著作をおこなわなかった理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/29 00:35 UTC 版)
「ソクラテス」の記事における「著作をおこなわなかった理由」の解説
ソクラテスは、書記言語が野放しの状態で広まることを激しく非難していた。 ソクラテスは、話し言葉、つまり「生きている言葉」は、書き留められた言葉の「死んだ会話」とは違って、意味、音、旋律、強勢、抑揚およびリズムに満ちた、吟味と対話によって1枚ずつ皮をはぐように明らかにしていくことのできる動的実体であると考えた。書き留められた言葉は反論を許さず、柔軟性に欠けた沈黙であったので、ソクラテスが教育の核心と考えていた対話のプロセスにはそぐわなかったのである。 ソクラテスは、書き言葉が記憶を破壊すると考えた。個人的知識の基盤を形成するにふさわしい厳密さを期待できるのは暗記するという非常な努力を要するプロセスのみであり、そうして形成した知識基盤は教師との対話の中で磨いていくことができるという信念を抱いていたからである。 ソクラテスは、読字を恐れていたわけではないが、過剰な知識が必然的にもたらす結果、表面的な理解しかできないことを恐れていた。 ソクラテスは、よりよく知識を伝えるには、相手の理解に合わせて問いを投げかけて考えを促し、誤解を避けるために表現を選び、知識を伝える適切なタイミングを計ることが必要であり、それができるのは書物ではなく対話だけだと考えていた。
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