補助熱機関を加えた大きい系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/13 10:49 UTC 版)
「エクセルギー」の記事における「補助熱機関を加えた大きい系」の解説
対象とする物質(系)が任意の状態変化をするとき、系は外界に対して仕事をし、同時に熱を放出する。外界に対して行った仕事は上記の仕事の一部となるのに加えて、外部へ放出した熱も、その後仕事に変換できる可能性がある。 そこで、右図のように系と並行して動作し、系が放出する熱を受け取って仕事を取り出す補助熱機関を考える。系自身が行う仕事 Wi を内部仕事とよび、補助熱機関が行う仕事を外部仕事とよぶ。系から取り出せる仕事は、内部仕事と外部仕事を合わせた有効仕事 Wg = Wi + We であると考えることができる。ある状態の物質の持つエクセルギーは、外界と平衡するまで状態変化を行うときに取り出せる有効仕事の最大値である。 このような有効仕事に対して、次の定理が成立する。 『与えられた二つの状態間で変化が行われる場合、変化が可逆の場合に有効仕事が最大(符号も含めた代数的意味で最大)となる。可逆であれば、有効仕事は変化の経路に依存せず、両端の状態のみにより定まる。』 (証明) 状態1から2へ至る二つの状態変化 R と I を考える。状態変化 R は外部に対して有効仕事 WgR を行い、外界へ -QR の熱を放出し,状態変化 I は外部に対して有効仕事 WgI を行い、外界へ -QI の熱を放出するとする。 状態変化 R が可逆変化であるとき、R の向きを逆にして、1から I に沿って2へ行き、R に沿って 1 へ戻るサイクルを考えると、有効仕事と熱の出入りは 右図 のようになる。 サイクル後は系および補助熱機関は元の状態に戻るので、熱力学第一法則(エネルギー保存則)より W g I + ( − Q I ) = W g R + ( − Q R ) {\displaystyle W_{gI}+(-Q_{I})=W_{gR}+(-Q_{R})} つまり ( − Q R ) − ( − Q I ) = W g I − W g R {\displaystyle (-Q_{R})-(-Q_{I})=W_{gI}-W_{gR}} が成立する。 もし、WgI > WgR であれば、外界から (-QR) - (-QI) の熱を受け取り、それをすべて仕事 WgI - WgR に変換する第二種永久機関となる。したがって、熱力学第二法則に矛盾しないためにはWgI ≤ WgR でなければならない。つまり、可逆変化 R の有効仕事は任意変化 I の有効仕事より必ず大きくなる(等号は下記のように、双方共に可逆変化の場合に対応)。 I も可逆変化である場合には、上の R と I を入れ替えた結果も成立するので、WgI = WgR でなければならず、可逆変化の有効仕事は、経路のいかんにかかわらず等しくなる。(証明終わり) 以上より、ある状態の物質のもつエクセルギーは、現在の状態から外界と平衡するまで任意の可逆経路に沿って変化したときに行う有効仕事として求まる。
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