ22mの柱22本が丸天井の筋交い骨を支え、隔てられた二重本堂を持つ。最後の柱はヤシの形をした希な形状である。この建物はドミニコ会の修道院敷地に囲まれ、ここには1274年に死去したトマス・アクィナスの棺が1369年に安置された。フランス革命中にサン=セルナン大聖堂へ棺が移され、アクィナス没後700年にあたる1974年、聖人は修道院へ戻された。

サン=テチエンヌ大聖堂は、1070年頃に建てられたトゥールーズの大聖堂である。様々な時代の建築様式で構成されているため、外観が独特である。

その他に、鐘楼のあるノートルダム・デュ・トー教会、ドーラド教会、サントーバン教会、サン=ニコラ教会、ノートルダム・ド・ダルバード教会、現在は博物館となっているオギュスタン修道院、カルメリート教会がある。

トゥールーズは、サリヌ広場やパルガミニエール通りにプロテスタントの教会もある。ラヴォル大通りにあるサン=サテュルナン教会、グランド=ブルターニュ大通りにあるサン=ニコラ教会は、正教会の教会である。新しいシナゴーグと、最近できたユダヤ人センターは、市内にあるユダヤ人記念物を代表する。最後に、市内には数カ所のモスクがある。ミナレットを併設したエヌール・モスク(アンパロ地区)は、ドームを建設中で、3階建てで2100 m2である。

オック語

フランス語・オック語で表示された市内の通りの名

トゥールーズは、オック語を固有言語とするオクシタニア第2の都市(第1の都市はマルセーユ)である。トゥールーズの特殊性は、オック語ラングドック方言とガスコーニュ方言との境界に位置することである。ガスコーニュ方言はガロンヌ左岸で昔から話され(サン=シプリアン区)、ラングドック方言は市の中心部で話される。トゥールーズでのラングドック方言はトゥルザン(toulousain、オック語ではtolosan)といい、ラングドック方言の話される市南部の一部ではモンディーヌ語(langue mondine)という。オック語ラングドック方言を用いたトゥールーズ出身の有名な作家・詩人には、ピエール・グドゥリがいる[67]。1323年、オック語作家を対象に毎年詩のコンテストを行うジュー・フロー協会が設立された。

長期間、義務教育の現場でオック語を教えることが禁じられてきたため、1920年までオック語が街頭で話されることはなく、ラランド区やサン=シプリアン区といった一部の庶民の多い地区で、1960年代までオック語を耳にすることができた。

フランス語は、中世後期に都市の特権階級の間に普及した。1500年から1530年の間に頭角を現したエリートらによって、少なくとも書き言葉と行政において言語がフランス語にとってかわった[68]

トゥールーズで話されるフランス語は、統語論や語彙、発音においてオック語の痕跡をとどめている。

現在、オック語が伝統あるシテ・モンディーヌを復活させるよう、政治的要求が始まっている。2006年12月16日、トゥールーズにおけるオック語文化の窓口となるオスタル・ドクシタニア(fr)が設置された。2009年10月以降、地下鉄の駅名がオック語で表示されるようになった。

トゥールーズの食

カスレ
トゥールーズ産ソーセージ

フランス南西部の中心都市であるトゥールーズは、ガスコーニュに近接する。市内のレストランではカモを基本とする数多くのスペシャリテを提供する。しかし、おそらく最も知られている料理はカスレだろう。トゥールーズ産ソーセージ、白インゲンマメを煮込んだものである。カスレ発祥の地がカステルノーダリかトゥールーズかの論争は昔から繰り広げられ、味覚の世界でも言われているのである。ル・カシュ・ラジョニ(fr)は、1880年にトゥールーズの薬剤師レオン・ラジョニが発明した、リコリスを使った黒い角形の飴である。

他の特徴あるトゥールーズ料理といえば、トゥールーズ風アイヤード(l'aillade toulousaine、ニンニクをこすりつけたパンに殻をむいたクルミをそえ、オリーブ油に浸したもの)、ラ・ブリック・ド・カピトル(la brique du Capitole、プラリネの入った葉の形をしたボンボン)、トゥールーズ風エスカルゴ、レストファ・トゥルザン(l'estouffat toulousain、牛肉、ジャガイモ、タマネギ、ニンニク、ラード、ニンジン、豚足、ワインと酢を用いる煮込み料理)、フェネトラ(fénétra、レモンを使ったケーキで、アーモンドとスミレ1ダースを使う)、フォワグラ、トゥールーズ風パニーニ(トゥールーズ風ソーセージ、アカタマネギ、バルサミコ酢、パニーニ用パン、ディジョン産マスタード、チーズ、バジル、オリーブ油)などが挙げられる。


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