ヘルムホルツ‐の‐じゆうエネルギー〔‐ジイウ‐〕【ヘルムホルツの自由エネルギー】
読み方:へるむほるつのじゆうえねるぎー
ヘルムホルツの自由エネルギー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/28 13:53 UTC 版)
ヘルムホルツの自由エネルギー(英語: Helmholtz free energy)は、等温条件の下で仕事として取り出し可能なエネルギーを表す示量性状態量である。
なお、IUPACでは「自由」を付けずにヘルムホルツエネルギー(英語: Helmholtz energy)とすることが推奨されている[1]。記号 F や A で表されることが多い。ヘルマン・フォン・ヘルムホルツに由来する。
定義
内部エネルギー U、熱力学温度 T、エントロピー S として、ヘルムホルツエネルギーは
で定義される。
完全な熱力学関数
熱力学温度 T、体積 V、物質量 N の関数として表されたヘルムホルツエネルギー F(T,V,N) は完全な熱力学関数となる。 このように見たとき、定義式は完全な熱力学関数としての内部エネルギー U(S,V,N) の S に関するルジャンドル変換
と見ることができる。
ヘルムホルツエネルギー F(T,V,N) の各変数による偏微分は
で与えられる。 ここで、p は圧力、μi は成分 i の化学ポテンシャルを表す。Nj は成分i以外の成分jの物質量である。 従って、全微分は
となる。系のスケール変換を考えると
の関係が得られる。
等温過程
温度 Tex の環境にある系が、ある平衡状態から別の平衡状態へ変化する過程を考える。熱力学第二法則により、系が外部から受け取る熱 Q には上限が存在する。
この不等式とエネルギー保存則から、系が外部に為す仕事 W にも上限が存在する。
等温条件下では変化の前後で系の温度は外界の温度と等しく T=Tex なので、ヘルムホルツエネルギーの定義から
となり、不等式
が成り立つ。この場合の仕事 W は膨張仕事および非膨張仕事のすべてを含んでいる。 すなわち、温度 Tex の環境にある系が状態 X0 から X1 へと変化する間に外部に為す仕事 W には上限 Wmax が存在する。
この Wmax はヘルムホルツエネルギーを用いると
と表され、変化の前後でのヘルムホルツエネルギーの減少量が等温条件において取り出し可能な仕事量である。 等温条件下で外部に一切の仕事を行わない場合、とくに、等温等積で非膨張仕事も行わない場合は
となり、自発変化はヘルムホルツエネルギーが減少する方向へ進む。 また熱力学的平衡条件はヘルムホルツエネルギーが極小値をとることである。
統計力学との関係
統計力学において、ヘルムホルツエネルギーはカノニカル分布の規格化因子である分配関数 Z(β) を用いて、
脚注
- ^ IUPAC Gold Book
- ^ 田崎 『統計力学Ⅰ』p.123
参考文献
- 田崎晴明『統計力学Ⅰ』培風館〈新物理学シリーズ〉、2008年。ISBN 978-4-563-02437-6。
関連項目
外部リンク
- “IUPAC Gold Book - Helmholtz energy (function)”. 2015年1月24日閲覧。
ヘルムホルツの自由エネルギー
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「自由エネルギー」の記事における「ヘルムホルツの自由エネルギー」の解説
ヘルムホルツの自由エネルギー(英語: Helmholtz free energy)は、等温条件の下で仕事として取り出し可能なエネルギーを表す示量性状態量である。なお、IUPACでは「自由」を付けずにヘルムホルツエネルギー(英語: Helmholtz energy)とすることが推奨されている。記号 F や A で表されることが多い。 内部エネルギー U、熱力学温度 T、エントロピー S として、ヘルムホルツエネルギーは F = U − T S {\displaystyle F=U-TS} で定義される。
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