セメント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/18 06:54 UTC 版)
安全性
セメントは、水と反応すると水酸化カルシウムを発生させ、強いアルカリ性を示す性質がある。そのため、目や鼻、皮膚に対して刺激性、溶解性があり、硬化前のセメントが付着した状態が続くと目の角膜や鼻の粘膜、皮膚に炎症や出血が起こる可能性がある(セメント皮膚炎)。
完全に硬化した後のセメント(モルタル・コンクリート)の場合は水酸化カルシウムは二酸化炭素と反応して中性の炭酸カルシウムとなっているので、炎症を引き起こす可能性は多くの場合ない。
セメントの粉塵は平均粒径が10 μm 程度の微粉末であるため発塵性があり、多量のセメントを吸引すると塵肺になる可能性がある。また、セメントは高温で焼く製造過程で、原料中の三価クロムが六価クロムに変化し、微量にこれを含んでいる。
環境配慮
廃棄物・副産物の有効利用
セメントは製造工程上、二次廃棄物が発生せず、高温で処理するためダイオキシン類が発生しにくいため、日本では発電所の石炭灰や下水処理場の汚泥を含め、廃棄物・副産物をリサイクルしている[13]。この有効活用により、天然資源の削減、最終処分場への廃棄物搬入の抑制に貢献している[13]。
二酸化炭素の排出削減
日本のセメント産業は、日本全体の温室効果ガス排出量の約4%を排出しており[14]、省エネ対策についてはすでに世界最高水準に達しているが、さらなる対策が検討されている。ポルトランドセメントは焼成工程において石灰石の熱分解( CaCO3 世界の国・地域別セメント生産量推移(単位:千トン)
国(地域)
1995年
2000年
2005年
2010年
2015年
中国
445,610
576,000
1,000,000
1,800,000
2,350,000
インド
70,000
95,000
130,000
220,000
270,000
米国
78,320
92,300
99,100
63,500
83,400
ブラジル
25,500
41,500
39,000
59,000
72,000
エジプト
----
23,000
27,000
48,000
55,000
フランス
21,000
20,000
20,000
----
----
ドイツ
40,000
37,000
32,000
31,000
32,000
インドネシア
19,500
27,000
37,000
42,000
65,000
イラン
----
----
32,000
55,000
65,000
イタリア
35,000
35,000
38,000
35,000
23,000
日本
90,474
77,500
66,000
56,000
55,000
韓国
55,130
50,000
50,000
46,000
63,000
メキシコ
23,971
30,000
36,000
34,000
35,000
パキスタン
----
----
----
30,000
32,000
ロシア
36,400
30,000
45,000
49,000
69,000
サウジアラビア
----
----
24,000
45,000
55,000
スペイン
25,000
30,000
48,000
50,000
----
台湾
22,478
19,000
----
----
----
タイ
26,500
38,000
40,000
31,000
35,000
トルコ
33,153
33,000
38,000
60,000
77,000
ベトナム
----
----
27,000
50,000
61,000
その他
373,300
450,000
392,000
520,000
603,000
総計
1,421,300
1,700,000
2,220,000
3,300,000
4,100,000
順位
企業
国
容量 (百万トン/年)
プラント数
1
ラファ―ジュ
フランス
225
166
2
ホルシム
スイス
217
149
3
中国建築材料集団有限公司
中国
200
69
4
安徽海螺セメント股份有限公司
中国
180
34
5
ハイデルベルクセメント
ドイツ
118
71
6
冀東発展集団有限責任公司
中国
100
100
7
セメックス
メキシコ
96
61
8
華潤セメント控股有限公司
中国
89
16
9
中国中材集団有限公司
中国
87
24
10
山東山水セメント集団有限公司
中国
84
13
11
Italcementi
イタリア
74
55
12
Taiwan Cement
台湾
70
13
Votorantim*
ブラジル
57
37
14
CRH**
アイルランド
56
11
15
UltraTech
インド
53
12
16
華新セメント股份有限公司
中国
52
51
17
Buzzi
イタリア
45
39
18
Eurocement
ロシア
40
16
19
天瑞集団セメント有限公司
中国
35
11
20
Jaypee***
インド
34
16
日本のセメントに因む地名
- 山口県山陽小野田市セメント町 - 小野田セメント(現・太平洋セメント)の創業の地であることに由来。
- 大分県津久見市セメント町 - 太平洋セメントの工場があることに由来。
- 神奈川県川崎市川崎区セメント通り - 浜町3・4丁目地内を神奈川県道101号扇町川崎停車場線から産業道路へ抜ける道の名称。産業道路の先の浅野町に太平洋セメントの前身の一つである浅野セメント工場があったことに由来する。
- ^ 膠灰とは - コトバンク
- ^ Hill, Donald: A History of Engineering in Classical and Medieval Times, Routledge 1984, p106
- ^ PURE NATURAL POZZOLAN CEMENT
- ^ Aqueduct Architecture: Moving Water to the Masses in Ancient Rome
- ^ A J Francis, The Cement Industry 1796-1914: A History, David & Charles, 1977, ISBN 0-7153-7386-2, Ch 2
- ^ Francis op. cit., Ch 5
- ^ P. C. Hewlett (Ed)Lea's Chemistry of Cement and Concrete: 4th Ed, Arnold, 1998, ISBN 0-340-56589-6, Chapter 1
- ^ a b c 一般社団法人セメント協会「セメントハンドブック2019 」8頁
- ^ a b c “NEDOプロジェクト実用化ドキュメント”. www.nedo.go.jp. NEDO. 2020年5月4日閲覧。
- ^ 社団法人 日本建築学会「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事 2003」
- ^ a b c d e f g h 青山咸康・服部九二雄・野中資博・長束勇編 2003, p. 11.
- ^ 青山咸康・服部九二雄・野中資博・長束勇編 2003, p. 12.
- ^ a b 一般社団法人セメント協会「環境にやさしいセメント産業2019」
- ^ “温暖化対策と高炉セメント:協会活動”. www.slg.jp. 鐵鋼スラグ協会. 2020年5月4日閲覧。
- ^ a b 野畑健志「高炉セメントのCO2削減効果について」『コンクリート工学』第48巻第9号、日本コンクリート工学会、2010年9月、9_58-9_61、doi:10.3151/coj.48.9_58。
- ^ 金津努, 中井雅司, 齊藤直「フライアッシュの活用による環境負荷低減への取組み」『コンクリート工学』第48巻第9号、日本コンクリート工学会、2010年9月、9_54-9_57、doi:10.3151/coj.48.9_54。
- ^ 一般社団法人日本建設業連合会「低炭素型コンクリートの普及促進に向けて」2016年4月
- ^ “NEDOプロジェクト実用化ドキュメント”. www.nedo.go.jp. NEDO. 2020年5月4日閲覧。
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