スペインの地理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/01 06:16 UTC 版)
大陸 | ユーラシア大陸(ヨーロッパ大陸)[注釈 1] |
---|---|
地域 |
南ヨーロッパ イベリア半島 |
面積 | 54[1]位 |
• 総面積 | 505,370[1] km2 (195,120 sq mi) |
• 陸地 | 98.74% |
• 水地 | 1.26% |
海岸線 | 4,964[1] km (3,084 mi) |
国境 | 1952.7[1] |
最高点 |
テイデ山(カナリア諸島、3,718m) ムラセン山(スペイン本土、3,477m) |
最低点 | 大西洋、地中海(海抜0m) |
最長河川 |
タホ川(イベリア半島全体) エブロ川(スペイン限定) |
最大湖沼 | サナブリア湖 |
位置・範囲・面積
位置
スペイン大陸部はユーラシア大陸(ヨーロッパ大陸)の南西端にあり、イベリア半島の約85%を占めている。その他には地中海にバレアレス諸島が、大西洋にカナリア諸島がある。アフリカ大陸沿岸と沖合には5つの飛び地領土プラサス・デ・ソベラニア(セウタ、メリリャ、チャファリナス諸島、ペニョン・デ・アルセマス、ペニョン・デ・ベレス・デ・ラ・ゴメラ)があり、ピレネー山脈内部のフランス領土には飛び地領土としてリビアがある。
スペイン大陸部は北緯36度0分から北緯43度48分の範囲にあり、西経9度18分から東経3度19分の範囲にある[2]。島嶼部ではバレアレス諸島は北緯39度・東経3度付近にあり、カナリア諸島は北緯28度・西経17度付近にある。このため、スペイン全土では北緯27度38分から北緯43度48分の範囲にあり、西経18度10分から東経4度19分の範囲にある[2]。アラゴン州東部とバレンシア州東部には南北に本初子午線が通っている[2]。スペイン大陸部の標準時はフランスやドイツと同じUTC+1であり、カナリア諸島の標準時はポルトガルやイギリスと同じUTC+0である[2]。冬季は中央ヨーロッパ時間(CET=UTC+1)が、夏季は中央ヨーロッパ夏時間(CEST=UTC+2)が使用される。
イベリア半島はジブラルタル海峡でアフリカ大陸と隔てられているが、ジブラルタル海峡の最狭部はわずか約14kmである。ヨーロッパの同緯度地域(南ヨーロッパ)にはイベリア半島、イタリア半島、バルカン半島という3つの大きな半島があるが、この中でもっとも西にあるのがイベリア半島である[3]。
国境・海岸線
スペイン大陸部の北東部では長さ435kmのピレネー山脈でフランスとアンドラ公国と国境を接しており、北岸は大西洋のビスケー湾に面している。北西岸は大西洋に面しており、西側はポルトガルと国境を接している。南西岸は大西洋のカディス湾に面しており、南東岸は地中海のアルボラン海に、東岸は地中海のバレアレス海に面している。アンダルシア州カディス県の一部は英領ジブラルタルと国境を接している。アフリカ大陸にあるセウタとメリリャはモロッコと国境を接している。
国境線長は1,952.7kmであり、ポルトガルと1,224km、フランスと646km、アンドラ公国と63km、モロッコと18.5km(セウタとメリリャ)、英領ジブラルタルと1.2kmの国境を接している[1]。スペイン全土の海岸線長は4,964kmであり[1]、うち島嶼部を含まないイベリア半島部分の海岸線の長さは3,144kmである[4]。バレアレス諸島の海岸線の長さは910km、カナリア諸島の海岸線の長さは1,126kmである[5]。
面積
島嶼部も含めたスペインの面積は2016年時点で505,370km2であり、うち498,980km2が陸地、6,390km2が水域である[1]。地域別の内訳は大陸部が492,463km2、カナリア諸島が7,273km2、バレアレス諸島が5,014km2[5]、セウタとメリリャがわずかな面積であり、大陸部が面積の97.5%を占めている[2]。西ヨーロッパではフランスに次いで2番目に面積の大きな国である。
極地
人文地理
人口
1479年にはカスティーリャ王国とアラゴン連合王国が結びついてスペイン王国が成立。16世紀末のスペイン王国の人口は840万人だった[7]。近代には災害や疫病などによる死亡率が高かったため、200年後の18世紀末の人口は1050万人と、増加率は緩やかなものだった[7]。19世紀には死亡率が顕著に減少したため人口の急増が起こり、1857年には1540万人、1900年には1850万人となった[7]。20世紀に入ると増加率はさらに上昇し、フランコ体制が終了した1975年には3550万人となった[7]。このような傾向はおおむね他の西ヨーロッパ諸国に類似しているが、死亡率の減少や人口再生産率の低下は西ヨーロッパ諸国より遅れて展開された[7]。
1979年頃の人口密度は70人/km2であり、西ドイツ(249人/km2)、イギリス(229人/km2)、イタリア(182人/km2)、フランス(95人/km2)などの西ヨーロッパ主要国の中でもっとも低かった[7]。人口の分布は不均等であり、18世紀までは沿岸部より内陸部の人口密度が高かったが、19世紀には産業形態の変化によって沿岸部の人口密度が高まった[7]。今日では面積の2/3を占める内陸部に総人口の41%が、面積の1/3を占める沿岸部に総人口の59%が居住している[7]。
出生率が後退し始めたのは19世紀後半のことであり、第一次世界大戦(1914年)、世界恐慌(1929年)、スペイン内戦(1936年)など相次いだ混乱が影響して出生率低下が顕著となった[8]。第二次世界大戦後にはいったん出生率が上昇したものの、1970年代以降には計画出産の浸透などで再び低下している[8]。1980年代から1990年代の人口は横ばいで推移し、1998年の合計特殊出生率は1.15という低水準となった[9]。1990年代末以降には地中海ヨーロッパ有数の移民受け入れ国となり、モロッコ、南アメリカ、東ヨーロッパなどから多くの外国人労働者を受け入れている[9]。死亡率は1914年以降に大きく減少しており、今日ではヨーロッパでもっとも低いレベルにある[8]。
都市と都市圏
主要都市
19世紀中頃には人口10万人を越える自治体は4自治体(マドリード、バルセロナ、セビリア、バレンシア)であり、その合計人口は68万9000人だった[10]。20世紀初頭には10万人を越える自治体が6自治体となり、その合計人口は150万人となった[10]。1970年には10万人を越える自治体が35自治体となり、その合計人口はスペインの総人口の1/3を越える1150万人となった[10]。マドリードとバルセロナがスペインの2大都市であり、マドリードは行政やサービス産業の中心地、バルセロナは商工業都市という性格の違いがある[11]。
スペインの都市人口(2014年) | |||
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順位 | 都市 | 自治州 | 自治体人口 (人) |
1 | マドリード | マドリード州 | 3,165,235 |
2 | バルセロナ | カタルーニャ州 | 1,602,386 |
3 | バレンシア | バレンシア州 | 786,424 |
4 | セビリア | アンダルシア州 | 696,676 |
5 | サラゴサ | アラゴン州 | 666,058 |
6 | マラガ | アンダルシア州 | 566,913 |
7 | ムルシア | ムルシア州 | 439,712 |
8 | パルマ・デ・マヨルカ | バレアレス諸島州 | 399,093 |
9 | ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア | カナリア諸島州 | 382,283 |
10 | ビルバオ | バスク州 | 346,574 |
11 | アリカンテ | バレンシア州 | 332,067 |
12 | コルドバ | アンダルシア州 | 328,041 |
13 | バリャドリッド | カスティーリャ・イ・レオン州 | 306,830 |
14 | ビーゴ | ガリシア州 | 294,997 |
15 | ヒホン | アストゥリアス州 | 275,735 |
16 | ルスピタレート・ダ・リュブラガート | カタルーニャ州 | 253,518 |
17 | ア・コルーニャ | ガリシア州 | 244,810 |
18 | ビトリア=ガステイス | バスク州 | 242,082 |
19 | グラナダ | アンダルシア州 | 237,540 |
20 | エルチェ | バレンシア州 | 230,224 |
主要都市圏
1947年から1954年にかけて、スペインの主要都市は周辺自治体との市町村合併を行い、郊外の村落を自治体内に吸収、人口と面積を拡大させた[10]。この動向はマドリードとバルセロナの二大都市だけではなく、ビルバオ、サン・セバスティアン、バレンシア、マラガ、ビーゴなどの地方中心都市でも同じだった[10]。経済的に恵まれた周辺自治体は主要都市との合併を行わないことがあり、バルセロナ都市圏のバダロナやルスピタレート・ダ・リュブラガート、ビルバオ都市圏のバラカルドやサントゥルツィは独立した自治体として残った[10]。その場合には住宅や工場の連続性が複数の自治体にまたがることになり、大都市圏(アグロメレーション)を形成。その中でも特に構造が明確なマドリード都市圏、バルセロナ都市圏、ビルバオ都市圏の3都市圏は、行政的にも一定の管理機能を有している[10]。1980年には人口10万人以上の都市圏の人口がスペインの総人口の53%を占めていた[10]。1990年代初頭まではマドリード都市圏とバルセロナ都市圏の人口規模が均衡していたが、その後はマドリード都市圏の人口増加が著しく、今日ではマドリード都市圏が約600万人、バルセロナ都市圏が約400万人となっている[11]。
大都市圏では自治体ごとに機能を補い合う連接都市(コナーベーション)を形成することがあり、バルセロナ都市圏から北部のサバデイ=タラサに至るライン(カタルーニャ州)、オビエド=ヒホン=アビレスという三角形地域(アストゥリアス州)、サン・セバスティアンからエレンテリアを通ってイルンに至るライン(バスク州ギプスコア県)、タラゴナからレウスに至るライン(カタルーニャ州タラゴナ県)などが連接都市の例として知られている[10]。
スペインの都市圏人口(2015年)[12] | ||||
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順位 | 都市圏 | 自治州 | 都市圏人口 (人) | |
国内 | 世界 | |||
1 | 56 | マドリード首都圏 | マドリード州 | 6,171,000 |
2 | 83 | バルセロナ都市圏 | カタルーニャ州 | 4,693,000 |
3 | 315 | バレンシア都市圏 | バレンシア州 | 1,561,000 |
4 | 444 | セビリア都市圏 | アンダルシア州 | 1,107,000 |
5 | 643 | ラス・パルマス都市圏 | カナリア諸島州 | 763,000 |
6 | 648 | ビルバオ都市圏 | バスク州 | 756,000 |
7 | 679 | サラゴサ都市圏 | アラゴン州 | 723,000 |
8 | 685 | マラガ都市圏 | アンダルシア州 | 716,000 |
9 | 795 | パルマ都市圏 | バレアレス諸島州 | 621,000 |
注釈
出典
- ^ a b c d e f g “Spain”. ザ・ワールド・ファクトブック. 中央情報局(CIA) (2023年8月29日). 2023年9月1日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m 竹中, 山辺 & 周藤 2010, p. 428.
- ^ a b サンチェス・スルロ & マニェロ 1980, pp. 8–10.
- ^ a b c ヴィンセント & ストラドリング 1999, p. 15.
- ^ a b サンチェス・スルロ & マニェロ 1980, pp. 11–12.
- ^ a b 田辺 & 竹内 2014, p. 77.
- ^ a b c d e f g h サンチェス・スルロ & マニェロ 1980, pp. 58–59.
- ^ a b c サンチェス・スルロ & マニェロ 1980, pp. 60–61.
- ^ a b 竹中, 山辺 & 周藤 2010, p. 429.
- ^ a b c d e f g h i サンチェス・スルロ & マニェロ 1980, pp. 124–125.
- ^ a b 竹中, 山辺 & 周藤 2010, pp. 429–430.
- ^ 以下の都市圏範囲や人口は2015年のDemographia World Urban Areas & Population Projections(第11版)によるDemographia World Urban Areas & Population Projections 第11版(2015年版)。研究機関によって単一都市圏の範囲や人口は異なる。
- ^ a b c ヴィンセント & ストラドリング 1999, pp. 13–15.
- ^ a b サンチェス・スルロ & マニェロ 1980, pp. 20–21.
- ^ a b c d 石田 1958, pp. 287–290.
- ^ a b c サンチェス・スルロ & マニェロ 1980, pp. 24–26.
- ^ ヴィンセント & ストラドリング 1999, p. 12.
- ^ a b c d e f g 立石 2000, p. 6.
- ^ a b “Country overview and assessment: SPAIN” (PDF). 欧州連合(EU). 2017年4月1日閲覧。
- ^ “Hasta aquí llegó la riada”. ABC (2007年8月13日). 2017年4月1日閲覧。
- ^ “Diluvio en el País Valenciano”. ラ・バングアルディア (1982年10月21日). 2017年4月1日閲覧。
- ^ a b c d e f サンチェス・スルロ & マニェロ 1980, pp. 40–41.
- ^ a b 碇 2008, p. 14.
- ^ a b c d 立石 2000, p. 7.
- ^ a b c 木内 1979, pp. 214–216.
- ^ 降水量と平均流量はサンチェス・スルロ、マニェロ『スペイン』1980年, pp.11-12より。
- ^ a b ヴィンセント & ストラドリング 1999, pp. 16–17.
- ^ a b c d e f g h i j k l m 立石 2000, p. 8.
- ^ a b c d e f g h i j 池上 et al. 2001, p. 42.
- ^ 立石 2000, p. 9.
- ^ a b c サンチェス・スルロ & マニェロ 1980, pp. 36–38.
- ^ “Standard climate values for A Coruña”. スペイン気象庁(Aemet). 2015年3月7日閲覧。
- ^ “Standard climate values for Córdoba”. スペイン気象庁(Aemet). 2015年3月7日閲覧。
- ^ “Standard Climate Values, Spain”. スペイン気象庁(Aemet). 2015年3月7日閲覧。
- ^ a b c d e f サンチェス・スルロ & マニェロ 1980, pp. 14–15.
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- 2 スペインの地理の概要
- 3 自然地理
- 4 脚注
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