ガラパゴス諸島
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/24 09:30 UTC 版)
生態系
ガラパゴス諸島はいわゆる海洋島であり、大陸と陸続きになった歴史を持たない。そのような島では、在来の生物は飛来したか海を渡って漂着したものの子孫に限られる。また、多くの固有種が見られることが多い。ここの場合もそれが顕著で、大部分の生物は南アメリカ大陸に出自があるとされるが、非常に多くの固有種がある。また哺乳類と両生類を欠くなど、生物相にははっきりしたゆがみがあり、その代わりに生存する種群には適応放散が著しい。特にゾウガメがこの島の名の由来になったように、大型の爬虫類が地上の動物相で大きな役割を果たしているのが目を引く。
また、このような経過から、特異な生物相を持つ島嶼のことを「○○のガラパゴス」と呼ぶことがある。日本では琉球列島、奄美大島や小笠原諸島がそう呼ばれるが、琉球列島、奄美大島はかつて大陸や日本列島と陸続きで、そこから侵入した生物相が元になっている点、海洋島へ漂着した生物を起源とするガラパゴスのそれとは性格が異なる。したがって、その意味では小笠原をこう呼ぶ方がより理にかなっていると言えるが、南西諸島の琉球列島、奄美群島も島毎に異なる進化を遂げた固有種や亜種が多種棲息しているという点ではガラパゴス諸島と共通している。が、最近の調査ではウミイグアナとガラパゴスリクイグアナの共存関係が崩れだし、ウミイグアナとガラパゴスリクイグアナの交尾によって生まれた子供は、両方の遺伝子を持ち、ガラパゴスリクイグアナにはない鋭い爪が生えている。これをハイブリッドイグアナと呼ぶが、繁殖力はない。また前記にあるエルニーニョ現象の影響で、体長が25%も短いイグアナが発見され問題視されている。
ガラパゴス諸島には木本のキク科の植物であるスカレシア属の樹木も生えており、以下の固有種のほかに陸上にはカタツムリ、海域にはサメ、ジンベエザメ、エイ、鯨類、海鳥などが生息している[8]。1984年にユネスコの生物圏保護区に指定された[9]。
よく知られた動物種
各大陸とは隔絶された独自の進化を遂げた固有種が多く存在する。天敵になるような大型の陸棲哺乳類が存在しない。
- ガラパゴスゾウガメ - 大型のリクガメ。甲羅がドーム型のものと鞍型のものに分けられる。島ごとに多くの亜種に分かれるが、それを独立種とする説もある。おもに果実や木の実などを食べる。
- ガラパゴスペンギン - 世界で3番目に小さく、唯一の熱帯性種であるペンギン。フンボルト海流から流れる魚類を餌にしているが、近年のエルニーニョ現象により餌が減り、個体数も減少した。
- ガラパゴスリクイグアナ(Conolophus subcristatus) - サンタ・フェ島には別種サンタフェリクイグアナ(Conolophus pallidus)が生息しており[10]、その他の島には本種が生息していたが、すでに絶滅した島もある[11]。主にウチワサボテンを食べるが、移入されたヤギによって食料が奪われ、存続が危ぶまれている。
- ウミイグアナ - 海岸に生息し、海草などを食べる。
- ヨウガントカゲ - 各島に1種、全部で7種が生息する。
- ガラパゴスアシカ
- ガラパゴスオットセイ
- ガラパゴスコバネウ
- ガラパゴスペンギン
- ダーウィンフィンチ類
- ガラパゴスマネシツグミ[8]
その他の鳥類はガラパゴス諸島の野鳥一覧を参照
ダーウィンの進化論とガラパゴス諸島
チャールズ・ダーウィンが測量船ビーグル号に乗船し、進化論の着想を得ることになった航海で訪れたことは有名である。ダーウィンは航海の後半、1835年9月15日から10月20日まで滞在した。その間ビーグル号は初めて諸島の地理調査を精密に行った。当時の記録は、彼の『ビーグル号航海記』で読むことができる。英名チャタム、チャールズ、オーグマール、ジェームズなどの島々で観察した動物相は、南米での調査の経験とともに、進化論のヒントとなった。航海でもっとも印象に残ったことのひとつとして、ガラパゴス諸島の動植物が南米のものによく似ていることを挙げている。そして諸島滞在時には気づいていなかったが、イギリスに帰国後、生物の種とは当時信じられていたような不変の物ではなく、変化しうるのではないかと考えるようになった。島には彼を記念した研究所「チャールズ・ダーウィン研究所」が1964年に開設され、現在でも、野生生物の保護・調査にあたっている。
- ^ 伊藤 (1983)、12頁; (1966)、14頁
- ^ 伊藤 (1983)、9頁
- ^ 伊藤 (1983)、132-134頁
- ^ 水口 (1999)、154頁
- ^ 伊藤 (1983)、13-17頁; (1966)、15-20頁
- ^ a b 赤嶺淳「捕鯨・ナマコと国際社会 : 野生生物保護の問題点 : 「人類共有遺産」の保全をめぐる同時代史的視座」『国立民族学博物館調査報告』第97巻、国立民族学博物館、2011年3月1日、269-295頁、doi:10.15021/00000997、ISSN 1340-6787、NAID 120003057537、2022年2月3日閲覧。
- ^ “【動画】拿捕の中国船にサメ数千匹、ガラパゴス”. ナショナルジオグラフィック日本語版 (日経ナショナル ジオグラフィック社). (2017年8月21日) 2017年8月22日閲覧。
- ^ a b “Galápagos Islands” (英語). UNESCO World Heritage Centre. 2023年4月26日閲覧。
- ^ “Galapagos Biosphere Reserve, Ecuador” (英語). UNESCO (2018年9月24日). 2023年3月23日閲覧。
- ^ 藤原 (2001)、24-25頁
- ^ 藤原 (2001)、22頁
- ^ Galápagos Islands [Extension to include the Galápagos Marine Reserve] (Ecuador) - UNESCO World Heritage Centre
- ^ “List of World Heritage in Danger: World Heritage Committee inscribes the Tombs of Buganda Kings (Uganda) and removes Galapagos Islands (Ecuador)”. UNESCO World Heritage Centre (2010年7月29日). 2021年7月30日閲覧。
- ^ 伊藤 (1983)、158-159頁; (1966)、154-155頁
- ^ 藤原 (2001)、199頁
固有名詞の分類
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