デ・ハビランド・カナダ DHC-8 開発

デ・ハビランド・カナダ DHC-8

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/27 13:40 UTC 版)

開発

世界初のジェット旅客機であるコメットの製造会社として、欧米で最も長い歴史を持つデ・ハビランド・エアクラフトのカナダ子会社「デ・ハビランド・カナダ」が開発した。

前作・DHC-7はコミューター機として開発されたものであり、50名ほどを搭載できる機体のサイズや与圧された客室、強力なSTOL性能を有しながら騒音軽減が考慮されるなど市場に向いた設計であった。しかし4発機であったため、ほどなく登場した双発コミューター機と比べ価格や整備費の面で不利となり総生産数は113機で終わり、ビジネスとしては不振に終わった。顧客からはDHC-7の性能でより経済的な機体が求められた。デ・ハビランド・カナダは、改良型であるDHC-7-200の開発を予定していたが、取りやめとなり1979年にDHC-8として開発計画が公表された。1980年代からカナダ政府はデ・ハビランド・カナダを民営化した後ボーイングに売却、さらにボンバルディア・エアロスペースに売却されるなど会社再編が進行していたが計画は続行され、1983年7月20日に初飛行した。

デ・ハビランド・カナダの清算後、型式証明はボンバルディア・エアロスペースが取得し改良型を生産している(後述)が、生産が終了していたDHC-8以前の機種に関する権利はバイキング・エアに売却された。DHC-8の製造権も2019年からバイキング・エアの系列企業として新設された2代目デ・ハビランド・カナダに移っている。

機体概要

大まかな機体形状はDHC-7を踏襲し、主翼は直線翼で高翼配置である。主脚はエンジンナセル後部に収納される。全幅はDHC-7の28.35mに対し、25.58mとやや小さくなっており、コックピット周辺の形状も段差のないものに変更された。コミューター機としてSTOL性能を重視し、前縁フラップはないが二重隙間フラップを装備しており、これは翼幅の80%に達している。エンジンはターボプロップエンジンの双発である。DHC-7はPT-6(1,100軸馬力)4発であったが、DHC-8はプラット・アンド・ホイットニー・カナダ社製PW120(2,000馬力)2基搭載に変更されている。尾翼はT字尾翼で垂直安定板は前方にフィン(ドーサルフィン)が伸ばされているなど、大きなものである。方向舵は二重ヒンジ式であり、操縦性を高めている。客室は与圧されている。

バリエーション

DHC-8にはいくつかのバリエーションがある。

シリーズ 100(Series 100)- DHC-8-100
1984年に運用が開始された原型の37-40座席バージョン。
シリーズ 200(Series 200)- DHC-8-200
性能を改善したより強力なプラット・アンド・ホイットニー製PW123エンジン(2,100軸馬力)をシリーズ 100に搭載。
シリーズ 300(Series 300)- DHC-8-300
シリーズ 200を3.4メートル胴体延長し、1989年に運用が開始された50-56座席バージョン。

Q シリーズへの改良

ボンバルディア Q シリーズ

エア・ベルリン ボンバルディアQ400

    • 約1700万USドル (Q300)
    • 約2700万USドル (Q400)[2]

ボンバルディア ダッシュ8(Bombardier “Dash 8”)は、DHC-8を基にボンバルディア・エアロスペースが生産した派生型。

1996年第二四半期から改良型のQシリーズに生産が移行し、シリーズ 200はQ200、シリーズ 300はQ300と改められた。また、シリーズ 300の胴体をさらに6.83メートル延長したQ400も登場し、最も大きなモデルとなった。この機体を記述するに当たってDHC-8-400や、Qを付加してDHC-8-Q400とされる場合が日本国内外を問わずよく見かける。これらについては姉妹機であるQ300やQ200でも同様である。2016年には貨物容量増加型改良機Q400CCが生産開始された。DHC-Q400CCとして日本の琉球エアーコミューターローンチカスタマーとなった。現在製造されているのはQ400のみ。

機体構成

コックピットの計器類も改められている。三菱重工業がリスクシェアリングパートナーとして開発に参加し、中胴、後胴、垂直尾翼水平尾翼昇降舵方向舵、ドアなど全体の半分近くの設計・製造を行っている。三菱グループは製造協力を行っており、後に2015年のMRJ(現・Mitsubishi SpaceJet)によるYS-11以来の日本製機材での初飛行に繋がった。かつて日本の日本航空機製造が製造したターボプロッププロペラ機「YS-11」より少し大きな機体で、効率の良い6枚ブレードのプロペラを装備して比較的低回転数(離陸時1020rpm、巡航時850rpm)で所要の出力を発揮する。また、巡航速度は700 km/h弱とターボプロップ旅客機としては比較的高速である。主な競合機であるATR-72と比較すると、巡航速度航続距離・座席数の点などで優れている。その分着陸滑走距離が1,200mでは運用制限がかかる。

Q400CCはQ400と比較して貨物スペースを2.5倍に拡張する一方、座席数は74席(JAC運航機の座席数)からRACのQ300と同数の50席に減少させている[3]

騒音や振動の対策としては、1988年から研究が進められQ シリーズに採用されたものとして、機内のマイクロフォンが騒音を拾い、そのデータを元に能動的に騒音振動を緩和させる装置 "NVS"(Noise and Vibration Suppression)がある。また同シリーズでは吸音素材も導入し、反響を抑えるための構造の改善など設計から見直した。その結果、平均騒音値は75.1 dBAまで下がり、高空飛行時の小型ジェット旅客機のボンバルディア CRJが発する騒音値よりも低いものとなった。

運用

日本ではYS-11が長年にわたり地方路線で活躍していたが、航空法の改正で空中衝突防止装置(TCAS)の設置が義務付けられたことにより、能力的に同機の後継機種として導入が行われた。2003年日本エアコミューターが運航を開始。その後、エアーニッポンネットワークエアーセントラルも運航を開始した。なお、日本エアコミューターでは就航空港の滑走路長によりATR42-600の導入およびATR72-600に一部置き換え、J-AIRへのエンブラエル170・190の導入とそれに伴うJACからJ-AIRへの路線移管に伴い、順次退役が進行しており、2018年11月30日をもって全機退役。

琉球エアーコミューターではこれまで運航してきたQ100・Q300の代替としてQ400CCを導入し、2018年1月までに在来のQ100・Q300をすべて退役させた。Q400CCの導入の理由はこれまで運航してきた機材の老朽化に加えて、離島路線の貨物輸送力を増強してほしいという地域からの要望に応えるためであった。2013年に那覇~久米島線の一部・石垣~与那国線をJTAからRACへ移管した際、これまでのボーイング737からQ100・Q300へ変更したことにより貨物輸送力の減少が問題となっていた。特に与那国町では特産であるカジキの積載数が減少することから当時問題視されていた。Q400CCへの機材更新により、この問題の解決を図り、離島路線の貨物輸送力増強が図られることとなった[4][5]

ANAウイングスでは2026年以降にQ400を退役させることを発表した。

航空事故







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