デスクトップパソコン 歴史

デスクトップパソコン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/18 10:20 UTC 版)

歴史

初期のデスクトップパソコンであるApple II
PC-9821PC/AT互換機(1996年)

マイクロプロセッサが普及する以前では、デスクトップに収まるサイズのコンピュータは非常に小さいレベルであった。当時ミニコンピュータと呼ばれていたものでも、冷蔵庫サイズのラックに収まる程度の大きさであった。

1960年代半ばから1970年代半ばに開発された最初期のデスクトップサイズのコンピュータ(マイクロコンピュータ)としては、オリベッティ・プログラマ101MIRWang 2200HP 9800IBM 5100MCM/70Xerox AltoAltair 8800、そしてApple Iがある。

商業的に成功した初期のデスクトップパソコンとして、Apple IITRS-80、そしてPET 2001が1977年に発売された。これらはビジネス用途よりも個人で使用するホームコンピュータ市場という市場を作り出した。1981年に発売されたIBM PCはこの市場の発展に大きく貢献した。1980年代半ばから90年代初頭にかけては、IBM PCおよびそのクローンであるPC/AT互換機が市場シェアのトップを占め、Macintosh、そしてAmigaがそれに続いた。

1980年代の後半になるとノートパソコンも市場に販売されるようになるものの、デスクトップパソコンは1970年代から1990年代にかけてはパソコンの主流であった。

市場での位置づけ

2000年代以降、ノートパソコンの進化がデスクトップパソコンの置き換えを促進したのは事実である。しかし、100%では決してない。理由は以下の通りである。

ノートPC、タブレットなどモバイル機器の宿命であるサイズの制約のため、デスクトップPCにはモバイルPCに実装困難なハイパワーGPUと大型ディスプレイを使用できることによる、強力なグラフィック性能と高い操作快適性というアドバンテージが存在する。この点は、ディスプレイをたたむ、曲げる等の技術的ブレイクスルーが無い限り、B4サイズ程度がモバイルの実用上限界であるのに対し、据え置きディスプレイの画面は2009年頃時点でそれを上回るサイズのものが市場需要のメインストリームとなっており、さらに大型化を続けている点でも明らかである。

特に近年の強力な3Dグラフィック性能を要求するゲーム用PCの分野は、なおもデスクトップの独壇場に近い様相である(ただし、最近ではゲーム映像の高精細化が頭打ちになりつつある一方で、ハードウェアの性能向上はなおも堅調であり、ゲーム用を謳ったハイエンドグラフィック型ノートPCも登場している)。

デスクトップではさらにマルチディスプレイ対応が一般化するなど、サイズ的には頭打ちとなっているノートPCとのグラフィック環境面での格差は拡大しつつあるといえる。ノートPCに別途ディスプレイを接続する選択肢もあり、またノートPCでもマルチディスプレイ対応の製品は増えつつあるが、当然モバイル環境においてはその恩恵に浴することはできないし、また内蔵GPUの制約による解像度の限界など、まだまだ格差は拭えない。

また現在のPCは動画、音楽等の各種メディアプレイヤーとしての用途も一般的になっているが、この面においても上記グラフィック性能に関しては無論のこと、スピーカーや音源ボード等の拡張性、ファイルサイズの大きい動画を扱えるストレージ容量と転送速度、CPUとメモリの能力など、デスクトップPCがノートPCやスマートフォンより高い優位性を持っている。AV機器も手がける家電メーカーでは、デスクトップPCのハイエンドラインナップにはテレビやビデオの機能をも統合したメディアステーションとして付加価値を高めた製品が多い。

入力機器に関しても、キーボードが本体と分離されているため、疲れにくい姿勢で操作できる、キーボード上からの発熱が少なく長時間の作業を行いやすいという利点や、筐体の制約によりキーボードの面積が小さくなって、操作性が低下することもない。マウスに到っては、ノートパソコンには本体にマウスの役割を果たすタッチパッドなどが標準搭載されているが、操作性が劣るため、事実上マウスも別途必須とすることが少なくない。この点はディスプレイ面に直接触れて操作するタッチパネルの普及により、ようやく改善が果たされつつある。

各構成品が分離されている、あるいは容易に交換できる仕様になっているため、ディスプレイやキーボードを好みの製品を選択できる、さらにはパソコン本体内部の構成部品(ハードディスク、メモリ、光学ドライブなど)に到るまで、市販の汎用部品・製品が容易に入手でき、各構成部品・製品の交換や修理、さらにはグレードアップ(メインメモリの増設や大型ディスプレイへの交換など)が比較的容易・安価に行えるメリットがある(ただし、メーカー製PCによってはディスプレイと本体の接続に特殊なコネクタを用いている場合がある)。また、パソコンの冷却は空冷方式が一般的だが、市販の冷却パーツを使用することで静音性の高い水冷方式にすることも可能である。

こうした選択自由度と拡張性が活きるのが研究開発用やシミュレータ用途で、特に現行のモバイルPCには複数のコンピュータを連動させるリアルタイムシステムの構築に要求される、外部接続が可能な高速バスが備わっておらず、この種の用途ではまだデスクトップPCはその牙城を保持している。

また、2010年代に入って以降、低価格なスマートフォンやタブレット端末がノートPCの市場を侵食してきているため、デスクトップパソコンの独自の立ち位置が際立ち始めている。デスクトップパソコン自体も、一般のコンシューマー向けのものでは、CPUなどの省電力化とこれによる発熱量の減少・拡張性の切り捨て[2]によるケースの小型化(弁当箱程度や、さらに後述USBメモリスティック形状まで小型化)など、それまでは簡素で無機質なものが多かったケースのデザインの発達などが進み、市場での居場所を確保している。

一体型パソコン

液晶ディスプレイ一体型パソコン

オールインワンの設計思想を導入して、ディスプレイまたはキーボードが筐体と一体になっているパソコンを一体型パソコンと呼ぶ。8ビットCPUの時代は、キーボード一体型が全盛であった。また、ディスプレイ一体型は現在に至るまで省スペース家電的な販売がされている。

ほとんどの場合、拡張性が犠牲になっているが、省スペースで配線の手間が省けることや、液晶ディスプレイ一体型の場合、液晶ディスプレイ単体とほとんど変わらないスペースに設置でき、省スペース性が高い。機種によってはノートパソコン以上に省スペースであり、企業内に大量に導入されることも多い。VESAの液晶取り付け規格に対応していれば、「壁掛けパソコン」が実現できるモデルもある。しかしメモリの増設など、パソコンの内部を見る際に付属のパーツごと持ち上げたりしなければならず、拡張時に手間がかかる事が多い。また、ディスプレイが壊れるとその他の部分が故障していなくても事実上使えなくなる(外付けディスプレイをつなげれば使えるが、省スペース性が損なわれることになる)。

日本メーカーから国内向けに販売される機種が多かったが、その省スペース性から、HPデルASUSなどからも低価格の一体型パソコンが販売され、アメリカ合衆国などでも一般家庭向けデスクトップパソコンの主流になりつつある。なお、低価格パソコンの一端には「インターネットに接続して必要最小限なブラウジングが可能」というインターネット端末としての廉価版を目指したジャンルもあり、これを指して「ネットブック」とも呼ぶ。








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