重力波の速度と重力子質量への制限の可能性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/16 14:07 UTC 版)
「重力波の初検出」の記事における「重力波の速度と重力子質量への制限の可能性」の解説
重力波の速度(vg)は、一般相対性理論によって光速度(c)と同じであることが予想されている。もし光速度からのずれが存在すれば、それは理論的に存在が指摘されているグラビトン(重力子)の質量に関係する。重力子とは、重力相互作用を伝達する役目を持つ素粒子である。重力が無限の距離にまで到達するとすれば、重力子は質量を持たないことになる。これは、ゲージボゾンの質量が大きいほど、これが伝える力の到達範囲が狭くなることによる。そして、現在の観測では、光子が媒介する電磁力と同じく重力の到達距離は無限である。もし重力子が有限の質量を持つとしたら、重力の伝搬速度は光速よりも小さくなり、また周波数によって速度が異なることから、天体現象に起因する重力波にも分散が生じることになる。しかし、このような分散は検出されていない。今回の重力波観測により、太陽系の観測から求められていた重力子の質量の上限値はさらに小さくなり、2.1×10−58 kgとなった。これは 1.2×10−22 eV/c2に相当し、コンプトン波長 (λg)は1013 km、約1光年よりも大きくなった。観測された重力波の周波数の下限値35 Hzから、vgの下限が少なくとも1-vg /c~ 4×10−19よりも小さいことが導かれる。
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