1937年のグランプリ・シーズンとは? わかりやすく解説

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1937年のグランプリ・シーズン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/03 08:32 UTC 版)

1937年のAIACRヨーロッパ選手権
ドライバーズチャンピオン
ルドルフ・カラツィオラ
前年: 1936 翌年: 1938
1937年のグランプリシーズン
前年: 1936 翌年: 1938

1937年のグランプリ・シーズン は、AIACRヨーロッパ選手権の第5回大会が開催されたグランプリ・シーズンである。メルセデスルドルフ・カラツィオラがヨーロッパ選手権を制した。カラツィオラは選手権の対象となる5つのグランプリのうち3つに勝利した。

1937年シーズンは、戦前のグランプリ史上最も高出力のマシンによるシーズンとなった。メルセデス・ベンツのマシンのスーパーチャージャー付き5.6L直列8気筒エンジンは約650馬力を発揮したが、当時の平均的な市販車のエンジンが25馬力前後を発揮していたことを考慮すると、1937年シーズンのグランプリ・マシンの相対的なパフォーマンスは、近代モータースポーツ史上他に類を見ない程に高かった。極端に向上したグランプリ・マシンの性能は、翌年のレギュレーションがその歴史上初めてエンジンの排気量に制限をかけ、最低重量を引き上げてマシンのスピードを抑制することに繋がった。グランプリにおけるメルセデス・ベンツの技術開発は、当時のナチス政権による国家的な補助金制度に支えられたものでもあった。スーパーチャージャーによって過給されるメルセデス・ベンツ・W125のエンジン出力は、1960年代後半に北米でCan-Amのレーシングカーが登場するまで匹敵されることが無かった。そして欧州のF1マシンは、約45年が経過した1980年代初頭になるまでの間、1937年当時のマシンに匹敵するエンジン出力を得ることは無かった。

メルセデス・ベンツ・W125に乗るヘルマン・ラングが1937年トリポリグランプリで勝利した。

シーズン概要

1937年シーズンは750kgフォーミュラによる最後のグランプリ・シーズンとなった。メルセデス・ベンツは、不振に終わった1936年シーズンの雪辱を新型車メルセデス・ベンツ・W125に託した。アウトウニオンは改良を施したアウトウニオン・タイプCを継続して使用した。スクーデリア・フェラーリは昨年に引き続きアルファロメオ12C-36英語版で参戦したが、競争力の低下は明らかだった。シーズン後半には、ファクトリーチームのアルファコルセ英語版が新車アルファロメオ12C-37を出走させたが、期待された性能は発揮できなかった。アルファロメオの新車に失望したタツィオ・ヌヴォラーリスイスグランプリではアウトウニオンのチームに加わった[1]。さらに、ドライバー面ではルイジ・ファジオーリがメルセデスからアウトウニオンに移籍し、メルセデスには新たに英国人のリチャード・シーマンが加入した。1937年の選手権はメルセデスルドルフ・カラツィオラに支配されたものとなり、カラツィオラは欠場した一戦を除き4戦中3勝を挙げた。新型のメルセデスW125はシーズンを通して高い性能を見せた。前年に引き続きアウトウニオン・タイプCに乗るベルント・ローゼマイヤーは、主要なグランプリで3勝するなど活躍したが、いずれもヨーロッパ選手権の対象となっていなかったことでタイトル争いには加わることができなかった。メカニック出身のヘルマン・ラングは、エースのカラツィオラに匹敵するスピードを見せ、メルセデスチーム内には不協和音が生じた[2]。選手権初戦のベルギーグランプリでは、ヴァンダービルト・カップ出場の為に一部の有力選手が欠場した中、アウトウニオンルドルフ・ハッセ英語版が勝利した。

ヨーロッパ選手権グランプリ

Rd 開催日 レース サーキット PP(プラクティス最速) ファステストラップ 優勝者 コンストラクター レポート
1 7月11日 ベルギーグランプリ スパ・フランコルシャン 抽選でグリッド決定 ヘルマン・ラング ルドルフ・ハッセ アウトウニオン 詳細
2 7月25日 ドイツグランプリ ニュルブルクリンク ベルント・ローゼマイヤー ベルント・ローゼマイヤー ルドルフ・カラツィオラ メルセデス・ベンツ 詳細
3 8月8日 モナコグランプリ モンテカルロ市街地コース ルドルフ・カラツィオラ ルドルフ・カラツィオラ マンフレート・フォン・ブラウヒッチュ メルセデス・ベンツ 詳細
4 8月22日 スイスグランプリ ブレムガルテン・サーキット ルドルフ・カラツィオラ ベルント・ローゼマイヤー ルドルフ・カラツィオラ メルセデス・ベンツ 詳細
5 9月12日 イタリアグランプリ リヴィルノ・サーキット ルドルフ・カラツィオラ ルドルフ・カラツィオラ
ヘルマン・ラング
ルドルフ・カラツィオラ メルセデス・ベンツ 詳細


非選手権グランプリ

開催日 レース サーキット 優勝者 コンストラクター レポート
2月14日 フラテ・レース フラテ湖 ユージン・ビョルンスタッド アルファロメオ 詳細
4月18日 ヴァレンティーノグランプリ トリノ市街地コース アントニオ・ブリヴィオ アルファロメオ 詳細
4月25日 ナポリグランプリ ポジリポ市街地コース ジュゼッペ・ファリーナ アルファロメオ 詳細
5月1日 キャンベル・トロフィー英語版 ブルックランズ プリンス・ビラ ドラージュ 詳細
5月9日 トリポリグランプリ英語版 メラハ・サーキット ヘルマン・ラング メルセデス・ベンツ 詳細
5月9日 フィンランドグランプリ インタルハ公園 ハンス・ルエシュ アルファロメオ 詳細
5月16日 グランプリ・ド・フロンティエ シメイ市街地コース ハンス・ルエシュ アルファロメオ 詳細
5月30日 アヴスレンネン アヴス ヘルマン・ラング メルセデス・ベンツ 詳細
5月30日 チルクイート・デラ・スペルバ ジェノヴァ市街地コース カルロ・フェリーチェ・トロッシ アルファロメオ 詳細
5月30日 ブカレストグランプリ ブカレスト市街地コース ハンス・ルエシュ アルファロメオ 詳細
6月6日 リオデジャネイロ グランプリ ガヴェア市街地コース カルロ・マリア・ピンタクーダ アルファロメオ 詳細
6月13日 アイフェルレンネン ニュルブルクリンク ベルント・ローゼマイヤー アウトウニオン 詳細
6月20日 ミラノグランプリ ミラノ市街地コース タツィオ・ヌヴォラーリ アルファロメオ 詳細
7月5日 ヴァンダービルト杯 ルーズベルト・レースウェイ ベルント・ローゼマイヤー アウトウニオン 詳細
7月25日 サンレモグランプリ サンレモ市街地コース アキーレ・ヴァルツィ マセラティ 詳細
7月25日 シルクイート・ド・ヴィラ・レアル ヴィラ・レアル市街地コース ヴァスコ・ド・サメイロ アルファロメオ 詳細
8月15日 コッパ・アチェルボ英語版 ペスカーラ・サーキット ベルント・ローゼマイヤー アウトウニオン 詳細
8月15日 シルクイート・ド・エストリル エストリル市街地コース マヌエル・ド・オリヴェイラ フォード 詳細
8月28日 JCC 200マイルレース ドニントン・パーク アーサー・ドブソン ERA 詳細
9月26日 チェコスロヴァキアグランプリ ブルノ市街地コース ルドルフ・カラツィオラ メルセデス・ベンツ 詳細
10月2日 ドニントンパークグランプリ ドニントンパーク ベルント・ローゼマイヤー アウトウニオン 詳細
10月16日 マウンテン・チャンピオンシップ ブルックランズ ハンス・ルエシュ アルファロメオ 詳細
10月31日 カラスタヤトロッパ・レース ヘルシンキ市街地コース カール・エッブ メルセデス・ベンツ 詳細

1937年のドライバーズランキング

順位 ドライバー BEL
GER
MON
SUI
ITA
Pts
1 ルドルフ・カラツィオラ 1 2 1 1 13
2 マンフレート・フォン・ブラウヒッチュ Ret 2 1 3 Ret 15
3 ヘルマン・ラング 3 7 2 2 19
= クリスチャン・カウツ 4 6 3 6 Ret 19
5 ハンス・シュトゥック 2 Ret 4 4 9 20
6 レイモン・ソメール 5 Ret 7 8 27
7 ルドルフ・ハッセ 1 5 Ret 28
= ベルント・ローゼマイヤー 3 Ret Ret 3 28
= タツィオ・ヌヴォラーリ 4 5 7 28
= ジュゼッペ・ファリーナ Ret 6 Ret Ret 28
11 ラズロ・ハルトマン Ret Ret 9 29
12 ハンス・ルエシュ 8 8 Ret 31
13 ヴィットリオ・ベルモンド 12 10 32
14 ヘルマン・パウル・ミューラー Ret Ret 5 33
15 リチャード・シーマン Ret 4 34
= クレメンテ・ビョンデッティ Ret Ret 34
17 ルイジ・ソフィエッティ Ret Ret 35
= カルロ・フェリーチェ・トロッシ Ret 8 35
= パウル・ピーチュ Ret 10 35
20 ケネス・エヴァンス 9 36
= エルヌ・フェスタティッチ 10 36
= アッティロ・マリノーニ 11 36
= ジョヴァンニ・ミノッツィ Ret Ret 36
= ゴッフレード・ゼンデル 5 36
= カルロ・マリア・ピンタクーダ 9 36
= ルイジ・ファジオーリ 7 36
= アキーレ・ヴァルツィ 6 36
28 アンリ・シモーネ Ret 37
= アドルフォ・マンディローラ Ret 37
30 フランコ・コルテーゼ Ret 38
= エルンスト・フォン・デリウス Ret 38
= ジョヴァンバティスタ・ギドッティ Ret 38
33 フランセスコ・セヴェーリ Ret 39
= レナート・バレストレーロ Ret 39
= エドアルド・テアーノ Ret 39
= アントニオ・ブリヴィオ Ret 39
= マックス・クリステン Ret 39
順位 ドライバー BEL
GER
MON
SUI
ITA
Pts
結果 ポイント
金色 勝者 1
銀色 2位 2
銅色 3位 3
レースの75%以上を消化 4
レースの50%以上 75%未満を消化 5
レースの25%以上 50%未満を消化 6
レースの25%未満を消化 7
失格 8
参加せず 8

参考文献

Etzrodt, Hans. “Grand Prix Winners 1895–1949 : Part 3 (1934–1949)”. The Golden Era of Grand Prix Racing. 2007年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年8月5日閲覧。

Leif Snellman and Hans Etzrodt. “1937”. The Golden Era of Grand Prix Racing. 2007年8月5日閲覧。

Galpin, Darren. “1937 Grands Prix”. The GEL Motorsport Information Page. 2007年8月5日閲覧。

脚注

  1. ^ Etzrodt, Hans. “1937 GRAND PRIX SEASON 1”. The Golden Era of Grand Prix Racing. 2016年11月22日閲覧。
  2. ^ ノイバウア, アルフレッド 著、橋本茂春 訳『スピードこそ我が命』荒地出版社、1968年、106頁。 



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