1イオン異方性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/27 07:54 UTC 版)
例えば結晶がある一種のスピン源からなる場合でも、単位格子中に2つ以上の異なる方向を向いたスピン源が含まれる場合は弱強磁性を生じる可能性がある。例として単位格子中に同じ錯体を二つ含むが、その錯体の異方性軸(スピンの向きやすい容易軸とする)が一つはa軸方向(錯体A)、もう一つがa軸方向から5度だけb軸方向に傾いた(錯体B)系を考える。この二つの錯体がそれぞれ異なる部分格子を作り、それら部分格子が反強磁性的に結びついているとする。この場合、錯体Aのスピンが一番向きやすいa軸方向を向いたとすると、錯体Bは反強磁性的に結びつくため-a方向を向こうとする。しかし、錯体単体での異方性的には-a軸から5度だけ傾いた方がエネルギーは低くなる。この二つ、相互作用の安定化と1イオンとしての安定化のエネルギーが競合するため、実際には両者の中間的な方向をスピンが向いて妥協することとなる。この微妙な傾きが、他の単位格子中のスピンの傾いた方向と一致すれば弱強磁性が表れるわけである。なお、この単位格子での余剰の磁化が、隣接する格子同士で打ち消し合うように並ぶ場合もあり、その場合は自発磁化は生じない(ただし、内部の局所的には磁化が発生しているため、単純な反強磁性体とはまた少し異なる挙動を示す)。ただし、1イオン異方性による弱強磁性が発生し得る場合には、それらスピン間に反転対称がないため同時にDM相互作用が寄与している可能性も否定しきれないことには注意を要する。
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