ウェルズ・ファーゴ バークレイズ支店買収まで

ウェルズ・ファーゴ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/23 10:02 UTC 版)

バークレイズ支店買収まで

管理通貨制度へ世界が落ち着きだした1973年、ウェルズ・ファーゴは多くの点で政策を転換した。5年後CEOとなるカール(Carl E. Reichardt)が不動産リース業の現場をてこ入れした。海外事業としては西ドイツの有名な銀行(Allgemeine Deutsche Credit-Anstalt, 現ラボバンク)の株式を25%も保有していたが、しかしこの銀行は不動産を担保とする不良債権を抱えたので、この処理にあたりウェルズ・ファーゴに損害が出た。国内銀行と合弁でロンドンに出した西部銀行も、オイルショックに耐えられずだめになった。ウェルズ・ファーゴは外為取引でも失敗した。[4]

1984年にポール・ヘイズン(Paul Hazen)が社長となった。2年経ってカールはフォードモーターの重役となった。この1986年にウェルズ・ファーゴはミッドランド銀行(Midland Bank, 現HSBC)からクロッカー(Crocker National Bank)を11億ドルで買収した。これでウェルズ・ファーゴの不動産事業は水を得た魚となったが、一方でブラジルメキシコの債権が焦げつき、1989年半ばまで不良債権処理に追われた。[4]

1988年5月、バークレイズのカリフォルニア支店を買収した。ウェルズ・ファーゴは証券化を推進した。

揺れる保守本流

1995年にアメリカン・エキスプレスとの合併協議をはじめ、決済事業に力を入れだした。同年にウェルズ・ファーゴ・日興・インベストメント・アドバイザーズをバークレイズへ4.4億ドルで売却し、アメデオ(Amadeo Giannini)のFIB(First Interstate Bancorp)を買収した。1998年ミネアポリス地盤のノーウェストNorwest Corporation)が旧ウェルズ・ファーゴ(Wells, Fargo & Co.)を買収して発足した。そしてノーウェストのリチャード(Richard Kovacevich)が社長となった。企業の合併買収としては珍しく、商号も本部機能も被買収企業のものが引き継がれている。これは、設立以来の150年近い歴史で培われた旧ウェルズ・ファーゴのブランドを活かすためのものである。2000年、ウェルズ・ファーゴがナショナル・バンク・オブ・アラスカ(National Bank of Alaska)を買収した。2003年、経営危機にあったストロング・フィナンシャル・コーポレーションが運用していた290億ドルの受託資産を買い叩き、ウェルズ・ファーゴのミューチュアル・ファンドは受託資産額が1千億を超えた[4]

2008年、米銀大手ワコビア(総資産5207億ドル)を約151億ドル(約1兆6000億円)で合併した。ワコビアの名前で売っていた証券部門は2009年ウェルズ・ファーゴ証券に改称した。世界金融危機のあと、マスターカードをめぐり欧米領域で反トラスト法違反容疑の調査がすすんだ。2011年12月、賄賂事件(2009 Bank of Ireland robbery)から続くアイルランド銀行解体に参加し(2014年から欧州中央銀行が統制権を行使)、およそ10億ドルの負債を抱えた事業の受け皿となった(Burdale Financial Holdings Limited and the portfolio of Burdale Capital Finance Inc.)。2012年こっそりマーリン証券(Merlin Securities LLC)を買収したことで、ヘッジファンドおよびその他のアセット・マネジメントへ進出した[4]。後の調査でアイルランドは世界第4位のシャドー・バンキング・システム保有国であることが分かった[5][6]。ウェルズ・ファーゴの資金がシャドーバンクの救済に向かったことになる。

2016年9月8日、自社で顧客の許可のないまま口座を開設したりクレジットカードを発行したりする行為が横行していたと明らかにし、この問題で過去数年の間に5300人の行員を解雇したと認めた[7]。この問題はCEOの辞任にまで発展、継続してきた金融機関としての時価総額世界一が途切れることになった[8]。2016年で顧客に無断で口座を開くなどの大規模な不正営業が発覚したのをきっかけに、顧客が自動車ローンを組む際、保険に二重に加入させていた問題や、住宅ローンの金利固定期間の延長で手数料を不正に徴収していたことなどが発覚し、罰金10億ドルを科された[9]

国際展開

香港ロンドンドバイシンガポール東京トロントに海外拠点を有しており、銀行業務を提供している[10][11]。また、インドフィリピンにおいて、後方業務拠点を有しており、2万人以上のスタッフを擁している[12]

ケイマン諸島にて信託銀行業務を行っていた子会社は、2010年にヘッジファンド管理を行うCitco英語版に売却した[13]


注釈

  1. ^ 2005年時点で、営業網は6,250店舗、顧客は2,300万人を数える。店舗は目下整理中であり、支店数が第二位のJPモルガン・チェースに近づきつつある。

出典

  1. ^ ウェルズ・ファーゴの主要株主
  2. ^ “世界の巨大銀行トップ28 —— 資産1兆ドル以上”. Business Insider Japan. https://www.businessinsider.jp/post-168166 2019年7月27日閲覧。 
  3. ^ “米バークシャー、Wファーゴ株ほぼ全て売却 1989年から投資”. ロイター. https://jp.reuters.com/article/berkshire-buffett-wells-fargo-idJPKCN2CY2LG 2021年10月2日閲覧。 
  4. ^ a b c d e f g International Directory of Company Histories, Vol.189.
  5. ^ Irish Times, Ireland is world’s fourth-largest shadow banking hub, Wed, May 10, 2017
  6. ^ FSB, "Global Shadow Banking Monitoring Report 2016", p.48, 10 May 2017
  7. ^ CNN 米ウェルズ・ファーゴ、5300人懲戒解雇 不正口座開設で 2016/9/9
  8. ^ 米ウェルズF、銀行時価総額で世界一から転落 - JPモルガンが奪還”. ブルームバーグ (2016年9月14日). 2016年11月3日閲覧。
  9. ^ 米金融当局、米ウェルズに罰金1000億円 不正営業で 日本経済新聞 2018年4月21日
  10. ^ International Locations and Contacts – Wells Fargo Commercial”. 2050年10月1日閲覧。
  11. ^ Glazer, Emily (2015年4月13日). “A Look at Wells Fargo's Overseas Expansion”. https://blogs.wsj.com/moneybeat/2015/04/13/a-look-at-wells-fargos-overseas-expansion/ 
  12. ^ “Why US banking giant Wells Fargo is creating back-office jobs in India”. ファーストポスト. (2012年6月22日). https://www.firstpost.com/world/why-us-banking-giant-wells-fargo-is-creating-back-office-jobs-in-india-353273.html 
  13. ^ Pfeuti, Elizabeth (2010年11月23日). “Fund administration giant buys Cayman rival; Asset managers are returning to the offshore domicile after retreating in the aftermath of the Crisis”. Financial News. https://www.fnlondon.com/articles/citco-cayman-acquisition-20101123 
  14. ^ Deadwood Stage (Whip Crack Away, Calamity Jane) Lyrics”. lyricsfreak.com. 2023年7月12日閲覧。


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