雪解音づたいにウラルアルタイ語
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春 |
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評 言 |
「山河」代表の松井国央氏は自由人である。その作風は大らかで、スケールがひと味違う。特に他国を詠む時、本領が発揮される。 ウラルアルタイ語を電子辞書で引いてみる。ウラル系言語とアルタイ系言語との親族関係を想定する説。とある。ウラル語族とはフィンランド語からハンガリー語を含む語族の名称。アルタイとはロシア、モンゴル、中国にまたがる山系で、モンゴル語で「金の山」をいう。1998年世界自然遺産に登録されている。想像するに、彼の地は自然環境の厳しい、とりわけ冬は永く、苛酷な日々を耐えなければならず、それだけに春の到来を告げる雪解が待ち遠しい。ただ日本のようなどちらかというと情緒ある響きとは違って、轟音が大地を揺るがし、人々の心を震わし、凄まじい勢いでやって来るに違いない。それでも「わが祖国」。 昨年の6月、ハンガリーの首都、ブダペストの旧市街と新市街を分けて流れるドナウ川沿いを歩いた。かつて迫害された人々が身を投じたその地点には彼らが脱いだであろう靴のモニュメントが残され、往時の悲惨さを今に伝えている。私はこの異様な光景を眼に焼きつけた。有史以来、われわれ人間と川との深いかかわり。文明は川なくして語れない。が、この愛すべき女性名詞(n.f.)も時には牙をむき、甚大なる被害をもたらしてくれるのであるが。 春の使者、「雪解音」そして遥か彼方の「ウラルアルタイ」。この取り合わせこそが国央俳句の真骨頂であり、世界である。 |
評 者 |
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備 考 |
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