道具理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 00:13 UTC 版)
他人を利用する場合に、正犯としての実行行為性を認める立場は、正犯の意味を規範的に(緩やかに)とらえる。 正犯とは、犯罪実現の現実的危険性を有する行為を自ら(自らの手で)行う者をいうが、「自ら」(自らの手で)は規範的理解が可能(緩やかに解することが可能)とする。そのうえで、他人を道具として利用する場合は、規範的には「自らの手で」行ったといえ、利用者の行為には正犯としての実行行為性が認められるとされる。 この立場では利用者に正犯意思が認められるとともに、被利用者に道具性があるときに間接正犯が成立するとされ、道具性の要件が問題となる。(道具理論) これについては、「反対動機形成の可能性がないこと、または強い支配を受けていること」が道具性の要件であり、このとき間接正犯に実行行為性が認められるとしている。 具体的には、 被利用者の身体活動が刑法上の行為に当たらないとき 被利用者の行為が構成要件要素を欠き、構成要件該当性を有しないとき 被利用者の行為が違法性を欠くとき が挙げられている。 医師が入院患者を殺そうとして毒入り注射器を用意し、看護師に事情を知らせず、患者に注射するように指示した場合は、看護師には構成要件的故意が欠け、2.の場合にあたる。 判例は、責任を欠くときも挙げるがこれに対しては批判が多い。(例:子供を使って窃盗をさせる場合を間接正犯とするか、教唆犯とするか)
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