S/2002_N_5とは? わかりやすく解説

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S/2002 N 5

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 15:40 UTC 版)

S/2002 N 5
2022年9月3日超大型望遠鏡VLTによって観測された S/2002 N 5 の画像
仮符号・別名 c02N4[1]
見かけの等級 (mv) 25.9(平均)[2]
分類 海王星の衛星
不規則衛星
軌道の種類 サオ群[3]
発見
初観測日 2002年8月14日[4]
発見公表日 2024年2月23日[4]
発見者 マシュー・J・ホルマン[4][5]
ジョン・J・カヴェラーズ[4][5]
Tommy Grav[4][5]
Wesley Fraser[4][5]
発見場所 セロ・トロロ汎米天文台[4]
 チリコキンボ州
軌道要素と性質
元期:JD 2,460,400.5(2024年3月31.0日[4]
軌道長半径 (a) 0.1562 au[4]
(23,367,200 km
近海点距離 (q) 0.0706 au
(10,569,000 km)
遠海点距離 (Q) 0.2418 au
(36,165,400 km)
離心率 (e) 0.5477[4]
公転周期 (P) 3141.26 [4](8.60 [4]
軌道傾斜角 (i) 42.133°黄道面に対して)[4]
近点引数 (ω) 62.730°[4]
昇交点黄経 (Ω) 274.151°[4]
海王星の衛星
物理的性質
直径 約 23 km[2][3]
24 - 38 km[注 1]
絶対等級 (H) 11.2[4]
Template (ノート 解説) ■Project

S/2002 N 5 は、海王星公転している衛星の一つである。2002年8月14日マシュー・J・ホルマンジョン・J・カヴェラーズ、Tommy Grav、Wesley Fraser がチリセロ・トロロ汎米天文台で行った観測で初めて発見されるも[5]2021年9月3日スコット・S・シェパードが再発見するまで見失われていた衛星である。軌道を確定するために十分な期間に渡って観測をして情報を収集した後、2024年2月23日に発見が公表された[4]。海王星からの軌道長半径は約2300万 km で、軌道を一周するのに約8年半を要する。

発見

S/2002 N 5 は、2002年8月14日チリセロ・トロロ汎米天文台にある口径 4.0 m のビクター M. ブランコ望遠鏡英語版を使った海王星の不規則衛星の探索中に、マシュー・J・ホルマンとその共同研究者らによって初めて観測された[4]。ホルマンらはシフト・アンド・アッド法 (shift-and-add technique) と呼ばれる方法を用いることで微かな S/2002 N 5 からの光を検出することに成功した。この技術では、望遠鏡を用いて長時間露光した画像を多数撮影し、それらを主惑星の動きに追従するように位置を合を合わせ、これらの画像を全て加算して単一の画像を生成させれば、線状に写る遠方の恒星銀河に対して、主惑星と同じような動きをしている衛星からの微かな光点が見えるようになる[1][3][7]。発見時にはこの衛星に c02N4 という暫定的な名称が割り当てられ、同時にホルマンらがこの観測で新たに発見したハリメデサオラオメデイアネソを含む5個の衛星の中で最も暗い衛星の一つであった[1][注 2]。このうち、固有名が後に与えられる4個は再観測に成功し、その後に正式に発見が公表されたが、c02N4 は同年9月3日ヨーロッパ南天天文台 (ESO) にある口径 8.2 m の超大型望遠鏡VLTによって1回だけ再観測されたが、c02N4 を再観測するさらなる試みは失敗に終わった[1][4]。観測データが非常に少なかったため、c02N4 の軌道は確認できず、見失われた衛星となった[1][3]

S/2002 N 5 は、2002年9月のホルマンらのチームによる最後の観測以来、19年間に渡って観測されることがなかった[4]。しかし、2021年9月3日にスコット・S・シェパードがチリのラス・カンパナス天文台にある口径 6.5 m のマゼラン望遠鏡を用いた海王星の不規則衛星の探索中に c02N4 が再発見された[4][3]。ホルマンらのチームと同様に、シェパードはシフト・アンド・アッド法を用いることで c02N4 を検出した[3]。2021年9月から2023年11月にかけて、シェパードと彼の共同研究者である David J. Tholenチャドウィック・トルヒージョ、および Patryk S. Lykawka は、c02N4 の軌道を決定して再び見失われないことを保証するためにマゼラン望遠鏡とハワイ島マウナ・ケア山にある口径 8.2 m のすばる望遠鏡からフォローアップ観測を実施した[3][4]。シェパードらによるフォローアップ観測の終了後、得られた観測結果はホルマンらによる2002年の観測データと結びつけることができた[3]。その後、シェパードらのチームによって新たに発見された別の海王星の不規則衛星である S/2021 N 1 と併せて、小惑星センター (MPC) が2024年2月23日に公開した小惑星電子回報 (MPEC) にて発見が公表され、S/2002 N 5 という仮符号が割り当てられた[4]。これにより、海王星の衛星の総数は14個から16個となった[7]。発見が報告されたのは2024年であるが、2002年に撮影された画像に初めて写っていたため、仮符号には 2002 が付されている。

軌道

横軸を主惑星からの軌道長半径、縦軸を軌道の軌道傾斜角とした際の木星(赤)、土星(黄緑)、天王星(マゼンダ)、海王星(青)の不規則衛星の分布を示したグラフ。横軸の軌道長半径は主惑星のヒル半径に対する割合を、縦軸の軌道傾斜角は黄道面に対する傾きを示している。衛星の相対的な大きさはプロットされている図形の大きさで表している。このグラフから、海王星の不規則衛星はネソ群とサオ群の2つのグループに分けられる。データは2024年2月時点のもの。

海王星から遠くにあり、黄道面に対して傾斜し扁平した楕円軌道を描いている S/2002 N 5 は不規則衛星に分類される。海王星の自転と同じ方向に公転している順行衛星である[2]。不規則衛星は主惑星からの距離が遠く、主惑星との重力による束縛が緩いため、その軌道は太陽や他の惑星の重力によって頻繁に乱される(摂動)ことが知られている[8]。代わりに固有軌道要素英語版(または平均軌道要素)は長期間に渡って摂動を受けている軌道を平均化し、短期間における軌道の変化の影響を除いて計算されるため、不規則衛星の長期的な軌道をより正確に表すのに用いられる[8][9]

S/2002 N 5 の固有軌道要素はまだ計算されていない[10]。それでも、特定の日時のみを元期として計算される接触軌道要素から求められる、ケプラーの法則に基づく楕円軌道でも S/2002 N 5 の本来の長期的な軌道要素を近似するのには用いることができる。2024年3月31日を元期とした際の S/2002 N 5 の海王星からの軌道長半径は約2340万 km となる。地球上において約8.6年かけて海王星の周りを公転しており、軌道の離心率は約 0.55 で、黄道面に対する軌道傾斜角は約42となっている[4]

S/2002 N 5 はラオメデイアとサオと共に、海王星から遠く離れた順行軌道を公転している不規則衛星のグループである「サオ群 (Sao group)」を構成する一員であるとされている。サオ群に属する衛星は、海王星からの軌道長半径が 2200万 km から 2400万 km、軌道の離心率が 0.3 から 0.5 、軌道傾斜角が30度から50度の範囲内に収まる軌道要素を持つ[2]。他の全ての不規則衛星のグループと同様に、サオ群は海王星が形成された後に外部から海王星の重力に捉えられて公転していたさらに大きな衛星が小惑星彗星との衝突によって破壊されたことによって形成されたと考えられており、衝突で生じて飛散した多くの破片が海王星の周りを元々存在していた衛星と同じような軌道を描いて公転しているものであるとされている[3][7]

物理的特徴

S/2002 N 5 は非常に暗く、地球から見た見かけの明るさの平均は25.9等級であり[2]、地球上からはすばる望遠鏡のような最大級の口径を持つ望遠鏡でのみ観測することができる[11]。ほとんどの不規則衛星に対して用いられる典型的な幾何学的アルベドの値である 0.04 - 0.10[12] を用いると、S/2002 N 5 の直径は 24 - 38 km となる[注 1]。一方でシェパードは S/2002 N 5 の直径を約 23 km と推定している[2][3]。この直径の場合、S/2002 N 5 は同時に発見が公表された S/2021 N 1 の約 14 km に次いで、海王星を公転していることが知られている衛星の中では2番目に小さいことになる[2][3]

脚注

注釈

  1. ^ a b
不規則衛星 (8)
関連項目: 海王星のトロヤ群海王星の環太陽系の衛星の一覧



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