1語でも句に成り得るか
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/17 21:44 UTC 版)
従来、句は最低2つの語から成っていると理解されていた。その観点では、文の構成要素は「語 < 句 < 節」の順で大きくなり、1語のみで句と看做されることはなかった。しかし、現代統語論の多くの学派、特にノーム・チョムスキーが提唱したXバー理論の影響を受けている学派においては、そのような制限は存在しない。Xバー理論では、それぞれの句が存在し得る位置は決まっているとしており、その位置(項)に現れるものであれば、1語のみであろうと複数の語の組み合わせであろうと、該当する句だと看做される。例えば、主語や目的語という項は名詞句が占めることになっているため、そこを占めるものは、たとえ1語のみでも名詞句として扱われる。 Xバー理論によると、以下の例文における太字部分は、それぞれ名詞句である。 He saw someone. 訳:彼は誰かを見た。 Milk is good. 訳:牛乳は(身体に)良い。 They spoke about corruption. 訳:彼らは頽廃について語った。 最初の例文の「he」は単独の代名詞であると同時に、文の中では名詞句として機能している。「he」を例えば「my friend」に置き換えて My friend saw someone. と言うことも可能であるため、「my friend」が名詞句であるならば「he」も名詞句であるというのが、Xバー理論の立場である。チョムスキー派の句構造文法における統率束縛理論(英語版)(GB理論)やミニマリスト・プログラム(英語版)などには、この「句」の概念が適用されている。一方、依存文法は、「句」は少なくとも2語から成っているという立場を取っている。
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