ウガンダ 経済

ウガンダ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 13:46 UTC 版)

経済

首都カンパラの高層ビル

広大で肥沃な土地、豊富な降雨、鉱物資源に恵まれ、大きな開発ポテンシャルを持つが、これまでの政治的不安定と誤った経済運営で、ウガンダは世界最貧国として開発から取り残された。アミン統治の混乱後、1981年に経済回復計画で外国支援を受け始めたが、1984年以降の金融拡大政策と市民闘争の勃発が回復を遅らせた。1986年に経済再生を掲げた政府は交通と通信の再構築を始めた。1987年に外部支援の必要性からIMFと世界銀行に対し政策を明言した。この政策は実行され、インフレは2003年の7.3%まで着実に減少した。

農業ではアフリカでも有数のコーヒー生産国で、2002年の輸出額の27%を占める。ウガンダのコーヒーはプランテーション方式で生産されるのではなく、土着の小農民が生産し、その生産物を買い付け業者が買い、輸出するという方式である[17]。かつては綿花が最も有力な産品であり、第二次世界大戦前は日本の商社も多く買い付けに訪れたほどであったが、1970年ごろを境として衰退し、輸出品としてほとんど重要性を持たなくなった[18]。ほかに輸出品として衣料、動物の皮、バニラ野菜果物、切花、が成長しており、タバコも依然重要な産品である。

農業生産としてはバナナの生産量が非常に多く、なかでも料理用バナナは世界でも突出した最大の生産国である。料理用バナナの生産量は2009年には951万トンを記録したが、これは世界の料理用バナナ生産量の4分の1を占める[19]。さらに果物バナナも含めた総生産量は2008年に約1000万トンとなり、インドに次ぐ世界2位の生産量となっている。ただしこのほとんどは国内で消費され、輸出はほとんど行われない[20]。ウガンダのバナナは、主食用のハイランド・バナナ、軽食用のプランテン・バナナ、果物バナナの3種類に大別され、ハイランド・バナナの生産量が最も大きく文化的にも重要である[21]

工業はセメントなど再生中である。プラスチック、石けん、ビールなど飲料は国内生産されている。Tororoセメント社などは東アフリカ諸国の需要に応えている。

ウガンダの交通は、主としてカンパラから伸びる道路網が約3万km、うち舗装が2800km。鉄道は1350kmで、インド洋に面したケニアのモンバサからトロロまで、さらにカンパラ、ムバレなどへの支線がある。国際空港はビクトリア湖に面したエンテベ空港で、カンパラから32kmである。

通信はウガンダ通信委員会(UCC)が管理する。

エネルギー

ナルバーレ水力発電所

1980年代までは国内エネルギー需要の95%は木炭と木材で賄われていた。商業需要の23%が石油製品により、わずか3%が電力に頼っていた。政府は薪ストーブ使用を奨励したが普及に至らなかった。現在改善されたとは言え、数時間に及ぶ停電が、とくに農村部で頻発する。

白ナイル川を利用した電力開発は遅れていたが、2000年のナルバーレ発電所による380メガワット供給開始で、東アフリカでも主要発電国となった。ブジャガリ滝での発電計画は環境破壊が指摘され、世界銀行も2002年に支援中止した。下流のカルマ滝発電所も、この影響で建設開始が遅れている。

ウガンダは国内石油需要日量27千バレル(2015年)の全量をケニアのモンバサ港を介して運ばれる輸入品に頼っている。石油製品パイプラインはケニアのエルドレットまで延びており、その先はトラック輸送である。カンパラまで320kmのパイプライン延伸を調査することで両国が1995年に合意した。しかし、2006年イギリスの石油会社(ヘリテージ・オイル社)によりアルバート湖付近で油田が発見されたことにより、ウガンダからインド洋への原油パイプライン建設計画が石油会社から出された。大統領は原油輸出に反対で、カンパラに製油所を建設し、近隣諸国への石油製品輸出を見込んでいる。一方、2007年8月アルバート湖での石油探査作業中に、コンゴ民主共和国軍からヘリテージ・オイル社が攻撃を受け交戦状態になり、死者が出ると共にウガンダ兵が拘束されるという事件が発生した。両国はアルバート湖の国境、とくにルクワンジ島の領有を巡って協議している。


  1. ^ THE CONSTITUTION (AMENDMENT)ACT, 2005(ウガンダ2005年憲法)
  2. ^ a b UNdata”. 国連. 2021年10月10日閲覧。
  3. ^ a b c d e IMF Data and Statistics 2021年10月17日閲覧([1]
  4. ^ THE UGANDA NATIONAL FLAG AND MEANING(在プレトリアウガンダ高等弁務官事務所公式サイト、英語)
  5. ^ 関谷雄一、「東アフリカにおける南アジア系移民」『青山学院女子短期大学総合文化研究所年報』 17巻 p.141-165, 2010-03, ISSN 0919-5939
  6. ^ 吉田昌夫「独立達成までの混乱」/ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 69ページ
  7. ^ 吉田昌夫「独立後の政治混乱の時代」/ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 77ページ
  8. ^ 吉田昌夫「ムセベニ政権による政治 安定化と経済復興への道のり」/ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 80-81ページ
  9. ^ 吉田昌夫「ムセベニ政権による政治 安定化と経済復興への道のり」/ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 81-82ページ
  10. ^ 中林伸浩「王様と大統領」/ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 269-273ページ
  11. ^ 斎藤文彦「地方行政と開発」/ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 93-94ページ
  12. ^ 外務省 ウガンダ基礎データ
  13. ^ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 18ページ
  14. ^ 斎藤文彦「地方行政と開発」/ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 95ページ
  15. ^ Districts in Uganda”. ウガンダ地方自治省. 2020年10月1日閲覧。
  16. ^ Number of districts hits 136-mark as Parliament approves creation of Terego District”. PML Daily (2020年5月5日). 2020年10月1日閲覧。
  17. ^ 吉田昌夫「小農輸出経済の形成」/ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 99ページ
  18. ^ 吉田昌夫「小農輸出経済の形成」/ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 99-101ページ
  19. ^ FAOSTAT: ProdSTAT: Crops”. 国際連合食糧農業機関 (2005年). 2012年6月23日閲覧。
  20. ^ 佐藤靖明「人とバナナの豊かな関係」/ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 114ページ
  21. ^ 佐藤靖明「人とバナナの豊かな関係」/ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 116-118ページ
  22. ^ 白石壮一郎「多民族国家の民族分布」/ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 42ページ
  23. ^ 「アフリカのことばと社会 多言語状況を生きるということ」pp352-354 梶茂樹+砂野幸稔編著 三元社 2009年4月30日初版第1刷
  24. ^ What’s in a name… after marriage?, The Observer, July 17, 2015.
  25. ^ 吉田昌夫「ウガンダの教会」/ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 171ページ
  26. ^ Община — новая, вера — старая «Община» 2020年02月02日
  27. ^ a b c d Из России с верой: появление старообрядчества в Уганде как отражение культурных процессов в современной Африке
  28. ^ 富と権力求め子どもをいけにえに、ウガンダで横行する呪術殺人 APF日本語版 2015年06月19日 13:50
  29. ^ 選挙と呪術、タンザニアでおびえ暮らすアルビノの人々 APF日本語版 2015年05月01日 17:02
  30. ^ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 15ページ
  31. ^ 楠和樹「村の学校から」/ 吉田昌夫・白石壮一郎編著『ウガンダを知るための53章』 明石書店 2012年 156-157ページ
  32. ^ 国際アグリバイオ事業団(ISAAA)アグリバイオ最新情報【2012年8月31日】”. 日経バイオテクオンライン (2012年9月13日). 2018年4月13日閲覧。
  33. ^ “ウガンダで女性のミニスカ着用禁止法可決”. nikkansports.com (日刊スポーツ新聞社). (2013年12月21日). オリジナルの2013年12月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131224074218/http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp1-20131221-1234290.html 2022年10月7日閲覧。 
  34. ^ テロ・誘拐情勢 誘拐事件の発生状況 日本国外務省海外安全ホームページ(2016年1月26日)2017年12月9日閲覧






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