カンピロバクター症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/07 07:55 UTC 版)
診断
ヒトでは糞便、ウシでは流産胎子の胃、盲腸内容物を材料として本菌の分離を行う。分離にはSkirrow培地やCCDA培地などの選択培地を使用する。ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR検査) による検出、同定も可能である。
糞便中には、非病原性のものも含め細菌が無数にいるが、症状から細菌性腸炎を疑った場合、便中に白血球がいること、カモメが翼をひろげたような形状のグラム陰性桿菌 (gull-wing shaped GNR)[14] の二点が確認できれば、臨床的にはほぼカンピロバクター感染症と診断してよい。
治療
患者の多くは自然治癒し重篤な症状に至ることは少なく、特別な治療を必要としないが、重篤化した場合稀にギラン・バレー症候群を引き起こすこともある。一方、敗血症や重篤な症状を呈した場合、対症療法と併せて抗生物質による薬物療法が必要となる。薬剤としては、マクロライド系が第一選択薬剤として推奨されている。しかし、自然耐性を示すセフェム系薬剤では、治療効果は望めない。また、ニューキノロン系に対する薬剤耐性菌が1994年頃から増加し、世界的な問題となっている[15]。
食品衛生の観点から
60℃、1分程度の加熱でほぼ不活性化されることから、十分な加熱調理と肉類に触れた器具や手指の洗浄、生食する野菜と肉類の接触防止といった二次汚染の防止処置を行えば簡単に防ぐことが出来るが、飲食店や学校の調理実習等での食中毒事例が多く発生している。冷凍や「湯引き」などの方法では不活性化出来ない。厚生労働省は食鳥処理業者に対し2006年3月に、「一般的な食鳥処理場に於ける衛生管理総括表」を作成し指導を行った。なお、日本では2012年以降飲食店での生肉や牛レバーの食用提供が法規制され、生肉食が原因となる感染の機会は減少している。鶏刺しで伝統的に鶏肉の生食を行う鹿児島県や宮崎県は独自の基準を設けている[16][17]。
関連項目
- 胃腸炎
- 家畜改良増殖施行規則
- ^ “Campylobacter infection: MedlinePlus Medical Encyclopedia” (英語). medlineplus.gov. 2019年7月20日閲覧。
- ^ 食中毒統計資料 厚生労働省
- ^ Moore, 2005Template:Citation not found
- ^ “Food Standards Agency”. food.gov.uk. 2018年4月5日閲覧。
- ^ 古茂田 恵美子1), 森田 幸雄1), 田村 真理 ほか、市販鶏ひき肉中の rcobacter,Campylobacter,Salmonella 汚染状況 『日本家政学会誌』 Vol.62 (2011) No.11 p.721-725, doi:10.11428/jhej.62.721
- ^ 微生物(第18回)・ウイルス(第11回)合同専門調査会資料 資料2-1 リスクプロファイルのまとめ 食品安全委員会
- ^ 三澤尚明、「話題の感染症 カンピロバクター感染症 (PDF) 」 モダンメディア 2005年3月号(第51巻3号)
- ^ 京都市と畜場における牛の胆汁及び肝臓のカンピロバクター汚染実態調査 京都市保健福祉局
- ^ ンピロバクターについて (ファクトシート) 厚生労働省検疫所 FORTH
- ^ カンピロバクター食中毒 愛知県衛生研究所
- ^ カンピロバクター感染症について 横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課
- ^ Townes JM, et al. Ann Rheum Dis.2008;67:1689-6.
- ^ Nachamkin I, et al. Clin Microbiol Rev.1998;11:555.
- ^ メリーランド大学の病原微生物学テキスト
- ^ カンピロバクター感染症 国立感染症研究所 感染症の話 2001年第6週
- ^ 生食用食鳥肉等の安全確保について鹿児島県2018年12月13日付
- ^ 生食用食肉の取扱いについて宮崎県2017年3月30日付
固有名詞の分類
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