葱油鶏
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/21 08:15 UTC 版)
葱油鶏(ソンユーチー[1])・葱油淋鶏は、蒸した鶏肉に葱油(ツォンヨウ。ネギ入りの香味油)をかけた中華料理。
調理法
ベースとなるのは蒸すか茹でた丸鶏[2]、つまり白切鶏である[3][4]。
これにネギとショウガが入った香味油である葱油(ツォンヨウ[5]:39・ツォンイウ[6])をかける。かけ方は二種類ある[6][7]:
- あらかじめネギ等を炒めてから、油ごと肉にかける方法
- 肉の上に生ネギ・ショウガを置き、その上から熱した油をかける方法
油をかけたあとで、さらに蒸し汁に片栗粉でとろみをつけてかけてもよい[2][8]。
同様の料理は葱油鶏(簡体字: 葱油鸡; 繁体字: 蔥油雞、ツォンイウヂィ[6])のほかに油葱鶏[9] ・葱油白切鶏[10]・葱油淋鶏(簡体字: 葱油淋鸡; 繁体字: 蔥油淋雞)[8]とも呼ぶ。ただし、似た名前の油淋鶏は調理法が違い、鶏肉を油で揚げた料理である。葱油鶏は中国各地にあるが[6]、特に広東料理、福建料理、台湾料理[6]で盛んで、台湾では代表的な台湾料理のひとつとされている[11]。客家料理の冷菜である霸王鶏[7](簡体字: 霸王鸡; 繁体字: 霸王雞)や香港の姜葱霸王鶏[4]も同様の料理。
姜蓉(おろしショウガ・ネギ・油で作ったタレ[12])を使うバージョンは姜葱鶏(簡体字: 姜葱鸡; 繁体字: 薑蔥雞)という[13]。
葱油鶏は余った白切鶏(蒸し鶏)のリメイク料理にもなる[14]。
丸鶏ではなく、骨付きモモ肉だけのレシピや[15][16]、鶏肉を蒸す代わりに電子レンジで加熱調理するレシピもある[16]。
香港の瓦罉葱油鶏は鶏の醤油煮で、葱油鶏とは違う[4]。
日本
日本では1980年代に傅培梅の葱油鶏[6]など、いくつかのレシピが紹介された[18][19]。同様の料理は「葱油鶏」[5]のほか蒸し鶏のねぎ油風味[20]・ねぎ鶏[21]・ゆで鶏ねぎ油ソース[22]・ゆで鶏の葱油だれ[5]などとも呼ばれる。
派生
ねぎそば
日本の中華料理店「ふーみん」(1971年開店)の料理人斉風瑞のねぎそば(ねぎラーメン[23])は、汁なしの中華麺にネギ・ショウガなどを乗せ、その上から熱した油をかける料理[24]。
台湾の油葱鶏から着想を得て考案したという[23]。これ以前にも葱油麺という名の料理は何種類か存在したが調理法が違い、たとえばあらかじめ作った葱油を麺にかける[25][26]タイプであった。
ねぎワンタン
「ふーみん」の看板商品であるねぎワンタン[27]は、ねぎそばからさらに派生した料理。麺のかわりに茹で上がったワンタンを敷き、さらしネギ・ショウガなどを乗せて出汁醤油・胡椒を振り、熱した油をジュッとかけて作る[28][29]。
イラストレーターの和田誠が、ねぎそばの麺のかわりにワンタンを使うことを提案したのをきっかけに、斉が考案したという[30][29]。ねぎワンタンは和田の好物となり、和田の妻平野レミもメディアでたびたび紹介している[30][31]。
出典
- ^ 「葱油鶏」の読み方の例: “イケメン仰天チェンジin台湾 アイドルデビュー後すぐグループが解散…爆食に走るも仕事の電話が”. 日本テレビ (2023年2月28日). 2024年12月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月5日閲覧。
- ^ a b 傅, 培梅 (1993). "葱油鶏". 培梅食譜 (中国語、英語). Vol. 1 (彩色増訂本 ed.). 台湾 台北: 傅培梅. p. 114. ISBN 957-9020-02-7. OCLC 1319409315。(
要登録)
- p.85 「南部」とは福建・広東
- 葱油鶏(南部菜)
- p.86 写真 葱油雞
- p.114 葱油鶏 Ts'ung yu chi
- p.115 Steamed chicken with green onion
- 脆皮肥鶏(南部菜)
- p.87 写真 脆皮肥雞
- p.116 脆皮肥鶏 Ts'ui p'i fei chi
- p.117 Crispy chicken
- p.169「西部」とは四川・湖南・貴州
- 油淋子鶏(西部菜)
- p.173 写真 油淋子雞
- p.204 油淋子鶏 Yu lin tsu chi
- p.205 Oil Dripped Chicken
- ^ 「燻鷄和葱油鷄」『豐年』第12巻第13号、豐年社、台湾 台北、1962年7月、33頁、 ISSN 0017-8195。
- ^ a b c 方曉嵐; 陳紀臨「瓦罉葱油雞」(中国語)『經典香港小菜』萬里機構出版、香港、2019年、82頁。 ISBN 978-962-14-7004-1。 OCLC 1339036683 。
- ^ a b c 酒徒「葱油鶏 ゆで鶏の葱油だれ」『dancyu』2025年1月、43頁。
- p.39 魔法の葱油(ツォンヨウ)
- p.43 葱油鶏 ゆで鶏の葱油だれ
- ^ a b c d e f 傅培梅「蔥油鷄(ツォンイウヂィ)」『宴席菜譜 : 中国地方別卓料理』柴田書店、東京、1980年9月10日、199-200頁。doi:10.11501/12107493。
NCID BN10843726。国立国会図書館書誌ID:
000001472171 。(
要登録)
- ^ a b 張慧敏 (2023年9月22日). “霸王雞慶佳節 薑葱鮮爽 生雞油提香秘技” (中国語). 明報. 2025年2月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月12日閲覧。
- 「霸王雞, 即葱油雞」
- ^ a b 謝明哲、邱琬淳、葉松鈴、張仙平「蔥油淋雞」(中国語)『營養學實驗』(1版)台灣五南圖書出版、台湾 台北、2015年、87頁。 ISBN 9789571180182。 OCLC 921164262 。
- ^ 菜單研究所 (2019年9月25日). “電鍋上菜 油蔥雞 (影音)” (中国語). 自由時報 - 食譜自由配. 2022年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月28日閲覧。
- ^ 潘英俊(中国語)『葱油白切鸡』 味部篇、广东科技出版社、2016年、260頁。 ISBN 9787535966445 。
- ^ 『ガイドブック うるわしの島 台湾』(改訂11版)台湾観光協会、台湾 台北、1981年、162頁。doi:10.11501/12181823。
OCLC 674052976。国立国会図書館書誌ID:
000001760481 。(
要登録)
- ^ 講談社 編『中国風料理』 3巻、講談社、東京〈家庭料理全集<華>〉、1987年7月31日、139頁。
ISBN 4-06-187983-9 。(
要登録)
- ^ 巌鍇 編(中国語)『姜葱鸡』北京燕山出版社、2017年、88頁。 OCLC 1312234762 。
- ^ 趙柏淯 (2016年9月20日). “白斬雞新吃法 ▪ 蔥油淋雞” (中国語). 自由時報 - 食譜自由配. 2025年1月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年1月29日閲覧。
- ^ 焦志方「蔥油淋雞」(中国語)『做菜真輕鬆』橘子文化事業、2007年、32頁。 ISBN 9789866881312。 OCLC 225866639 。
- ^ a b 《图说生活·美食天下系列》编委会 編(中国語)『葱油淋鸡』上海科学普及出版社、中国 上海、2009年、146頁。
ISBN 9787542743589 。(
要登録)
- ^ 駱進漢「紅蔥油」(中国語)『醬料王:一次給你100道醬料』人類智庫、2009年、56頁。 ISBN 9789866612466 。
- ^ 松本安正「葱油烏骨鶏(ツォンヨウウグウチー)」『現代中国料理名作選』 13巻、ネイチャーアンドカルチャー、東京、1983年10月15日、71頁。doi:10.11501/12287977。
NCID BA63192533。国立国会図書館書誌ID:
000001712941 。(
要登録)
- ^ 伍貴培; 梁樹能「姜葱白鷄」『広東料理技術講座』東京、1981年1月7日、260-261頁。doi:10.11501/12103464。
NCID BN13556403。国立国会図書館書誌ID:
000001489991 。(
要登録)
- pp.14-15 写真 左下 姜葱白鷄
- pp.260-261 前菜 姜葱白鷄(ギョンチョンバッカィ、ヂアンツォンバイヂィ) - 蒸し鶏のネギ、ショウガ風味
- ^ 佐藤, 幸男 (1993年10月17日). “蒸し鶏のねぎ油風味”. オレンジページ. 2024年9月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月25日閲覧。
- ^ 小林, まさみ (2015年1月29日). “ねぎ鶏”. みんなのきょうの料理. 2025年1月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月28日閲覧。
- ^ 小林, まさみ (2023年9月14日). “ゆで鶏ねぎ油ソース”. LEE (雑誌). 2025年2月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月27日閲覧。
- ^ a b 週刊朝日風俗リサーチ特別局『デキゴトロジー ホントだから情けねえ!の卷』 7巻、新潮社〈新潮文庫〉、1992年10月1日、300頁。 ISBN 4-10-121117-5 。
- ^ 斉, 風瑞 (2021年8月17日). “ねぎそば”. みんなのきょうの料理. 2023年5月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月28日閲覧。
- ^ 汁なし麺タイプ: 中山時子 訳「上海編 122 開洋葱油麺(カイヤンツォンイウミエヌ)」『中国名菜譜』 東方編、柴田書店、東京、1973年5月15日、376-377頁。doi:10.11501/12103165。
NCID BN02691815。国立国会図書館書誌ID:
000001183139 。「陳友志が[…]蘇北の郷土料理の熬蔥油の方法を取り入れて香りのよい葱油麺を作った」(
要登録)
- p.11 訳者序 原書『中国名菜譜』は1957年から1965年に刊行。
- ^ 汁あり麺タイプ: 石川数雄 編「葱油麺(ツオンユーメン)(ねぎそば)」『主婦の友実用百科事典』 第1巻(料理 栄養)、主婦の友社、東京、1967年7月5日、365頁。doi:10.11501/2462539。
NCID BN11469920。国立国会図書館書誌ID:
000000899718 。(
要登録)
- ^ 柴田書店 編『ギョーザ・シューマイ・点心』柴田書店、東京〈新・儲かるメニュー〉、1987年1月10日。
ISBN 4-388-00762-5 。(
要登録)
- ^ 斉, 風瑞 (2021年8月17日). “ねぎワンタン”. みんなのきょうの料理. 2022年11月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月28日閲覧。
- ^ a b ““ふーみんママ”直伝「ねぎワンタン」のつくり方。イラストレーター・和田誠さんが愛した南青山『ふーみん』の味 斉風瑞(さい・ふうみ)さん”. 天然生活 (2024年5月31日). 2024年10月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月5日閲覧。
- ^ a b 平野, レミ「ねぎワンタンジャー」『平野レミのお勝手ごはん』宝島社、2016年11月25日、17頁。 ISBN 978-4-8002-6444-2 。
- ^ “料理愛好家・平野レミが太鼓判を押す絶品“行きつけグルメ”3品紹介「ここのシェフは最高!何皿でもいけちゃう」(12月2日(月)放送『ノンストップ!』)”. めざましmedia. フジテレビジョン (2024年12月10日). 2024年12月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月5日閲覧。
- 葱油鶏のページへのリンク