お吉泉 オキチモズク

お吉泉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 08:13 UTC 版)

オキチモズク

1938年昭和13年)、松山高校の教師であった八木繁一によって、この泉から流れ出る水路からベニモズク科に属する紅藻類が採取され、後に日本固有の新種であることがわかってオキチモズクNemalionopsis tortuosa)と名付けられた[3][7][14][15]オキチモズクは、薄紅褐色で何本にも枝分かれした糸状の粘りのあるであり、全長は長いもので30〜50センチメートル[7][14]、まれに90センチメートルを超える[16]。この泉から下流400メートルの間の、堤防の茂みや重信川の川底をくぐる暗渠によって日陰となっているところで発生し、多くのオキチモズクが水にたなびく様子は、伝説のお吉の髪をしのばせたと伝えられている[1][7]

1944年昭和19年)9月29日にはお吉泉周辺が「オキチモズク発生地」として国の天然記念物に指定されたが[5][14][15]、環境の変化により1973年昭和48年)から1974年昭和49年)頃以降発生が見られなくなり、お吉泉ではほとんど絶滅したものとも考えられていた[1][2][4][5][11][14]。しかし、その後、日照調整や流路改修などの保護対策によって2001年平成13年)頃から再び発生が確認されている[4][14]

現在、オキチモズクは、環境省レッドデータブックで「絶滅の危機に瀕している種」に指定されている[4][15]。また、2016年平成28年)には、お吉泉周辺が「お吉泉と周辺水路」として環境省により「生物多様性の観点から重要度の高い湿地」(重要湿地)に選定されている[12]


  1. ^ a b c d e f g h i j k 愛媛新聞社愛媛県百科大事典編集委員室編集 『愛媛県百科大事典 上巻』 愛媛新聞社1985年、p. 237
  2. ^ a b c d e f g h i j k 「角川日本地名大辞典」編纂委員会編纂 『角川日本地名大辞典 38 愛媛県』 角川書店1991年、p. 177
  3. ^ a b c d e f g h i 下中邦彦編集 『日本歴史地名大系第39巻 愛媛県の地名』 株式会社平凡社1980年、p. 336
  4. ^ a b c d e 環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編集 『レッドデータブック2014 -日本の絶滅の恐れのある野生生物- 9 植物Ⅱ(蘚苔類・藻類・地衣類・菌類)』 株式会社ぎょうせい2015年、p. 294
  5. ^ a b c d 加藤睦奥雄・沼田眞・渡部景隆・畑正憲監修 『日本の天然記念物』 株式会社講談社1995年、p. 611
  6. ^ 水産庁編集 『日本の希少な野生水生生物に関するデータブック』 社団法人日本水産資源保護協会、2000年、p. 319
  7. ^ a b c d 『川内町誌』 川内町1961年、p. 124
  8. ^ a b 『川内町誌』 川内町1961年、p. 97
  9. ^ a b c 下中邦彦編集 『日本歴史地名大系第39巻 愛媛県の地名』 株式会社平凡社1980年、p. 330
  10. ^ a b c d e f g h 『川内町誌』 川内町1961年、p. 275
  11. ^ a b オキチモズク発生地 文化遺産オンライン - 文化庁
  12. ^ a b 「重要湿地」 No.430 お吉泉と周辺水路 生物多様性の観点から重要度の高い湿地 - 環境省
  13. ^ a b 八木繁一・米田勇一「淡水産紅藻の一新種オキチモヅクに就きて」『植物分類・地理』第9巻第2号、植物分類地理学会、1940年、82頁。
  14. ^ a b c d e タイプ産地(愛媛県東温市お吉泉)におけるオキチモズクの発生状況(小林真吾) 学芸員のおもしろ実験&研究 - 愛媛県総合科学博物館
  15. ^ a b c オキチモズクを追いかけて(小林真吾) 「博物館だよりNo.49」研究ノート - 愛媛県総合科学博物館
  16. ^ 稲留陽尉・山本智子「出水平野で確認されたオキチモズク(Nemalionopsis tortuosa)の生育状況」『Nature of Kagoshima』第39号、鹿児島県自然愛護協会、2013年、163頁。


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