Internet2とは? わかりやすく解説

Internet2

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/16 05:48 UTC 版)

Internet2(インターネット2)とは、アメリカ合衆国の最先端ネットワーキングコンソーシアムであり、研究教育コミュニティ企業政府機関などがメンバーとして参加している[1]。正確な表記は"the Internet"。

概要

2018年現在 Internet2 には、331の高等教育機関、65の企業、43の研究教育ネットワーク、60の提携会員や接続業者が参加している[2]

運営している Internet2 ネットワーク[3]は次世代 Internet Protocol光ファイバーネットワークからなり、研究・教育で必要とされる高性能なネットワークサービスを提供し、セキュアなネットワーク評価・研究環境を提供する。2007年後半、最新の dynamic circuit network である Internet2 DCN の運用を開始。ユーザ毎の広帯域データ回線を光ファイバーネットワーク上に割り当てる最先端技術である。

地域のネットワークや接続業者を通してアメリカ国内の6万を越える教育・研究・政府機関や重要組織が接続しており、小中学校から大学、公立図書館、博物館、医療機関などが含まれる[4]

Internet2コミュニティは単一組織の範囲を超えて新たなネットワーク技術の開発・展開に貢献しており、インターネットの未来にとって重要な役割を担っている。その技術には、大規模ネットワークの性能測定・管理ツール[5]、単純でセキュアなアイデンティティ管理とアクセス管理のツール[6]、要求に応じた広帯域・高性能の仮想回線の生成とスケジューリングなどの高度な機能[7]が含まれる。

Internet2はオープンな管理の構造とプロセスを持ち、会員主導で運営されている[8]。会員はいくつかの諮問委員会に加わり[9]、様々な作業部会やSIGで協働し[10]、春と秋に開催される会議に参加し[11]、戦略的計画策定に参加することを促されている[12]

2016年、中国科学技術大学において人工衛星と地上間のおよそ1,200キロを量子で通信することに成功している[13]

歴史

インターネットが広く認知され使われるようになると、相互に協力している研究者間でのデータ転送の要求が大きくなり、まず大学でさらなる高性能なネットワークを求める声が上がった。例えば、データマイニング医用画像処理素粒子物理学などの用途で高性能を求められた。それに応えて、1995年、アメリカ国立科学財団 (NSF) とMCIvBNS英語版 (Very high-speed Backbone Network Service) を構築。これは主に教育機関とスーパーコンピュータを繋ぐためのものだった。そして、「次世代インターネット」という概念が生まれる。NSFの契約が切れると、vBNSは主に政府機関にサービスを提供するようになる。結果として、研究・教育コミュニティは独自のネットワークのニーズを満たすべく Internet2 に資金を出すことになった。

Internet2 プロジェクトは1996年、EDUCOM(後のEDUCAUSE)の後援の下で34の大学の研究者らによって始まった。正式な組織は1997年、University Corporation for Advanced Internet Development (UCAID) という非営利団体として発足。その後名称を Internet2 に変更し、"Internet2" を登録商標とした[14]。本部はミシガン州アナーバーにあり、ワシントンD.C.にもオフィスがある[15]

1998年、クエスト英語版と提携し最初のInternet2ネットワークであるアビリン・ネットワークを構築。また、Internet2コミュニティとしてナショナル・ラムダレール英語版 (NLR) プロジェクトの主要出資者となった[16]。2004年から2006年にかけて、Internet2 と NLR は合併の可能性について幅広い議論をおこなった[17]。この話し合いは2006年春に一旦打ち切られ、2007年3月に再開されたものの、見解の相違を埋められず2007年秋には最終的に打ち切られた[18]

2006年、Level 3 Communicationsとの提携を発表し、新たな全国規模のネットワークを構築し、通信容量を10Gbit/sから100Gbit/sに拡大するとした[19]。2007年10月、アビリン・ネットワークを正式に退役とし、新たな大容量ネットワークを Internet2 ネットワークと呼んでいる。

2023年現在、通信容量は30.4Tb/sである[20]

目的

Internet2は米国の研究教育コミュニティに対して、帯域幅要求を満たすネットワークを提供している。そのネットワークは、動的かつ頑強な光ファイバーによるパケット網である。バックボーンは30.4Tb/sで、320以上の教育機関、70以上の企業、65以上の非営利団体や政府機関が100Gbps以上で接続しており[21]、最大800Gbpsのシングルキャリアリンクが用意されている[22]

Internet2 コンソーシアムの掲げている目的は次の通り。

  • 最先端ネットワークの開発・運用
  • 新世代アプリケーションの使用を通して、ブロードバンド接続の能力を十分に利用する。
  • 新しいネットワークサービスとその応用を教育のあらゆるレベルにもたらし、最終的にインターネット・コミュニティ全体に恩恵をもたらす。

このネットワークの用途は、協働的応用、分散研究実験、グリッドベースのデータ解析などから、ソーシャルネットワーキングまで幅広い。応用の一部は商用利用されているものもあり、例えば IPv6、オープンソースのセキュアなネットワーク接続用ミドルウェア、レイヤ2VPNdynamic circuit network などがある。

応用賞

IDEA (Internet2 Driving Exemplary Applications) 賞は Internet2 が2006年から始めた賞で、先進的なネットワーク応用を表彰するものである[23]。審査には多くの大学が参加し、以下の基準で行う。

  • (現在の)利用者にとっての肯定的影響の大きさ
  • 技術的長所
  • 潜在的利用者数も考慮した影響の大きさ

受賞者は毎年春の会議で発表されている。

関連項目

脚注・出典

  1. ^ About Internet2”. 2009年6月26日閲覧。
  2. ^ Communities & Groups”. 2018年7月10日閲覧。
  3. ^ Internet2 Network”. 2009年6月26日閲覧。
  4. ^ Internet2 K20 Connectivity Data”. 2009年6月26日閲覧。
  5. ^ Internet2 Performance Initiative”. 2009年6月26日閲覧。
  6. ^ Internet2 Security Directory and Related Links”. 2009年6月26日閲覧。
  7. ^ Internet2 Dynamic Circuit Network”. 2009年6月26日閲覧。
  8. ^ Internet2 Governance”. 2009年6月26日閲覧。
  9. ^ Internet2 Advisory Councils”. 2009年6月26日閲覧。
  10. ^ Internet2 Working Groups, SIGs, and Advisory Groups”. 2009年6月26日閲覧。
  11. ^ Internet2 Member Meetings”. 2009年6月26日閲覧。
  12. ^ Internet2 Strategic Planning”. 2009年6月26日閲覧。
  13. ^ 人民日報ウェブ版 量子信息研究的探索者 2019-09-30 ソース:中國新聞網”. 2020年11月1日閲覧。
  14. ^ Internet2 - Terms of Use”. 2012年2月20日閲覧。
  15. ^ Internet2 Contact Information”. 2012年2月20日閲覧。
  16. ^ "Optical networking: The next generation - CNET News.com, By Marguerite Reardon (Staff Writer), Published October 11, 2004 4:00 AM PDT
  17. ^ "Internet2, National Lambda Rail, In Merger Talks (July 18, 2005)"
  18. ^ Internate archive of now defunct www.internet2-nlr.org site)
  19. ^ Anick Jesdanun (AP Internet Writer) (2007年10月11日). “Speedy Internet2 gets 10x boost”. USAToday.com. 2009年6月26日閲覧。
  20. ^ Network” (英語). Internet2. 2023年4月9日閲覧。
  21. ^ Media Resources” (英語). Internet2. 2021年11月25日閲覧。
  22. ^ NGI Program Progress” (英語). Internet2. 2021年11月25日閲覧。
  23. ^ Internet2 IDEA Awards
  24. ^ 国内・国際の相互接続”. 学術情報ネットワーク SINET5. 2021年12月2日閲覧。

参考文献

  • Barnes, Christopher, and Terresa E. Jackson . INTERNET2: The Backbone of the Future. Brooks Air Force Base, Tex.: Air Force Research Laboratory, 2002.
  • Matlis, Jan. "Internet2." Computerworld, 28 August 2006, 30.
  • Moschovitis, Christos, Hilary Poole, Tami Schuyler, and Theresa M. Senft. History of the Internet: A Chronology, 1843 to the Present. Santa Barbara, Cal.: ABC-CLIO, 1999.
  • Van Houweling, Douglas and Ted Hanss, "Internet2: The Promise of Truly Advanced Broadband," in The Broadband Explosion, R. Austin and S. Bradley, Editors, Harvard Business School Press, 2005.

外部リンク


Internet2

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 01:49 UTC 版)

パケット通信」の記事における「Internet2」の解説

Internet2は、研究および教育コミュニティ業界政府メンバー率い非営利米国コンピュータネットワーキング コンソーシアムである。 Internet2コミュニティは、 Qwestと提携して1998年Abilene呼ばれる最初のInternet2ネットワーク構築しNational LambdaRail (NLRプロジェクトの主要投資家でした。 2006年、Internet2はLevel 3 Communicationsとのパートナーシップ発表し全国規模新しネットワーク立ち上げ容量10 Gbit / sから100 Gbit / s引き上げた2007年10月、Internet2は正式にAbilene引退し、現在では、より大容量新しネットワークをInternet2 Network呼んでいる。

※この「Internet2」の解説は、「パケット通信」の解説の一部です。
「Internet2」を含む「パケット通信」の記事については、「パケット通信」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「Internet2」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「Internet2」の関連用語

Internet2のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



Internet2のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのInternet2 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのパケット通信 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS