足立区女性整体師刺殺事件
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足立区女性整体師刺殺事件(あだちくじょせいせいたいししさつじけん)は、2009年5月に東京都足立区で発生した殺人事件。日本で初めて裁判員の参加する刑事裁判に関する法律に基づく裁判員制度が適用された事件である[1][2][3]。
年号は全て2009年(平成21年)、時間は全てJSTである。
経過
- 5月1日 - 事件発生。
- 5月22日 - 東京地方検察庁は被疑者を殺人罪で起訴[6]。
- 6月10日 - 東京地方裁判所で第1回公判前整理手続[7][8]。
- 6月12日 - 第2回公判前整理手続が終了し、裁判を8月3日から8月6日までの4日間で行うことを決定[9]。既に決定した裁判員候補者名簿約27,700人から裁判初日の裁判員選任手続きに呼び出す候補者100人を抽選で決定[9]。
- 6月17日 - 東京地裁(秋葉康弘裁判長)は12日に決定した裁判員候補者のうち、学生や70歳以上の者を除く73名に呼び出し状の送付を開始[10][11]。
- 8月3日 - 午前に裁判員の選任手続きを行い、裁判員6人と補充裁判員3人を選任[12]。午後から東京地裁(秋葉康弘裁判長)で審理を開始。裁判員6人の男女比は男1対女5(裁判員1人の辞退で男2対女4に変更)と、男性加害者と女性被害者という構図の裁判での影響が問題視された。検察と弁護側双方に認められた不選任請求が行われたかは、裁判所、検察、弁護の三者ともに明らかにしなかった。
- 8月5日 - 午前の審理で論告・求刑が行われ、検察側は「死刑や無期懲役を求めるのはやや重い」とした上で懲役16年を求刑した[13]。被害者参加制度を利用して公判に参加した被害者の遺族は「最低でも懲役20年を」と意見を述べた[13]。午後に最終弁論が開かれ、弁護側は「口論の末、被害者の言動が誘発した突発的かつ衝動的な犯行」と述べて反省の状況も踏まえて情状酌量を求めた[13]。その後、裁判官と裁判員が判決内容を検討する評議を行った[13][14][15]。
- 8月6日 - 午前に評議を行い判決内容を決定。14:30より東京地裁(秋葉康弘裁判長)で判決公判が行われ、被告人に対し懲役15年の判決が言い渡された[16]。
- 8月12日 - 被告人が判決を不服として控訴[17][18]。
- 10月9日 - 損害賠償命令制度に基づき被疑者に対して約4745万円を遺族に支払うことを命じる決定を出した[19]。
- 12月17日 - 東京高裁は被告側の控訴を棄却。
- 12月24日 - 被告人が判決を不服として上告。
- 2010年5月31日 - 最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長)が被告側の上告を棄却する決定を出したため、懲役15年の判決が確定[20]。
- 6月7日 - 遺族が被告に対し損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(植垣勝裕裁判長)は被告人に対し2000万円の賠償の支払いを命じた[21]。
脚注
- ^ 「裁判員初判決 懲役15年 隣人刺殺 強い殺意認定」『東京新聞』中日新聞東京本社、2009年8月7日。オリジナルの2009年8月8日時点におけるアーカイブ。2025年5月22日閲覧。
- ^ 「市民の評議 揺れた心 7人全員会見」『東京新聞』中日新聞東京本社、2009年8月7日。オリジナルの2009年8月8日時点におけるアーカイブ。2025年5月22日閲覧。
- ^ 「裁判員裁判:初の判決 被告に懲役15年 裁判員、会見で重圧語る」『毎日新聞』毎日新聞社、2009年8月7日。オリジナルの2009年9月14日時点におけるアーカイブ。2025年5月22日閲覧。
- ^ 「刺された女性、搬送先で死亡 東京・足立」『iza』産業経済新聞社、2009年5月1日。オリジナルの2009年5月13日時点におけるアーカイブ。2009年8月3日閲覧。
- ^ 「ペットボトル倒され激怒 女性殺害の71歳男逮捕」『iza』産業経済新聞社、2009年5月2日。オリジナルの2009年5月13日時点におけるアーカイブ。2009年8月3日閲覧。
- ^ 「裁判員制度:東京地検が初の対象事件起訴 殺人罪で男を」『毎日新聞』毎日新聞社、2009年5月23日。オリジナルの2009年6月5日時点におけるアーカイブ。2024年10月14日閲覧。
- ^ 「裁判員裁判:東京の隣人殺人 6月10日公判前整理手続き」『毎日新聞』毎日新聞社、2009年5月29日。オリジナルの2009年6月20日時点におけるアーカイブ。2024年10月14日閲覧。
- ^ 「裁判員裁判:内定1号、8月3日に東京地裁で初公判」『毎日新聞』毎日新聞社、2009年6月10日。オリジナルの2009年6月11日時点におけるアーカイブ。2025年5月22日閲覧。
- ^ a b 「裁判員制度:候補者100人決定 15日以降、呼び出し状」『毎日新聞』毎日新聞社、2009年6月12日。オリジナルの2009年6月25日時点におけるアーカイブ。2009年8月3日閲覧。
- ^ 「裁判員裁判:候補者に初の呼び出し状を発送 東京地裁」『毎日新聞』毎日新聞社、2009年6月17日。オリジナルの2009年8月8日時点におけるアーカイブ。2025年5月22日閲覧。
- ^ 「裁判員制度:裁判員候補、呼び出し状発送--東京地裁」『毎日新聞』毎日新聞社、2009年6月17日。オリジナルの2009年6月20日時点におけるアーカイブ。2025年5月22日閲覧。
- ^ 「裁判員6人補充裁判員3人を選任 東京地裁」『iza』産業経済新聞社、2009年8月3日。オリジナルの2009年8月14日時点におけるアーカイブ。2009年8月3日閲覧。
- ^ a b c d 「「なぜナイフを…」裁判員全員が被告に質問 裁判は結審」『朝日新聞』朝日新聞社、2009年8月5日。オリジナルの2009年8月11日時点におけるアーカイブ。2009年8月6日閲覧。
- ^ 「裁判員裁判:最終評議を開始…6日に判決 東京地裁」『毎日新聞』毎日新聞社、2009年8月6日。オリジナルの2009年8月8日時点におけるアーカイブ。2025年5月22日閲覧。
- ^ 「裁判員裁判:裁判員と裁判官、最終評議を開始--きょう判決」『毎日新聞』毎日新聞社、2009年8月7日。オリジナルの2009年8月8日時点におけるアーカイブ。2025年5月22日閲覧。
- ^ 「裁判員裁判:初の判決、被告に懲役15年 東京地裁」『毎日新聞』毎日新聞社、2009年8月7日。オリジナルの2009年8月8日時点におけるアーカイブ。2024年10月14日閲覧。
- ^ 「裁判員裁判第1号の被告が控訴」『朝日新聞』朝日新聞社、2009年8月13日。オリジナルの2009年9月4日時点におけるアーカイブ。2024年10月14日閲覧。
- ^ 「裁判員裁判:1例目被告が控訴」『毎日新聞』毎日新聞社、2009年8月13日。オリジナルの2009年9月14日時点におけるアーカイブ。2025年5月22日閲覧。
- ^ 「裁判員裁判第一号の被告に賠償命令 東京地裁」『朝日新聞』朝日新聞社、2009年10月17日。オリジナルの2022年1月21日時点におけるアーカイブ。2024年10月14日閲覧。
- ^ 「裁判員判決、最高裁で初の確定へ 被告側の上告を棄却」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2010年6月1日。オリジナルの2025年5月22日時点におけるアーカイブ。2024年10月14日閲覧。
- ^ 「裁判員1号事件、元被告に2000万円賠償命令」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2010年6月7日。オリジナルの2025年5月22日時点におけるアーカイブ。2024年10月14日閲覧。
関連項目
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