野崎孝とは? わかりやすく解説

野崎孝

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/24 00:56 UTC 版)

野崎 孝(のざき たかし、1917年大正6年〉11月8日[1] - 1995年平成7年〉5月12日[1])は、日本のアメリカ文学者、翻訳家

ライ麦畑でつかまえて』など一連のサリンジャー作品のほか、フィッツジェラルドヘミングウェイスタインベックなどの翻訳で知られる。

略歴

パン屋の長男として青森県弘前市に生まれる[1]。1929年、旧制弘前中学校(青森県立弘前高等学校の前身)に入学[1]、4年間を首席を通し[1]、語学の天才と讃えられる[1]。4年修了で旧制弘前高等学校弘前大学の前身)に入学[1]。1937年、東京帝国大学文学部イギリス人文学科に進み[1]中野好夫に師事[1]。卒業後は東京の商業学校などで教鞭を執る[1]第二次世界大戦で出征、中国大陸で転戦する。復員後は母校の弘前高等学校教授[1]を経て、1949年から1950年まで新制の弘前大学助教授[1]。上京後、1951年中央大学文学部教授、1970年旧・東京都立大学教授、定年後は帝京大学教授を務めた。

サリンジャーの訳者として

ライ麦畑でつかまえて』(J.D.Salinger The Catcher in the Rye )初刊は1964年に白水社から上梓。なお初訳の訳題は、1952年に橋本福夫訳で、"J・D・サリンガー"『危険な年齢』(ダヴィッド社)だった。野崎は当時の深夜放送からヒントを得て、若い世代の語法と感覚に迫った訳出を行い、当時の読書界に反響を起こした[1]。主人公ホールデン・コールフィールド少年が一方的に語る話し方は、50年代のアメリカのティーンエイジャーの口調を的確に捕らえたものと激賞されたが、野崎自身はその和訳は至難の業だったと述懐している[2]

2003年に村上春樹の新訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が、同じ白水社で出版するまで、約40年間にわたり定訳の位置を占め続け百数十版を重ねた。

著書

翻訳

「カナリヤ」「おさなき恋」「心理」「ミリー」「園遊会」「パーカーばあさんの生涯」「一杯の茶」「蠅」「入江にて」
「花ひらくユダの木」「サーカス」「墓」「マリア・コンセプシオン」
  • 『英国が私をつくった』(グレアム・グリーン 、早川書房、グレアム・グリーン選集4) 1960
  • 『西部旅行綺談』(マーク・トウェイン、筑摩書房、世界ユーモア文学全集9) 1961、のち講談社 世界文学全集16
  • 「音もなく降る雪、秘密の雪」(C・エイケン、河出書房新社、世界文学100選4 所収) 1961
  • 「人生の門出」(ルース・サコー、河出書房新社、世界文学100選5 所収) 1961
  • 「オーファント・アニー」(ウィンズロー、河出書房新社、世界文学100選5 所収) 1961
  • 『われらが不満の冬』(ジョン・スタインベック、新潮社) 1962
  • 『ブラックボーイ ある幼少期の記録』(リチャード・ライト、岩波文庫) 1962
  • 「息の喪失」(エドガー・アラン・ポー、東京創元新社、ポオ全集1 所収) 1963
  • 「名士の群れ」(エドガー・アラン・ポー、東京創元新社、ポオ全集1 所収) 1963
  • 「鐘楼の悪魔」(エドガー・アラン・ポー、東京創元新社、ポオ全集1 所収) 1963
  • 「悪魔に首を賭けるな」(エドガー・アラン・ポー、東京創元新社、ポオ全集2 所収) 1963、のち『アメリカ怪談集』(荒俣宏編、河出文庫 所収) 1989
  • 「ウィサヒコンの朝」(エドガー・アラン・ポー、東京創元新社、ポオ全集2 所収) 1963
  • 「×だらけの社説」(エドガー・アラン・ポー、東京創元新社、ポオ全集2 所収) 1963
  • ライ麦畑でつかまえて』(J・D・サリンジャー白水社) 1964、のち白水Uブックス 1984
  • 『もう一つの国』(ジェイムズ・ボールドウィン(James Baldwin)、集英社) 1964、のち新潮文庫 1972、のち集英社文庫 1977
  • 「舞踊家」(スウェードーズ、筑摩書房、世界文学大系94 所収) 1965
  • 「ノータリン・ウィルソンの悲劇」(マーク・トウェイン、中央公論社、世界の文学53 イギリス名作集/アメリカ名作集 所収) 1966
  • その名も高きキャラヴェラス郡の跳び蛙」(マーク・トウェイン、筑摩書房、世界文学全集25 所収) 1968
  • フラニーとゾーイー』(J・D・サリンジャー、新潮社) 1968、のち新潮文庫 1976、改版 1991
  • 怒りの葡萄』(ジョン・スタインベック、集英社、世界文学全集66) 1970
  • ハックルベリー・フィンの冒険』(マーク・トウェイン、講談社、世界文学全集) 1970、のち講談社文庫 1971
  • 大工よ、屋根の梁を高く上げよ シーモア-序章-』(J・D・サリンジャー、井上謙治共訳、河出書房新社) 1970、のち新潮文庫 1980、改版 2004
  • 「荒野より出でよ」(ジェイムズ・ボールドウィン、集英社、アメリカ短篇24) 1970
  • 「宿命」(ジェイムズ・ボールドウィン、白水社、現代アメリカ短篇選集2) 1970
  • 白鯨』(ハーマン・メルヴィル、中央公論社、新集世界の文学11) 1972
  • ナイン・ストーリーズ』(J・D・サリンジャー、新潮社) 1974、のち新潮文庫 1974、改版 1992
  • 「シオドー・ドライサー」(ヘンリー・メンケン、筑摩世界批評体系4 所収) 1975
  • 「断ち切られた回路」(リチャード・チェース、筑摩世界批評体系4 所収) 1975
  • 『宙ぶらりんの男』(ソール・ベロー、講談社、世界文学全集27) 1976
  • 老人と海』(アーネスト・ヘミングウェイ、集英社、世界文学全集77) 1977
  • 『酔いどれ草の仲買人』(ジョン・バース (John Barth)、集英社、世界の文学35・36) 1979
  • 「ドルがあったばかりに・武人の魂」(ジョゼフ・コンラッド、人文書院、コンラッド中短篇小説集3) 1983
  • 『アメリカ古典文学研究』(D・H・ローレンス、南雲堂、D.H.ロレンス紀行・評論選集4) 1987
  • 『フィッツジェラルド短編集』(F・スコット・フィッツジェラルド、新潮文庫) 1990
「氷の宮殿」「冬の夢」「金持の御曹子」「乗継ぎのための三時間」「泳ぐ人たち」「バビロン再訪」
  • 「ビール・ストリートに口あらば」(ジェイムズ・ボールドウィン、集英社ギャラリー世界の文学18 所収) 1990
  • 『雨の日の釣師のために』(D&G・パウナル編、TBSブリタニカ、釣文学35の傑作) 1991

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 野崎孝(のざき・たかし)”. 青森近代文学館. 2022年8月閲覧。
  2. ^ 『ライ麦畑でつかまえて』解説 - 白水社”. www.hakusuisha.co.jp. 白水社. 2022年8月24日閲覧。




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